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VRoidの話#19 VRoid付加機能の開発者はどうして開発を辞めてしまうのか(考察)

VRoidでキャラクター作りまして、VRoidHubに上げますとイキイキ動き出します。楽しいですよね。

「うちの子」は自分にとっては特別で可愛いわけです。


しかし、私は2022年5月にはじめてみて、実は当初よりムムム?
気づいていた点が実はあります。
それについて記載します。今回は挿絵少ないです。ごめんなさい。


なお、当方IT業界のため何となく察して語っていますが、3Dモデル界では新参者のため、あくまでカンで話します。間違っているかもしれません。ご了承ください。



1.VRoidブームは2回あり、1回目のブームの後、ユーザーが逃げてしまったことがある。


VRoid年表を見ますと、以下リンク先 ① に年表があります。

2018年12月までに初回の VRoidStudio beta版、VRoidHubが誕生します。
この頃には、ちょうどバーチャルアイドル「キズナアイ」(2016年)を皮切りに、VTuberというのが流行りだします。

牽引として FaceRig という初期フェイス&モーションキャプチャーアプリが、vrmファイル(VRoidStudioで出力できる3Dファイル形式)に対応。
いわゆる VTuberが黎明期であり、それまでMMD(みくみくダンス)対応モデル作成が、熟練者がBlenderでゴリゴリpmxファイルを一からポリゴンを何日もかけてぐりぐり作成しないとできなかった、可愛い3Dモデルが自力で超簡単にできるジャン、自分で操作できるジャン、ひょっとして私もVTuber?ということで初期ブームが発生します。

VRoidSDK が 2018年後期、VRoidMobileが 2019年中期に開発され、初期の隆盛で様々な方がいろいろなツールを作成してくださいました。
今 vrm ver.0 (前バージョン) の対応ツールが多く残されているのはこのためで、この頃を第一次VRoidブームとします。

120byteさんのVRMお人形遊び

ところが、1つ目の事件が起こります。2021年の VRoidStudio 正式版登場。
これが、顔や一部テクスチャ画像のカタチ互換性を一度失わせてしまいます。

ここで、「あれ?以前と同じことをするのに、いちいち変換しないといけないの? VRoidStudio Betaで一度保存し、Studio正式版で読みなおす行為が必要なの?」ということになりました。
このとき、商用 Boothテクスチャ販売者が脱落をしています。
そのためフリーのテクスチャ販売者の更新日がここで止まっていたりしています。


次いで、ブームが始まったのは 2021年10月頃~2022年。
新型コロナウィルスが2019年より蔓延し、とはいえ死の恐怖は若干薄らぎ、みなさんもワクチンを1回は打った、マスクも流通しだした、でも外には出づらい、出てもいいけどマスクがないと…あたりの頃です。

この頃に、引きこもり需要と Ocurus Quest 2 の普及、特にFacebook社がMeta社に社名を変え(2021/10/28)、「メタバース、いわゆる3Dメガネかけて、3D空間での新たなコミュニケーションがこれから流行するんじゃないの?スゲー!!」の頃にアバター用途で2次VRoidブームが起きます。

今、VRoidHubで頑張っていらっしゃる方は、主にその頃の方かと思います。(私もその頃に参入しました。)


…しかし、また事件が起こります。
一つ目は、VRoidStudio 出力形式としてvrm ver 0系に対し、vrm ver 1の投入。互換性が無いのにファイルの種類を示す拡張子を変えなかったこと。
これはサブツール開発者泣かせの仕様変更になります。

バージョン変えても表現できることが素人VRoidユーザーには違いが分かりにくいのに、結構仕様は変えてあり、サブツール開発者に要望が集まり負担が大きくなりました。
この頃にもサブツール開発者が脱落しています。「またかよ」と。
この頃で更新が止まっているソフトウェアも多いですね。

二つ目は、痛かったのが2023年9月12日のUnity有償化問題です。

実はこの事件は VRoidサブツール開発者に大きく精神的ダメージを与えました。
なぜなら、実は、VRoidStudioもUnityで作成されたツールであり、VRoidもUnity人型モデル定義の中の、更に骨格系や体格系を標準化したものであるためです。

つまり、Unity様という親がいて、その子どもにVRoidStudioがいて、孫娘にvrm形式、かわいいキャラクターモデルがある。
親のUnity様、今までフリーで提供していた3Dゲームやツールを簡単につくる土壌自体を、儲からないので値上げする恐れがあるということに1度はなってしまいました。実際には未遂に終わりましたが、小規模開発者には大きな不安を与えました。

「なんだ、せっかく無償で使えると思ったのに、いつお金とられるかわからないツールで、今後安心して開発なんてできるのだろうか?」

2.アニメ・3D・VRoid界隈におけるマネタイズ意識の不足


さて、実はもう一つ問題があります。
マネタイズの、つまりソフトウェア開発等でみんなにプログラムを公開するときに、ユーザーよりお金をもらうか、もらわないかの問題です。

フリーウェア、無償(タダ)のツールは確かにユーザーにとっては嬉しいのですが、実は問題があります。

まず1つは、作者が金銭的に報われないこと。
人気ツールはユーザー要望も多く、一時的に自分に人気は集まるのですが受けたら受けたで、でも自分の収入は増えません。
本業よりも力を込めて作成するのが難しくなります。
ウェブサーバでサービスを提供する方は多少はサーバ維持費を負担していますが自腹を切っています。健康的な話ではないですよね。


次いで、そのジャンルで強いフリーツールが完成すると、競合有償ツールが完全に戦えなくなり、法人が参入せず、商用ツールが開発されません。
いわゆる市場を焼け野原にしてしまいます。


三番目に無償で責任が無いので、いつそのアプリが無くなるか分かりません。何せ「タダ」ですので。


最後に、無償ツールは仕様の責任が無いので人気集めにVerupを繰り返すことになりますが、それによって、それに対するサブツールの互換性が失われることです。
Blender 、Unityのプラグインがすぐに最新に対応できないのはこのためです。ソフトウェアの複雑性が膨らみサブツール開発者の負担が増えます。


3.VRoidStudioの採算モデルと、Boothアプリケーション配布媒体の不完全性


まだあります。
VRoidStudioは、優秀なツールながら無償(タダ)というスタンスをとっています。なぜならば、VRoidStudioは Booth という、色々なコンテンツ作成者の販売サイトを運営しており、VRoidStudioで作成したキャラクター、衣装、画像テクスチャを販売して利益を出す仕組みにしているからです。

実はここに構造的な矛盾がありまして、たとえば「VRoidキャラにしっぽを生やしたい!」というキャラクター作成ユーザーの素朴な要望があったとして、それにすぐツールとして対応し答えてしまうと、Booth で一生懸命自作Blender製しっぽを作って販売している個人クリエイターの売上が下がる=つまり、自社収益が減るモデルになっています。


つまり、VRoidStudio は Boothアイテム作成ツールです。
ユーザーにとって便利にすればするほど、自社売上を下げてしまう側面があります

しかし、とはいえVRoidStudio 本体はフリーなので、時には客寄せで改変します。(実はいい改編もあり vroiditem形式は正解なのですが)
そうすると、サブツール開発者、VRoidコンテンツクリエイターの首をまた絞めてしまうわけです。

おまけに、Boothではアプリケーション配布のコピーガードができません。
実は、Steamではアプリケーションのコピーガードがしっかりしているので、ソフトウェア開発者はSteamで配布するほうがより安全に個人あてに販売でき、ソフトウェア収益を上げることができるのですが、それをされると VRoidStudio としての収益は減ってしまうジレンマもあります。


4.では、どうするのが正解か?


私が思うに、まず、マネタイズ(収益化)概念は重要と思います。
VRoidStudioは、今の機能までかモデルを単純に作るところまでは今のまま無償化し新規ユーザーを増やします。
しかし、もう一歩進むところで、プラグインを有償で販売するとか、Professional版等、上位グレードを用意し有償で販売、ソフトウェアとしての仕様、腰を据えることが大事と思います。
そうすると、サブツール開発者は安心して開発できると思います。

例えば、Pro版ではテクスチャ編集機能はClipStudioのセルシス社とコラボしてしまい、競合ペイントソフトを開発とかせず「買い手よし、売り手よし、世間よし、協力会社よし」の四方よしを実現するのもありじゃないでしょうか。
(ただ、まぁ…pixiv様のサイトと、セルシス社様サイトと競合部分多いんですよね…)

また、各ツール作成者様は、そんなにConsumer(顧客)の意見が私は正しいとは思わないので、自分のかかった工数をきっちりとはかり、どこかの機能拡張タイミングで更新を止めてしまい、「筆まめ」や「ClipStudio」の箱売り「Ver 2025」 のように1年おき程度にフルバージョンアップをかけて都度箱売りするか、有償プラグイン化するかがいいと思います。
これも有償化の維持責任で、ソフトウェア仕様・品質を安定化させますし、自分も、お客様も、世間も、パートナーもすべてよくなります。

… まぁ、価格設定は、せめて3-4日のごはん代弱、中学生のお小遣いレベルの穏やか設定にはしてほしいのですけれどもw


ということで、いろいろ語ってみました。

それなりに合っていると思うのですが。
では!ご拝読いただき、誠にありがとうございました。

みなさんも、楽しい VRoidライフを!!



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