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ま け い ぬ ─ 負 犬 ─

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養老まにあっくすエッセイ集③
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2020年12月の記事一覧

人生をあきらめない

𝑡𝑒𝑥𝑡. 養老まにあっくす  みなさんの夢は何ですか。やりたいことはありますか。それは実現できそうですか。それともまだ道半ばでしょうか。私はいまデザイナーという仕事をしています。ずっとこの仕事がしたかったし、最初の一歩を踏み出せたときは震えるほど嬉しかったのを覚えています。でも本当は、私にはまったく別の夢がありました。  大学に入った頃の私は、多くの若い人たちと同じように、自分が何をやりたいのか、何が自分に向いているのか、まったくわかっていませんでした。まわりがみんな大学

新自由主義

【書評】『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』若林正恭=著/文春文庫 𝑡𝑒𝑥𝑡. 養老まにあっくす  私はいつも、自分が場違いなところにいるような気がしていた。どこにいても、借りてきた猫のような気分だった。隅っこの方に身を潜めて、なるべく目立たないように気配を消して、誰かが僕に気づいて声を掛け、視線がこちらに集まっても、気の利いた一言で場を湧かせられるように身構えていた。  「お前はここに相応しい人間か?」いつからだろう、そんな声が耳の奥で聞こえるようになったのは。