思い出の輪郭をなぞる

今日も思い出の輪郭をなぞる。

何度も何度も重ねられた輪郭は濃く、太く、消そうとしても跡が残る。思い出すのは癖のようなもので、まるで治りかけた瘡蓋を剥がすようにじくじくと痛みを持つ。記憶の蓋をまた開いて、また眺めて、そしてそっと蓋を閉じる。鍵をかけないから、隙間から零れ出るのが気になる。そうやって今日まで忘れられないで来た。喉の奥に閉じ込められている自分が苦しそうに藻掻く。言葉には乗せずに、指先でそいつの表面を辿る。

いつだって思い出して苦しくなるのだ。
その思い出越しに過去の私を視ている。

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