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道草植物図鑑No.2「オオイヌノフグリ」


なんてことない空き地の隅っこ。
気づけば、瑠璃色の小さな花畑ができあがっていました。
思わずしゃがみ込んで、春の訪れにわくわく。

オオイヌノフグリ

別名は「星の瞳」
「キャッツアイ」という英名もあるそうです。
言われてみれば、溌剌と輝く瞳に見えてくるような気がします。

きらきらした、たくさんの瞳に見上げられていると思うと、なんだか照れくさいですね。

そんな瞳のようなオオイヌノフグリの花には、いろんな仕掛けが隠れています。

まずは、お洒落なブルーの縞模様。
よく見ると、この縞は中心に向かって集まっていることがわかります。
これは「花の真ん中に蜜があるよ!」と
昆虫たちに知らせる模様なのです。

この模様を「ガイドライン」といい、様々な植物がそれぞれに特徴的なガイドラインを持っています。
植物と昆虫の密かなコミュニケーションツールなのです。

そして、そのガイドラインに導かれて昆虫たちは花にとまります。
ここで、次の仕掛けが発動します。
オオイヌノフグリの花を支える花茎はひ弱で、
とまった昆虫の重みで花はフラッと下を向きます。
すると昆虫たちも、負けじと花にしがみつき必死で蜜を吸おうとします。
その攻防戦の間に、花粉はしっかり昆虫の体にくっついて運ばれてゆくのです。

そして最後に、受粉が終わった花はポロリと地面に落ちてゆきます。
これは受粉が終わった花に、再び昆虫がやってこないようにする仕掛けです。
とても効率的!

可愛い花は、つい触れてみたくなる。
ふっと触れたとたん花が落っこちて、悲しくなっても「きっと受粉が終わった花だったんだ!」と思えば大丈夫かも。

青い瞳がポロリと落ちると、ハート型のこれまた可愛い実ができます。
オオイヌノフグリの名が、この実に由来することは有名な話かもしれません。
「イヌノフグリ」つまり、「犬の陰嚢」です。
確かにこれも、言われてみればそう見えます。
犬好きの私からすれば、
なんだかより愛おしさが増す、可愛いネーミングだなと思います。


オオイヌノフグリ
Veronica persica
オオバコ科クワガタソウ属 

ユーラシア原産の一年草
花時期 : 3〜5月
生育地 : 畑地、路傍、野原など


出典 : 身近な雑草の愉快な生き方 / 稲垣栄洋
   雑草・野草の暮らしがわかる図鑑 /
        岩槻秀明

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