見出し画像

道草植物図鑑No.21「ヨモギ」

このところ朝晩とても冷えて、
道端で目を惹く植物が少なくなってきました。

そんな中でも青々とした葉を繁らせていた植物が、みんなお馴染みのヨモギさん!

ヨモギモチや漢方などでよく聞く名前ですね!
道端でもあちこちに生育しています。

上から見たヨモギ

あまりにも馴染みすぎていて、気に留めることの少ない植物。
でも考えてみると、みんなに食べられている植物が、道端に生えているというのはなんだか不思議...。
どうしてこんなにもワサワサ生い茂っているのでしょう?

ヨモギはもともと中央アジアの乾燥地帯原産だそうです。
そのため、乾燥に適応した特徴を持っています。

その特徴の一つは、葉の裏側にあります。
ヨモギの葉をめくってみると、白い色をしている!
淡い色合いがベールのようで、とても美しいですね。

さらにぐっと近づいて観察してみると、毛がたくさん生えていることが分かります。


植物の葉の裏には、気孔という呼吸などをする穴があります。
そして呼吸をする際に、水分も一緒に出ていってしまうのです。
人間でいう口みたいな感じですね!
ただ乾燥地帯で生きるヨモギにとっては、水は貴重な存在!水分不足は命取りです。
葉の裏の白い毛は、水分が逃げないようにガードする役割を担っているのです。

また、ヨモギはスギナのように地下茎で広がっていきます。
ワサワサと生い茂るヨモギ畑は実はみんな地下で繋がっているということですね!
(怪しまれなければ、道端のヨモギ畑を掘り起こして確かめてみたい。)

ワサワサヨモギ

乾燥しやすい都市や荒地の環境に適応できて、地下茎でぐんぐん広がっていくので、いろんな所で旺盛に生育することができるんですね。

また、乾燥地帯に適応した特徴がもう一つ。
それは、風媒花であるということ。

ヨモギはキク科の植物です。
一般的にキク科の植物は、タンポポやヒメジョオンのように可愛いお花を咲かせますよね!
そういえば、「ヨモギの花を思い浮かべてみて!」と言われてもピンとこない...。

蕾がついた姿

もともとヨモギが生育していた場所は、花粉を運ぶような虫がほとんどいない乾燥地。
そのため、ヨモギは虫媒花から風媒花に逆戻りの進化をした植物なのだそうです!びっくり!

虫に運んでもらわないなら、虫を惹きつけるような目立つ花は必要ないということですね。

ヨモギの蕾


意識して花を観察してみると、確かに小さな赤いお花が咲いています。
慎ましくって、可愛い...!

花が咲いたヨモギ
ヨモギの花
時期が過ぎて、枯れてしまっていました。



さらに個人的にヨモギを観察していて面白いことが、そこで暮らす虫たちを探すことです! 

深い藍色が美しい昆虫。
その名も「ヨモギハムシ」
主にヨモギの葉を食べて暮らしています。

ヨモギハムシ

まるで宝石のように輝く昆虫。

そして、たまにニキビができたみたいなヨモギを発見することがあります。
これは虫えい(虫こぶ)といって、昆虫がヨモギの葉っぱに卵を産みつけて、幼虫が寄生してできたものです。
中を開けると、ちっちゃな幼虫が出てきます。

ヨモギエボシタマバエ?
ヨモギクキコブタマバエ?

目を皿のようにして探し回ると、いろんな形の虫こぶが見つかって楽しいです。

ヨモギハムシと虫こぶの共演


さらにヨモギは紅葉も見どころではないでしょうか?


紅く色づく草を、草モミジと言うそうですね。
きゅんとする日本語です。

2月、霜が降りた草モミジ


食や薬として、馴染み深いヨモギ。
地味なようでいて、観察してみると面白い発見がたくさんありとても奥ゆかしい植物だということが分かりました!


ヨモギ
Artemisia indica
キク科ヨモギ属

在来多年草
花時期 : 9月〜10月
生育地 : 路傍、山野、荒地など


出典 : 身近な雑草の愉快な生き方/稲垣栄洋・
       三上修
   美しき小さな雑草の花図鑑/多田多恵子・
       大作晃一
   花と葉で見分ける野草/近田文弘・
       亀田龍吉・有沢重雄
   形とくらしの雑草図鑑/岩瀬徹・飯島和子
   雑草・野草の暮らしがわかる図鑑/
   岩槻秀明

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?