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ウンチクで酔わせられると思うなよ

休日の前の日の最強感は最高だと思う。明日が有給ならなおさらだ。

月末の締めをむかえる6月30日、昨今の経済事情のせいか処理すべき業務はほとんどなくて、午後の業務は専ら定時後どこで飲もうか店を模索する作業に費やされた。Googleマップの行きたい店リストを漁る。
今日は刺身と日本酒でさくっと立ち飲みが気分だ。日本酒好きの友人が教えてくれた店のメニューを見ながら、うん、サワーじゃない、日本酒だなと口の中で予行練習をした。

日本酒が好きだと言うと、日本酒のこと教えてくださいよ、勉強したいんですっていう人がちらほら現れて、いや私は辛いか甘いか、香りがいいのか後味はさっぱりしているのかくらいでしか味は見てなくて、正直米がどうとか磨き方がなんちゃらとかどうでもいい、飲んでみて好きだと思えたらそれを飲んだらいいよと思うタイプの邪道な酒飲みなのでそういう人とはなんとなく飲みに行けないでいる。
教えられることは何もない。好きなものを好きに飲んだらいいというスタンスだ。


カウンターに陣取りあらためてメニューを見てみると日本酒は6種類しかなくて、日本酒好きが通うような店には思えなかったし先客もみんなハイボールか生を飲んでいた。
そういう感じでいい。
宮城の有名どころの辛口とマグロ刺しを注文する。

Amazonのほしいものリストに突っ込んでいたものの中から買いたいものを選んだり好きな男のFacebookを見たりツイッターを眺めたりしているうちに半合がなくなり、両隣の男性客は話しかけてくることもなくいつの間にか帰っていった。
そういう感じでいい。
1人で来ている私に無理に話しかけようとすることと、それ以上に、日本酒好きだと知るや否や日本酒について産地や製法だのウンチクを語られるのが私は好きじゃない。


数ヶ月関係を持ったイタリア料理店の男はたぶんワインのウンチクを毎度語っていたかもしれない。
だけど今思うとそれはイヤじゃなかった。
この土地の何年代のものはこういう味わいで特徴があってなんたらかんたら言ってて、正直内容は全く覚えていないけど、私はワインを飲む時の彼の楽しそうな顔や、今日開けるワインと絶対合うぞってうきうき調理する後ろ姿、少し置いて酸化させると味がもう少し変わるよとささやく声を覚えている。
産地もブドウの種類もどうでもよかった。ウンチクを聞くより、そういう彼を見ているだけでよっぽど酔えた。
酒でもセックスでも、大事なとこだけ押さえておけばあとはきっと知識なんかいらない、好きなものをとことん好きなだけ味わったらいい。


結局1合半飲んでしまった。頭が痛いし気持ち悪い。でも大丈夫。明日は有給なので私は最強だ。

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