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道草植物図鑑No.11「ネジバナ」

螺旋状に巻いた、フリルのようなピンクの花序は職人さんの手仕事のよう。

なにか特別なこだわりを持って造られたんじゃないかと、つい思ってしまいます。

さらにひとつひとつの花をよく見ると、ガラス細工のように繊細!

見つけたら、ぜひ手に取ってじっくり観察してほしいお花です!

さて、ネジバナはラン科の植物です。
ランというと、お花屋さんや植物園で見るイメージがありますが、
ネジバナは公園や空き地などの日当たりの良い場所で、比較的簡単に見つかります。

また群生していることが多く、
1個体見つければ、もう1個体、というようにどんどん見つかって楽しいです。

そしてネジバナ探訪の醍醐味は、その個性豊かな花序観察!

右にぐるぐるもいれば、

右巻き


左にぐるぐるもいる。

左巻き


さらにはぐるぐるではないのも!

直線

もはや「ネジ」バナではない!

また、捻れ具合も個体によってそれぞれ。
ゆる〜く捻れている個体もいます。


花の色も鮮やかなピンク色から、淡いピンク色まで見た目にグラデーションのある植物です。
ネジバナ畑めっちゃ楽しい!

でも、そもそもどうしてこんなに捻れた見た目をしているのでしょうか?

ネジバナは花粉をハナバチに運んでもらう、虫媒花。
ちょっとハナバチの気持ちになって考えてみます。

もしも私がハナバチだったなら...
蜜を集める時、どっちのネジバナを選ぶだろう?

なんとなく、左の方が花が沢山あるように見えませんか?
同じ蜜を集めるなら、花が多い方がいい。
一度に沢山の蜜を集めたい!
それなら、左のネジバナを選びたい。
実際に捻れの少ない花の方が、ハナバチの訪れる頻度は高いそうです。

なら、捻れてない方がいいじゃんという気がしますが、ネジバナ視点では一概にそうとも言えません。

ハナバチが同じ個体の花の蜜ばかり吸うということは、そこで得た花粉は同じ個体の中で受粉するということ。
つまり自家受粉です。

できるだけ遺伝的な多様性を高めたい。
他花受粉したい。
そう考えるなら、ハナバチの訪れる頻度は低くとも、
花を少なく見せて、別の個体の花に移動してもらった方が良いのです。

捻れるも、捻れないも、それぞれにメリットとデメリットがあるということです。
どちらがより有利になるかは、生育する環境が決めること。
ならば色んな捻れ方、つまりは選択肢を準備したほうが安心できますね。

ネジバナを見つけたら、ぜひその個性豊かな捻れ具合を観察してください!

ネジバナ写真集


ネジバナ
Spiranthes sinensis
ラン科ネジバナ属

在来多年草
花時期 : 5〜8月
生育地 : 日当たりの良い草地


出典 : 美しき小さな雑草の花図鑑方 /
   大作晃一・多田多恵子

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