リップクリーム

昔、知らない女がリップクリームを落として行った。

私は、それをすぐ手に取り声を掛けた。

ある本を読み、これが私が恋愛とは無縁な存在であることだと気づいた。
それがどんなリップクリームだったか、女がどんな反応をしたのか今でも鮮明に、色鮮やかに覚えている。

そして、この文章を綴っていることもまた、無縁であることの証明である。


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