『サンタクロースか…』

「ねぇ、サンタクロースっているの?」
純粋な質問が、隣から飛んできた。
「そうだね。いると思うよ。」
「いるの?なんで?ねぇ、なんで?」
今にでも、シートベルトが外れそうに
なる程、体を前に揺らしていた。
「それはね、まず、サンタクロース
 って、どんな人だと思う?」
「うーん...」
しばらく考え込んでいた。
答えが来るまで待つことにする。
「...赤い帽子を被っていて、
 白い髭を生やして、
 赤い服を着て、
 プレゼント袋を背負っていて、
 煙突から入ってきて、
 ソリを引っ張っていて、
 トナカイを飼っている人!!」
「な、長いけど、そうだね。」
少し動揺が隠せなかった。
「そういう人がサンタクロースなら、
 君のお父様は、サンタクロースなんだよ。」
「えー、パパがサンタさん?」
「そうだよ。それに、
 君も私もサンタクロースになれる。」
誰もがみな、サンタクロースになれる。
「でも、トナカイもソリもないよ?」
「いいね。もし、その通りなら、
 サンタクロースは、歩いているのかもね。」
「サンタさんが歩くなんて、
 聞いたことなーい。」
「そうかな?サンタクロースは人でね、
 人は歩くと思うんだよね。
 だから、サンタクロースも歩くんだよ。」
「なにそれー!!」
「そのままのことだよ~。」
「ねぇ、ならなら、
 サンタさんってー、どんな人?」
「それはね、赤い帽子を被って、
 白い髭を生やして、赤い服を着て、
 プレゼント袋を抱えて、歩く人だね。」
「それ、さっき言ったー!!」
「そうだよ。だから、私も、君も、
 君のお父様も、みんなも、
 全員、サンタクロースになれるんだよ。」


なんて話をしていたことを彼女に伝えた。
「あなたって変な人ね。」
「えぇ…」
その一言で、どれほど傷ついたことか。
いや、むしろ、褒め言葉なのかもしれない。
「…そうだよ。ありがとう。」
ここは開き直って、お礼を伝えることにした。

当たり前のように思える毎日に、"同じ日がないこと"を知った。きっと、あなたのその行動にも、"同じ行動はない"でしょう。"かけがえのない毎日"と"あなたのその何気ない行動"は、たった一度の出来事なのよね。ありがとう。