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展示学講座2023

展示学会が主催される「展示学講座2023」にお誘いいただいたため、受付や会場案内などのお手伝いをしてきました。

日にち:2023年11月24日(金)、25日(土)
場 所:東京大学総合研究博物館 ミューズホール
主 催:日本展示学会・東京大学総合研究博物館
参加者:全国の博物館学芸員、研究者等40名
概 要:「デジタル時代の展示を考える」
博物館法改正により、ミュージアムでは文化芸術の範囲を拡大し、まちづくり、国際交流、観光、産業、福祉等との連携を範疇に、より社会的、地域的な連携強化が求められています。そのためにデジタル技術を活用した新しい鑑賞・体験モデルの構築が重要度を増しています。文化資源の保存・活用にあたってもデジタル・アーカイブが重視されています。展示の現場やこれを支える技術者の方々を講師に招き、参加者とともに新しい時代の展示のあり方を考える場として開催されました。

スケジュール:
11月24日(金)
9:30 集合
10:30〜11:30 東京大学総合研究博物館 見学
12:30〜17:50 講座1日目 講師①〜④による講座
18:00〜19:00 情報交流会
19:00〜20:00 片付け等
11月25日(土)
9:00 集合
9:30〜12:30 講座2日目 講師⑤〜⑥による講座
13:30〜16:30 ワークショップ「東京大学総合研究博物館でデジタルを考える」
16:30〜18:00 片付け等
<講座の講師メンバー>
講師①栗原祐司(国立科学博物館)博物館法とデジタル活用
講師②洪恒夫(東京大学総合研究博物館)展示とデジタル活用の可能性
講師③植田憲、青木宏展(千葉大学)地域造形資源のデジタルデータの記録とその活用
講師④井上透(岐阜女子大学)地域資料のデジタルアーカイブ教育
講師⑤長名大地(東京国立近代美術館)美術館の歴史的展示をデジタル化し展示し再現すること
講師⑥北井貴之(AID-DCC)図鑑ミュージアム銀座にみるデジタルミュージアムの取組み

本研修会は展示学会が主催されており、博物館法改定に伴う「デジタル活用」をテーマに、情報提供がされました。
講座①「博物館法とデジタル活用」では、博物館に今後期待されることについての情報提供がなされました。中でも博物館におけるDXの推進について、博物館の規模によって1〜4フェーズで推進する機能が示され、大規模博物館におけるデジタルコンテンツの公開をめざすといったフェーズから、小規模博物館における資料目録のデジタル化まで指標が示され、今後のDX推進のイメージが共有されました。
講座②「展示とデジタル活用の可能性」では、東京大学総合研究博物館の学芸員をされている経験上、どういったところに「デジタル」が使えそうかをインデックスとしてまとめた「デジタル活用の可能性の図」が示されました。デジタルは「展示」だけではなく体験のデザイン等にも発展していけるという展望のもと、2日目の午後にはこの図式をもとにワークショップが行われました。
講座③「地域造形資源のデジタルデータの記録とその活用」では、地域資源をデータ化し、それらを使ってどうやって活用するのか、実践的な取り組みについて紹介されました。地域資源をデジタルアーカイブ化するだけでなく、デジタル技術を使って、データベースを手に取れるミニチュアやお土産として活用する可能性について紹介されました。
講座④「地域資料のデジタルアーカイブ教育」では、デジタルアーカイブに関する膨大な知から様々な情報を提供いただきました。
講座⑤「美術館の歴史的展示をデジタル化し、展示し、再現すること」では、アーカイブがあるからできること。VRを使ったならではの現代における作品の見せ方。現在、過去、未来といった時空を超えた資料提供の問題。デジタル化することによって、今活用できる価値のほかに、後世、人類の資源として活用できる可能性がある等未来志向の情報提供がなされました。当時の作品を撮影したガラス乾板という資料から、現在では喪失して不明になっている作品を確認でき、それらをVRで再現することで、今では現存しない作品を鑑賞できるよう体験を提供していました。資料性・再現性の観点からVRの価値について学ぶことができました。
講座⑥「図鑑ミュージアム銀座にみるデジタルミュージアムの取組み」では、空間インタラクションとしてのデジタル活用が紹介されました。デジタルがアナログを超えた力を持っている事例として紹介されました。図鑑ミュージアムは、エクスペリエンスミュージアムとして計画され、クライアントである東急プラザからは親子三世代で楽しめる学習要素のある展示を依頼され、図鑑を体験するというコンセプトを作成した。体験設計をする際に、「why,what,how」を利用者に理解してもらうよう組み立てる重要性があることが紹介され、これは、学習者に向けた体験についても同様な観点だと思え参考になりました。デジタルとリアルのバランスでは、「昆虫採集」における「見つける」「かごにいれる」「はなす」「近づくと逃げる」などの実体験を大切にしていると話されていました。デジタルを活用したUXを設計するためには「リアル」な体験の組み立てが鍵になっていることを再確認できました。アナログ特有な物理的な利点として、例えば障害物を潜るなどの身体感覚を伴う体験をすることによって、デジタルの世界観をより充実した体験に生かされていることに共感できました。
続くワークショップでは、「東京大学総合研究博物館でデジタルを考える」というテーマで、会場の博物館をモチーフとして、デジタル活用の可能性について検討しました。1日目に紹介された「博物館におけるデジタル活用の図式」を元に、参加者たちが考えるデジタル活用を議論し、最終的にチームごとに発表を行いました。6チームそれぞれの観点があり、参加者の学芸員や研究者としての専門性が生かされたアイデアが発表されました。
デジタル活用のイメージ案としても、博物館で消化できるような観点が盛り込まれていて良かったです。若年層が能動的に参加してみたいと思えるようなアイデアや、シミュレーションといったゲーム感覚でできる文化観光的なアイデアなどもありました。学術でやっていくことを文化観光につなげていけそうなアイデアもあり、全体的に自分ごと化したアイデアができていて良かったです。
今後のデジタル活用では、アイデアのシーズを出すのが大事なので、AIをうまくつかっていけそうなアイデアやこんなものがあればワクワクするな!というものを、学芸員や研究者の方々が持ち帰られるよう設計された有意義なワークショップでした。

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