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『すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』観た。

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※この記事は軽度のネタバレを含みます※

ある日すみっコたちは、お気に入りのおみせ「喫茶すみっコ」の地下室で、古くなった一冊のとびだす絵本をみつける。絵本を眺めていると、突然しかけが動き出し、絵本に吸い込まれてしまうすみっコたち。絵本の世界で出会ったのは、どこから来たのか、自分がだれなのかもわからない、ひとりぼっちのひよこ…? 「このコのおうちをさがそう!」新しいなかまのために、すみっコたちはひとはだ脱ぐことに。
(引用:Amazon

この映画には善意しかなかった。ひたすら優しい。観終わった直後、己がどれほど汚れているのかと思いながら呆然としていた。余韻がとにかく長い。語彙が消失する。「あったけぇな……」しか言えない体になる。
とても一時間のこども向け映画とは思えない影響力である。

ひとりぼっちのひよこと絵本の世界で出会ったすみっコたちは、ひよこの仲間を探すための旅に出るわけだが、その経緯をざっくり言うとこう。

「このこひとりぼっちなんだって」「じぶんさがししてるぼくといっしょだね」「なかまをさがしてあげよう!」「いっしょにおいで」

尚この時、すみっコたちは見知らぬ世界に転移させられており、帰り方も分かっていないのである。保身を考えたり尻込みしてもいいのに、初対面のひよこのために動き出すすみっコたちは神か何かなのか?

すみっコたちはすみっこに集まるだけの理由をそれぞれ持っていて、そのおかげで仲間がいることのあたたかさ、必要とされることのうれしさを良く知っている。だからこそひよこの寂しさもわかるし、仲間を探すために必死になれるのだと思う。

私利私欲など1ミリもない、純度100%の「その子のために自分ができることをする」をしっかりじっくり味わうと人間こんな気分になるんだな、と思った。ほわほわした作画で心の奥深くまで刺してくる。

こども向け映画であるため、ストーリーはシンプルでわかりやすい。
しかし、そのシンプルな結末に至るまでの描写や伏線がとにかくいい味を出している。あのシーン、あのワンカット、それの意味が分かるともっと深く深く刺さっていく。よく1時間でまとめられたな、と思うレベルに手が込んでいる。

映像作品としても面白い。
様々な絵本の世界をすみっコたちは巡るわけだが、その世界の一つ一つの背景や作画が違い、それぞれが「それっぽく」なっている。桃太郎の鬼ヶ島は水墨画っぽいし、赤ずきんの森、木々の葉っぱは布のレースっぽい質感にされていて感心した。全体的に絵本の世界なんだなぁとわかるような紙の質感も良い。

もし観る前にこれを読んでいる人がいるなら、「泣けるらしい」とか「面白いんだろうな」とかそういう前提じゃなくて、フラットな気持ちで観て欲しい。何かの啓蒙を読み取るのではなくて、すみっコたちを見守るぞくらいの穏やかな心で。

私はすみっコの前知識は一切なかったが、今ではざっそうととんかつのファンだ。純粋に可愛かった。どんなときもにこにこなざっそうと、赤ずきんとんかつをよろしくおねがいします。以上。


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