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染髪の時の耳のカバーは絶対ダサい

先週から、左の耳下から顎にかけて異様に熱を持って赤く腫れている。
昨日胃カメラをしてくれたクリニックは皮膚科も受け持っていたので、胃の診断のついでにすみませんがとマスクを外して頬を診てもらった。
痒みはなく、虫歯もない、かぶれも外傷もないとなると原因がわからないようで、若いドクターは不思議がりながら皮膚の内部で何らかの炎症を起こしていることは間違いないと判断し抗生物質と胃薬をたっぷり1週間分処方した。

半年ほど前にも同じことがあり、その時は大人のおたふく風邪かと思い耳鼻科へ駆け込んだがその時も原因はわからなかった。結局抗生物質で治ったので今回もそのパターンでいけそうだ。

治ってくれればそれでいいし、原因も私には何となくわかっている。
私の場合、慣れない環境での緊張や疲れはすぐ胃腸に不具合を起こし食事がまともに摂れなくなり、栄養不足による免疫力低下から細菌やウイルスに弱くなるのだろう。
そしてそれらはたぶん、ピアスの穴から侵入している。
2回とも左頬に炎症を起こしているのは、左側に穴が多いことと、左を下にして寝る癖が関係していると思われる。
だからといってピアスをやめる気はないし私は左を下にしないとよく眠れない。


耳が好きだったのかピアスが好きだったのかわからない。
赤子の頃眠る時は必ず誰かの耳たぶを握らなきゃ眠らなかったらしいし、いとこの興奮すると赤くなる大きな耳に触りたくて追いかけ回した。
高校1年生の時、繁華街でうさんくさいおばさんがやってるブティックに売られていたピアスに惚れてなけなしの小遣いをはたいて買った。金メッキに縁取られた透かし模様の水色のリングピアス。これのために穴を開けようと決めた。
セックスをするようになって、耳を舐められると下から迫り上がるような、どの部位を触れられるときとも異なる快感を得られることを知った。


ピアスを開けた日、仕事から帰った母にうきうきして見せたら一気に青ざめて「お父さんには黙っておくからすぐにやめなさい」と言われた。
雪がのっつり降った日、何となく学校に行きたくなくて祖母とバスに乗って遠くのスーパーへ行った。あの水色のピアスをつけてマフラーに顔を埋める私を、きれいだと言って祖母は目を細めた。


ピアスをする時、苦さ、高揚感、切なさ、快感がないまぜになって湧き上がる。
耳が美しいこと、気持ちいいことはいいことだ。
耳とピアスへの執着心は、私を成す数少ないアイデンティティのように思う。

もし耳から感染する致死のウイルスが某国の研究所から漏れ出し世界中に広まって、人々はみな美容院で髪を染めるときに被せられる謎の耳カバーみたいなもの(ドラッグストアで売っている、一時品薄となりフリマアプリで高額転売される、コットンでのハンドメイドが流行する)の装着を義務付けられ、耳を露わにすること、ウイルスの侵入を助長するピアスなど禁忌とされてしまったらどうしよう。
田舎に隠れて日々の祈りの時間のみ装着してピアスを崇める隠れピアシスタンになるしかないかもしれない。

フリマアプリで見つけて何となくお気に入りに入れてそのままにしていたピアス、絶対に売れないと思ってたのに今日見たら売り切れてた。ありえない。こんなの買うやついねーよ…って思ってたのに。ツタンカーメンのピアス。
顔面だけなので、どっかの狩猟民族が首から下げてる獲物の生首ネックレス感があって不気味だった。フェイクの石が散りばめられていて妙にギラついている。
SOLDの赤いステッカーを見たら、もしかして私これほしかったのかなという疑念が持ち上がってくる。
いや、ないわ、絶対にないと思いながら少しだけ悔しくなってスクショした。

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