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養老まにあっくすエッセイ集③
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#AI

唯脳論からAI論へ

【書評】『AIの壁──人間の知性を問いなおす』養老孟司=著/PHP新書 𝑡𝑒𝑥𝑡. 養老まにあっくす  コロナが流行する前の講演で、「『遺言2.0』はいつ出ますか?」という質問に対して、先生は「それはわからないが、AIについては書きたいと思っている」とおっしゃっていた。本書は対談の形式をとってはいるものの、ある意味ではこの問題に関する先生なりの総論だと言えなくもない。  いまから三十一年前、先生は『唯脳論』という本を書き、そのエピローグで「脳化社会」というキーワードを提示

シンギュラリティ

𝑡𝑒𝑥𝑡. 養老まにあっくす  最初に断っておくと、「シンギュラリティ(singularity)」というのは、巷間に流布しているように、「人工知能が人間を超える」という意味では本来ない。1よりも小さい数どうしをいくら掛け算しても1より大きくなることはないが、1.1でも1.001でも、1より少しでも大きな数は、掛け算すると無限に大きくなっていく。このように、AIが他者の手を借りずに、自律的に自分自身よりも能力の高いAIを作り出す特異点のことを「シンギュラリティ」という。  し