なかなか上達しないブラジリアン柔術愛好家の小さな小さなブレイクスルー

たった1個の技術を何年も試行錯誤しながら練習して、最近ようやく同じ青帯相手であればスパーリングで使えるようになったその習得過程の記事です。自分と同じ白青帯レベルの練習者ではなく、ブラジリアン柔術(BJJ)のインストラクターを想定読者として書いています。
インストラクターになる人は、BJJに適性がある或いは膨大な練習量で各種技術を習得してきたがゆえに、上手く出来ない一般会員がどこで詰まっているのか、なぜ出来るようにならないのかを見つけるのが必ずしも得意でないこともあるでしょう。しかし、BJJ業界には上手く出来ない生徒がいたら指導者側が自身の指導方法を検討し修正する独特のカルチャーが根強く、「上手く出来ない」側からの発信もそれなりにニーズがあるはずだと、これを書くことを思いつきました。新しい技術を出来るようになることで生徒が笑顔になり、それを促せたことを指導者が自らの喜びとするBJJカルチャーが日本でもっともっと普及して欲しいという思いで書きました。

司法試験受験でも語学でもこれまで学んできたことは何でも、初学者レベルから次の段階、1階から2階あるいは中2階に上がるときが一番大変でした。3階以上に昇っていくのは2階に上がるのときの成功体験を生かして努力を積み重ねれば良いけど、一番最初の段階は努力が必ずしも成果に比例しないことが多いと思います。が、ちょっとしたことがそのタフな中2階に上がる取っ掛かりになることがありますよね。で今日の題材はこれ、バルボーザエビです↓

スプラッシュ柔術、木部さんの動画をお借りしました。
思い起こせばウン年前、トライフォース大阪に入会するや否や、当時茶帯だった加藤壮一郎さん(現在は黒帯)の美しい柔術に魅了され、自分もあんな風に動けるようになりたいと憧れました。そのムーブのひとつがこのバルボーザエビを使ったガードリテンションでした。
以来、加藤さん含めこの動きが得意なジムメイトたちに何度も相談し、有料無料の各種動画を視聴し、マットや壁を使って試行錯誤してきましたが、これがまあ上手くなりません。それが先月から急に同帯相手ならスパーで使えるようになりました。中2階に上がれた感覚の、小さな小さなブレイクスルーです(まだ2階には到達していない感覚です)。

直近のきっかけは、savoさんがツイッターに投稿されたこの動画でした。インバーテッド系のムーブって、早い人は白帯から器用に使いこなすし、出来る人と出来ない人の差が最も明確に現れる技術のひとつだと思います。

そういやこのムーブが得意な人って、お尻が横方向にスルッと抜けてから脚を回してリテンションすることが多いよな、何をどうやったらこういう動きになるんだろう?と再び考え始めました。なおこの動画を見る直前に、トライフォース天満のクラスで大黒インストラクターから相手を常時自分の両足の中に入れておく意識を指導されたことも思い出しました。savoさんがその作業を着実に行っているからです。

ここからまた色んな人に相談して自分なりに試行錯誤していたのですが今年8月下旬、パトスタジオに出稽古に行った際に、3つの点が繋がって自分が中2階に上がるための1本のロープになりました。
ノーギクラスでの準備運動で、インストラクターの桑島さんがマットを蹴る脚の膝を下に向けるように言われました。これが3つ目の点、自分にとっての決め手になりました。帰宅して自分が参考にしてきた各種教則動画を確認してみると、やはりみな膝がきっちり下を向いています。

今年の2月か3月、大黒インストラクターがまだTF大阪で指導をしていたとき、キックターン時に足の親指でマットを蹴ることを何度も強調していました。これが2つ目の点になります。がその当時は、なかなか親指でマットをしっかり蹴ることが出来ませんでした。自分だけでなく他の白青帯たちも苦労していました。ダナハーのリテンション教則でもマットを強く蹴っていることには気付いていましたが、自分は柔軟性が低すぎてそれが出来ないのかなと諦めかけていました。
ところが尻を持ち上げてから膝を下に向けるように意識した途端、体が固くても親指でしっかりマットを蹴ることが出来るようになったのです。

1つ目の点は、肩を支点にしてお尻をしっかり上げることに気付いたことです。自分が見た中では、ラクラン・ジャイルズが教則の中で肩を支点にすることを言語化してくれていました。肩支点の状態から頭を中に入れるのも自分は苦手なのですが、やはりラクランがベリンボロの動きを分解解説している動画を真似ることでだいぶマシになりました。ラクランがこの動きを表現するときに使うTuck Inという表現が自分にはしっくりきました。

1つ目と2つ目の点については今年前半に気付いて練習していたのですが、成果は出ていなかったのです。ところが3つ目の点が揃ったことで3点が一気に繋がり、中2階に上がることが出来ました。
人によって苦手なことは違うので、これを教えれば誰でも出来るようになるというポイントはなかなか無いかもしれません。けど同時に、苦手な人は共通して引っかかる失敗ポイントってのもそこそこありますよね。自分が気付くのにものすごい時間を要したバルボーザエビに関する上記3つの点は、出来てない人はみな共通しているように思います。

BJJインストラクターが自分のような、なかなか上手くならない人の出来ていないポイントに着目し、それを克服するための言語化や練習方法を考案すればするほど会員・生徒の効率的な上達が促進される、それは各ジムにとってはサービス向上であるし、そういった積み重ねの総量が増えることでBJJがより普及し、日本社会のカルチャーをも良い方向に変えていくのではないかな、とそんなふうに考えています。

以上

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