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【ライブ報告】世界の境界線が溶け合う、祈りの響き

永井吐無さんの線画展に
ピアノと歌で参加させていただきました。

音楽を奏でることは「祈り」であると思ってきましたが

これほど ごく純度の高い「祈り」の場に、身を置かせていただいて 

初めて知る楽琵琶や排簫(はいしょう)といった雅楽の世界の方々と、音を合わせる時を重ねながら約1ヶ月。

祈り という思いをもって自らを観じたとき、
自分の中に圧倒的な部分を占めている
余計な何か、さまざまに湧いてくる想念が、清められ洗い流されることを
まずは、願わずにいられない。

それでも
言葉にも、所作にも、
そして奏でる声や音にも 
自分というものは赤裸々に出てしまうから
それすらも、受け入れて ありのままでいることしかできないのも、また事実。

本来、祈りとは、心の内にあるものなのに
その祈りを、外に向かってあらわすということは
その時点で、矛盾と不完全さを含んでいるのだと思う。

けれども、そのような場を与えられた以上、
それもまた虚心に受け止めて 今の自分を、差し出すしかないんだ。

そんな矛盾に今更ながら気づいて 戸惑いながら
私とは違う大きな何かが、
大きな渦の中に 招き入れ、出逢わせ、見守り、
導いてくださっている、ということを
ずっと感じていた1ヶ月でもありました。

そうか、それが「同行二人」なのか、、


今回、まさに 一音一音を、
自分が「弾く」のではなく、
ただ生まれてくる響きを感じることに、
ただ耳を傾けることに 立ち戻るようにと導かれ
それこそが祈りなのだなあ、と感じながら
できるだけ、そこに純粋に響いていられることを 心がけたいと思っていました。

それは、自分を観じ続け、場を観じ続け
自分(我)にも 世界にも埋没するのでもなく、
寄り添い続ける、ということでもあるのだと思った。

そうか、それは 細密に、精妙に どんなに細かい部分も潰すことなく
正確に ひたすら忠実に描き切る 吐無さんの絵と、目指すところは同じなのかもしれない。。

以前、「言葉は観音様」と仰った方がいらしたのですが
もう何年も何年もずっと、その意味がわからなかったけど

音楽も、音も お寺と同じであり 神殿なのかもしれない。

その神殿を、その響きを 私も描こうとしているのかもしれない。
と思ったら 少しだけ、その意味がわかった気がした。

四国のお遍路さんも、そんなふうに自分自身と、見守る何かを感じながら歩かれているのかな。

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雅楽との出逢いという意味でも、未知だらけの(つまり、豊かな)時間となりましたが 
自然を愛で、その自然と一体化するように舞い歌う心 という共通点は、大事な発見の一つでした。

宙の星々や 風や鳥たちとの交歓。。

おおらかに響く 琵琶の音、風のように流れる笛の音。

「嘉辰(かしん)」と呼ばれる朗詠に声で合わせた時には、
グレゴリオ聖歌のような響きが生まれ
実は 雅楽は、グレゴリオ聖歌との共通した響きがあると言われているということを教えていただきました。

そのことを思うと、なぜか不思議と涙が出てきます。

はるか遠く、古の人々の深い祈りの心が 時を超え
宇宙を旅して
今、ここにいるわたしたちを、その響きを通してつなげてくれているような。

タイムスリップして 遠い過去の記憶に出会ったような。

いのちの不思議さを思います。

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3日目は、急遽予定外の出演となり

雨の降るなか
私にとっては、舞人・妙香さんの澄んだ世界に一人、静かに向き合い
招き入れていただいた
かけがえのない時間となりました。

お客様には「出会えてよかった」「涙が止まらなかった」と、お言葉をかけていただき
少しは、自分を祈りの中に差し出すことができたのかなと思うと
とても嬉しかった。

お遍路さんも、きっと 道中で そんな温かな声をかけられ
心満たされる出会いをたくさんされるのだろうと 
思いを馳せています。

記録家として「同行」してくださった、柿内未央さんのリハーサル時の動画です。

1日目と2日目にご一緒させていただいた 楽琵琶・中村かほるさん、排簫・中村香奈子さん、舞・妙香さんと。

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吐無さん・いしだひさやさん、
最終日に演奏した 花舞鳥歌風遊月響雅楽団(かぶちょうかふうゆうげっきょうががくだん)の皆さんと。

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室礼(しつらい)も典雅で美しく。

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雅楽の世界では、歌い、舞うことは「遊ぶ」ということなのだとか。
遊びが祈りであることも、素敵だな。

私にとって、
さまざまな世界の境界線が、響きの中で溶け合いひとつになることも
今回感じた大切な「祈り」の感覚でした。

また再会しましょう、遊びましょうねと、約束し合いました。


音を通じて調和する世界を 皆で創造していきたいと思っています。応援よろしくお願いいたします。