帰郷:中原中也
中原中也の詩が好きです。
七五調の詩は親しみやすく、自分に正直なところ。
自分をさらけ出したらいいんだよ、飾らない自分を見せたらいいんだよ、と語りかけてくるところ。
「頑是ない歌」は海援隊の「思えば遠くへ来たもんだ」でも歌われています。
他にも長谷川きよしさん、友川かずきさんは曲を付けて、「骨」はなんと石原裕次郎さんが歌っていたようです。
私が一番好きなのは「帰郷」。
最後の「ああおまえは何をしてきたのだと 吹き来る風が私に言う」は、故郷を離れた自分に、故郷が問いかけているようで、私自身も何をしてきたのだろうと自問してしまいます。
あこがれて都会に出て行ったけど、都会はあなたに何かしてくれましたか?
あなたのやりたいこと、生きがい、そういうものは見つかったの?
何もなかったでしょう?と問いかけながらも温かく迎えてくれる。
それが故郷なんでしょうね。
帰郷
柱も庭も乾いている
今日は好い天気だ
椽の下では蜘蛛の巣が
心細そうに揺れている
山では枯木も息を吐く
ああ今日は好い天気だ
路傍の草影が
あどけない愁みをする
これが私の故里だ
さやかに風も吹いている
心置なく泣かれよと
年増婦の低い声もする
ああ おまえはなにをして来たのだと……
吹き来る風が私に云う
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