見出し画像

足元のワンダーランド

「雑草という名の草は無い」
日本の植物学の父、牧野富太郎博士はそう言ったそうです。

足元の植物たちが、
「名のない雑草たち」ではなく、

「シロツメクサ」「オオバコ」「ナズナ」
「ハキダメギク」「スズメノカタビラ」 ...

というように、
それぞれ別々の植物なんだと
ちゃんと分かるようになったのは
私が大学生の時でした。

足元の植物たちの輪郭がくっきりはっきり
見えるようになるにつれ、
なんの変哲もないと思っていた近所の道が、
ワンダーランドに変わってゆきました。

花といえば、やっぱり桜やひまわり、
色鮮やかな花びらが綺麗!
そう思っていたけれど、
エノコログサは派手な花びらがなくたって、
太陽の光を受けてキラキラ輝く芒がとても美しい。

よく花輪を作って遊ぶシロツメクサ。
じつはマメ科の植物で、ほんとに実がちっちゃなサヤエンドウみたいで面白い!

雨の日のツユクサ、水彩絵の具を垂らしたような青い花弁につたう雨粒に風情があって素敵だな。

なにも変わらないと思っていた、道端の植物たちも季節の移ろいと共にどんどん変遷してゆくんだ。

「そんな当たり前のこと」と言われてしまいそうな、小さな発見が、
どうしようもなく楽しくて、わくわくで、
カメラをぶらさげ図鑑を片手に、道に蹲っていました。

さらに知識を得て行く過程で驚いたのが、
「雑草魂」なんて言葉があるように、
雑草と呼ばれる植物たちはとても逞しい生き物だと思っていたけれど、
本当はそうでもないということ。

背が低くて、大きな植物が覆い尽くす場所では光の競争に負けてしまう。
だから人が管理している場所、
すなわち、他の植物たちが入りこみにくくて、光が手に入りやすい場所で生きていくという選択をとったのが、雑草と呼ばれる植物なのだ。

人が管理している場所は、踏まれたり刈られたり、人による撹乱がたくさんある。
それを根性というあやふやな方法ではなく、
戦略的にクレバーに生き抜いているということを知って、とてもかっこいいと思ってしまった。
多種多様な植物がいる。
そのぶん多種多様で個性的な各々の戦略がある。

慎ましやかだけど、賢く強かに。
そういう植物たちの生き様に惚れて、
いつかそういう植物たちの写真集や図鑑を作れたらなとほんのり考えていました。

そんな小さな夢を叶えるべく、
少しずつ植物図鑑を作っていきます。
読んでくださった人たちの足元が少しでも、ワンダーランドになればいいなと思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?