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【いどこ塾】「おとなも子どもも自分でいられる場所」をめざして


大阪府交野市にある一般社団法人「根っこわーくす」。
2017年4月に設立されました。

「根っこ(自己肯定感)が育つ社会をつくろう」〜イキイキのびのびしなやかに〜という理念のもと、4つの事業を展開しています。

今回のインタビューは子どもの居場所事業「いどこ塾」について。

自分の放課後を自由にデザインする「放課後いどこ塾」、自然のなかで焚き火や川遊びなど、自由にあそびをつくる「週末いどこ塾」などの取り組みがあります。

放課後いどこ塾は、交野市の拠点「tomos」で週に3回、15時から19時まで開催しています。対象は交野市内の小中学生です。

週末いどこ塾は毎週末の日帰りプログラム、月に一度の一泊二日のプログラムがあります。こちらは主に高槻市や交野市のキャンプ場で行われ、小中学生が対象です。

大人も、子どもも、学校に行っている子も、そうじゃない子も、
自分らしく関わり合う。
そんな心の居場所をつくる事業が「いどこ塾」です。

ヨリミチは「色々な選択肢があること」を発信することを目的に3月から活動を始めた団体です。最近、「居場所」と呼ばれる場所は増えてきましたが、運営側の想いに触れられる機会は意外と少ないのが現状です。
そこで、私たちは「想い」を持って活動をされている方々にインタビューを行い、記事として世の中に発信していきたいと考えています。

今回は、ヨリミチスタッフのわさびが関わっていた根っこわーくすの「いどこ塾」の想いをお届けします。



お話を伺ったのは、「あいしん」という愛称で親しまれている相澤さん。
「いどこ塾」のスタッフとして大切にしていることと、それに繋がる過去のことをお伺いしました。

子どもたちの素直な部分に触れたい、という思いから

あいしんさんは、子どもと関わりたいという思いで、大学卒業後に教員免許を取るための勉強をしながら明石市の中学校で生徒指導相談員として働いていました。

主な仕事内容は、クラスの補助や、障がいを持っている生徒のフォロー。授業中に抜け出した子がいたら廊下を追いかけたり、話を聞いたり。
生徒と先生のつなぎ役として、子どもたちの近くで関われる。

「今までは何も知らなかったから、やんちゃな子たちと関わるのは怖いと思っていたけど、話を聞いてみたら、それぞれの思いとか、理由があってそういう行動を取っていることがわかって。だから、現場ではそういう子どもたちの素直な部分に触れたいと思っていました。」

「そうやって働きながら、教員免許は取れたんですけど、本採用は落ちてしまって。そんなときに、根っこわーくすの代表、はじめちゃんから『放課後の学童をつくりたい』という話を聞きました。」

話を聞いたのは2月。次の春から講師という形で学校現場に入る安定した道か、どうなるかわからない放課後学童を一からつくる道を選ぶか。
大きな決断を迫られていたという。

「学校現場にいるなかで、大人が教えるということに疑問を持っていました。」

「図工のように自由度の高い授業でも、子どもたちは『先生、どうしたらいいですか』って聞いていたり、先生もひとりずつチェックしたりして。
なんでこんなに自由なテーマなのにチェックが必要なんだろうって。」

教える、とか正しさに沿って進めるというよりも、間違えてもいいからおもしろく学べる場をつくりたい。

「放課後学童でなら、この思いを実現できると思いました。」

「初めは学童を作ろうとしていたんですけど、制約が多くて特定の地域の子どもたちしか来られないみたいで。もっと対象を広くしたかったので、『形としての場所ではなく、人の繋がりとしての居場所をつくろう』という思いで毎週末の日帰りキャンプ、月に一度の宿泊キャンプを始めました。」

このときに始まった「週末いどこ塾」の取り組みは、今年で7年目になります。

放課後いどこ塾が始まったきっかけは、コロナ禍の休校期間でした。根っこわーくすを立ち上げて3年というこのタイミングで、ちょうど交野市にtomosという場所を構えることができたという。

当時のtomos(2021年)
根っこわーくすと「かたのの森のようちえん いしころえん」がタッグを組んで生まれた子育ち拠点です。

「学校が休校になったときに、子どもたちの居場所としてtomosを開放していたんです。休校期間が明けて、学校に戻っていく子がいる一方で、tomosに通い続けている子もいたんです。」

「『あれ、今日も(学校)行かんの』って話したりして。学校に行かない子たちがいるのは知ってはいたけど、目の前にいることで実感したというか。」

「じゃあこの場所で居場所づくりをちゃんとやっていこうと、もうひとつの学校である『いどこスクール』と同じタイミングで『放課後いどこ塾』を始めました。」

大人らしくない、対等な存在

あいしんさんは、子どもたちとどんなふうに接していますか?

「色々な現場に行って子どもたちと関わるけれど、『おとなげない』って言われます(笑)」

「子どもたちが『おとなげない』って言うってことは、大人らしい大人はたくさんいるということだと思うんです。勝負であえて負けてくれたり、食べ物を譲ってくれたり。
だからこそ、自分はおとなげない大人でいたいと思っていて。」

「大人として子どもの心と身体の安全を守りながらも、子どもに「教える」のではなく、対等な立場で関わっていきたいですね」

たとえば、川遊びのときにつけるライフジャケット。

「つけるものだから」と伝えるのではなく、「自分の身体は守っていこう」というように子どもたちとの共通認識にしていく。
でも、なにかあったら大人が守るということもちゃんと伝える。

「子どもたちのためにふかふかのベッドを用意してあげる、というよりそれを一緒に作りたいという感覚ですね」

自分のあり方を考える

「ただ遊びに来て自由に過ごすだけだったら、別にここに来なくてもいいじゃないですか。」

いどこ塾では、ここに来て一緒に遊ぶことの意味や、大事にしたいことを子どもたちにしっかりと伝える。

「『いどこ』ってなんだろうって話になったときに、みんながそれぞれ『家みたいな感じ』『色々できる場所』って答えるなか、ある小学4年生の男の子が『自分が自分でいられる場所』って言ったんです。それが衝撃的で。」

「その言葉が出てくるってことは、自分が自分でいられない感覚を知っているんだろうなと思うし、自分でいられる感覚もわかっているということなんだと思います。」

いどこ塾の朝の会では、毎回その日に呼ばれたい名前を決める。

「やっぱり呼ばれる名前ってめっちゃ大事で。大体あだ名って自然とできていくものだけど、自分で考えること、そして自分で決めることが自分を大切にする一歩になると思うんです」

「その『自分が自分でいられる場所』って答えた子は、初め『ねこ』って名前を付けていたんです。全体の場ではみんなと同じように振る舞うんだけど、その場が安心できる人だけになると、本当に猫みたいに絡みにいく子で。何回か回数を重ねていくなかで名前を変えて、『ねこ』でも下の名前でもない、それらを組み合わせた自分にとってしっくりくる名前にしていました。」

「その子が葛藤している様子を見ていて。きっと自分の名前を決めるということを通して、『自分がこの場にどんな状態で居るか』というのを来るたびに探っていたんだと思います。」

子どもたちの関わりが文化をつなぐ

朝の会などを通して、いどこ塾は文化を作ってきました。

「始めた当初は『もうあいしん、話長いわ』って言われながらも 『いどこ塾は自分を大切にする場所やで』っていうことを毎回伝えてきました。でも、やっぱり自分も長いのは嫌だし、こちらから伝えるというより形から子どもたちと一緒につくる形へ変えていったんですけど。」

最近いどこ塾に来るようになった子に、大切にしたいことが伝えられていないと感じることもあるそう。

「本当に些細なことで言うと、廊下とかで遊んでいたら他の子は通れなくなるんだよね。それでその子が通りたそうにしてるんだけど、なにも言わずにちょっと怒り始める。でも遊んでいる方も意地悪しようと思っているわけじゃない。それで、遊んでいる側の昔から通っている子が『通りたかったら「通りたい」って言えばいいやん』って言ってて。」

素直に言えたら、相手も素直に譲ってくれる。
人に期待していると、思い通りにならなかったときに怒りになってしまう。

「新しく来るようになった子と、前から来てくれている子の考え方にギャップがあるので、改めて場作りの方法を模索していますね。」

「いどこ塾の文化を子どもたちの中で継承してもらえたらいいなと思っていて。大切にしたいことを大人たちが伝えるだけじゃなく、関わりのなかで伝わって、心地よく過ごせる場が作られていくのが理想かな。」

「あとは、色々な大人に関わってもらえるようにしたいです。色々な経験をしてきた大人が関わることで子どもたちの世界も広がる気がして。たとえば、『自転車で日本一周したんだよ』って語る大人がいれば、子どもたちの中にも『ちょっと自転車であそこまで行ってみようぜ!』って新しい気持ちが芽生える。そういう相互作用に期待しています。」

「居場所って言うからには、子どもが言っていたように『自分が自分でいられる場』にしたいと思っていて。
子どもたちはもちろん、そこに関わる大人たちも『子どもになにかをしてあげる』のではなく本来の自分としていられる場所。
大人とか子どもとかではなく、ただ人として関わり合える場にしていきたいです。」

教える、教わるではなくお互いに学び合える場所。
自分がどうありたいのかを考える場所。

素直な気持ちで経験したことが、なによりも心を育てるのだと思います。

(2024/6/19 取材 ヨリミチ ゆきの)

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子どもの居場所事業「いどこ塾」(大阪府)

◯放課後いどこ塾
開室時間:月水金 15時から19時まで
対象:交野市の小中学生
費用:ワンコイン
(参加意思の表明として子どもたちが握ってやってきます。500円でも1円でも!運営費の一部となります。)

◯週末いどこ塾
開催日時:日帰り/毎週末 宿泊/毎月1回
(詳細日程は、HP参加お知らせ内にて)
対象:交野市の小中学生
費用:日帰り/3,000円 宿泊/8,000円
開催場所:交野市や高槻市を中心に、天候や季節によって調整します。(開催前のご案内で連絡します)

お問い合わせはこちら

一般社団法人 根っこわーくす
HP https://neccoworks.com/
住所 大阪府交野市私市7-19-14

記事の更新情報はインスタグラムから

https://www.instagram.com/yorimichi_siyou/

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