19年後にもう一度

あれは福岡に引っ越して来た年の夏だった。
6歳の娘と2人で映画を観に行った。引っ越して来たばかりで、右も左もわからない場所で、迷いながら辿り着いた映画館だった。

観たのは『千と千尋の神隠し』。
映画館はあまり混んでなかったように思う。娘と2人並んで座り映画を観始めた。
程なくして娘は怖くなり「かえる」と言い出した。
私は娘を抱っこしながら、「大丈夫、大丈夫。ママが抱っこしててあげるから」となだめながら、騙し騙し映画を見続けた。
久しぶりの映画だったし、とても楽しみにしていたから、帰りたくはなかった。
娘はしばらく私にしがみついていたけれど、途中から振り返りながら見てたように思う。なんとか最後まで見ることができた。

あの夏から19年が経って『千と千尋の神隠し』がまた映画館で見られるという。娘を誘って、一緒に見に行った。
まさか、また一緒に映画館で見られるとは思わなかった。
あれから19年も経ってしまった。
なんだかあっという間だ。あの夏の日を私は昨日のことのように思い出せるというのに。
だけど娘はあの時のことをほとんど覚えていないという。
でも、今日のことは覚えていてくれるだろうか。


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