【ショートショート】ピコさんの山道「投げ銭方式」


この2番山の山頂までの山道を作った人はピコさん。
ピコさんは小さい時から村一番の人気者。運動も勉強も村一番。親御さんにとっても自慢の息子。ピコさんはいつも喝采を受けていた。
ピコさんはその愛情を独占したかった。すごく愛されたかった。一番になれば愛してもらえる。
だからピコさんはいつも一番にこだわった。
ピコさんは村を出て、都の学校に入った。
その学校は由緒ある学校で、国中の村から、村一番の秀才を集めた学校だった。
ピコさんはそこでも一番にこだわった。
もてるもの全部を出して一番になろうとした。
決してライバルを妨害するようなことはしなかった。正々堂々とぶつかった。
でも、なれなかった。
どんなにどんなに頑張っても一番にはなれなかった。
だめだ。
ピコさんは焦った。
一番じゃなきゃ意味がない。
でも一番になれない。愛してもらえない。
喝采が鳴り止んだ。
どうすれば一番になれる?
どうすれば愛してもらえる?
そしてピコさんは思い付いた。
そうだ、
道を作ればいいんだ。




既定路線で一番になれないのなら、自分で新しい道を切り拓いて開拓者になればいい。
そうすれば、必ずその道で一番になれる。
たまたまそこから一番山が見えた。
どうせならあの山のてっぺんを取ろう。
山頂までの新しい道を作ろう。
それからというものピコさんは一番山を調べた。古地図をめくっては何度も何度も足を運ぶ。
どこに道を作ればいいのか考えた。来る日も来る日も考えた。
そして、ある時閃いた。
ここだ、ここに道を作ろう。
それにはどうしても協力者が必要で、ピコさんは口説いた。
説明している暇はない。道をつくる。信じて乗ってくれ。
協力者を数人引き連れて戦車に乗った。
そしてガァァァーッと木々をなぎ倒しながら進んでいく。あっと言う間にそこには新しい道が出来ていた。
人々は喝采した。
でも、まだまだ山頂は遠かった。
戦車に乗っている時のピコさんは軍人そのものだった。とても怖くて厳しかった。でも誰一人途中で降りるものはいなかった。
何もなかった所に道ができていく様を、こんな間近で見れるなんてそうそうないことだから。
これを三回繰り返した。
そしたら遂に山頂目前まで来てしまった。元々裏道だったこの道が、表通りと山頂で繋がりそうになった。
裏道を後からついてくる人もどんどん増えてきた。喝采が鳴り響いた。そしてどんどん大きくなっていった。
ただ、そうなると表通りの商店は困る。
裏は裏。脇は脇。他所でやってくれ、と。
それで仕方なくピコさんは2番山に来た。
そしてまたピコさんは同じように二番山で道を作った。山頂までの新しい道が出来るまであっという間だった。
人々は喝采した。
ピコさんは完成した。
全ては完璧だった。
でも、どこかさみしかった。
だからピコさんは一度山を降りることにした。
コペルニクスの本を抱えて。

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