寄居若者会議メンバーインタビュー:清田享平さん
「寄居をもっと盛り上げたい」「寄居のために何かやりたい」
そんな思いを持つ若い世代が集まり、意見やアイディアを出しあって寄居の魅力発信やイベント等の活動を行う寄居若者会議。
そのメンバーの素顔や寄居町への想いなどについてインタビューさせていただきました。
今回は都内大手企業で働いていた経験もあり、現在はご自身で会社を経営されている清田享平さんにお話をお伺いしました。
- 清田さんは今、どんなお仕事をされているのでしょうか
現在は、起業して自身がオーナー(出資者)として3社の会社を経営しています。
1つは、東京の銀座を拠点に、大企業やスタートアップの経営コンサルティング支援とベンチャー投資、次に、寄居を拠点に自社ウェブサービスの企画・開発、地域起業家育成、最後に、熊谷を拠点にサッカークラブ運営とアパレルブランド事業をしています。3社とも異なる事業領域で幅広く活動しています。
- 今は寄居町に住われているのですか
はい、2018年に寄居町に帰ってきまして今は地元を拠点にリモートワークメインで仕事をしており、週や隔週に1回くらい都内に行く感じです。
自分が経営者なので、自分のリズムで好きな時に、好きな場所で、好きな人とお仕事することが出来ています。
- 清田さんと同世代の方は町外に出られていることが多いと思います。清田さんはなぜ町外ではなく寄居町に住まわれているのでしょうか
妻とも話して、子育てする環境はやはり自然に囲まれている方が良いと思いましたし、地元への地域貢献として何かやりたい、そんなこともあり、寄居に帰ってきたというのが一番の理由ですね。
僕も妻も実家が寄居町末野ということもありお互いの実家もすごく近くベストな場所だと思っています。
それに、寄居若者メンバーとして活動する際に、やはり実際にその町に住んでないとわからない、気づけないことってたくさんありますし、これが寄居町に住んでないのに、あれこれ言っても現場感がないと机上の空論で終わってしまうのが残念だなと。
結局、「言うは易く行うは難し」で実行するかが全てですからね!
- ご家族のことを思って寄居に戻られるなんて、素敵な夫であり父親ですね。寄居若者会議にはどのようなきっかけで参加されたのでしょうか
ふじみ野に住んでいた頃、寄居に帰省した際に駅のホームで妻が「若者会議メンバー募集」のポスターを偶然見つけて「享平が好きそうだから参加してみたら?」と言ってくれたので応募したのがきっかけです。
- なんだか意外です。都会の方が利便性も高そうですし……
やっぱり自分が町に関わっていくならこの町に住もうと思いましたし、僕自身、都内のオシャレな場所やタワーマンションに住みたいと言う願望はなかったですし、よく住んでそうと言われますが(笑)
純粋に寄居町が好きなんですよね。
実際にその場所で、同じ空気や考え方、価値観、行動などを見ていきながら、そこでしか出来ないことをしていきたいという思いがあったので。
以前に、フリマアプリで有名なメルカリという会社に勤めていた時も六本木ヒルズに寄居から毎日通っていましたし通勤に関しては辛いと思ったことはないですね。
- 六本木まで寄居から通われていたのですか? 通勤が大変そうに思えますが、驚きです
はい、基本は朝は5時18分の始発の電車で、帰りは池袋22:30発の終電って感じで、帰れないときは都内のホテルや会社オフィスに泊まってましたね。
僕くらい地方から通ってる社員はいなかったですからね〜同僚とかもびっくりしてましたね。
でも全く苦だと思ったことはないですし、始発と終電で電車も座れますし、その間の時間(約2時間半くらい)勉強や仕事もできるので大事な時間ですし、効率的に時間を活用してましたね。
それも単なる通勤と考えるか、自己研鑽としての時間として考えるか、大きく違いますからね。
- 町内から都内に通って大企業で働くというスタイルは、若い世代の方に大きな刺激を与えそうですね
当時の同僚はみんな高級エリア(六本木~麻生十番)周辺住んでいましたが、そこに住みたいかといえば違うなと思ってましたし、繰り返しますが寄居は落ち着くし、自然に触れている為に情報量も多いんですよね。
そんな環境だからこそ様々なアイデアや考えも生まれてきますし、都内に住んでいたらまた違ったでしょうね。
現在も寄居に住んでいますが、全く不満ありませんし、不安になってもしょうがないですからね。
今はリモートワークも推奨されるようになったので、自分の時間もより使えるようになりましたし、地域に関われることも増えましたね。
- 地域との関わりが増えたとのことですが、清田さんは町の行事やお祭りなどに参加されたりしていますか
今はコロナ下で難しいですが、以前は家族や友人と水天宮祭や季節のお祭りに参加していましたね。
やっぱりいいですよね、田舎らしさというか、こちらでしか味わえないものがあるのは素晴らしいですね。
そこで偶然にも友達とも会えたりしますし。
- 寄居町は特にお祭りが多いですから、地域との関係も強くなっていきますよね。
清田さんが若者会議に参加されたのは、もともと町で何かをしたいという思いがあったのですか
僕自身、昔から漠然と町(地元)で何かをしたいという思いはずっとありましたので、それを模索していましたね。
また、両親が地元で「元六庵」という飲食店を経営しているというのもあって、家系的に起業家や経営者気質みたいなものはあったと思います。
- 実際に若者会議に参加されて、どんな活動をされてきたのでしょうか
私が参加した当時はプロジェクトコーディネーターの方がいらっしゃったので、彼女を中心にマップを作ったり、空き家をリノベーションしたり、河原でミーティングしたり、地元マルシェを開催したりと、幅広く活動してましたね。
どれもすごく0-1で何かを生み出すのはやっぱり楽しいですよね。
- 特に印象に残っている活動はありますか
特に印象に残っているというと、地元で開催した「寄ってってマルシェ」かもしれないですね。
町中の武蔵野銀行の駐車場をお借りして、寄居の豚肉や食材を使った商品「豚ツォーネ」を正喜バルさんと一緒に製造して、それをマルシェで販売しました。
1個600円と高かったんですが、すぐに完売しましたね!めちゃめちゃ美味しかったです。
あの体験はとても良かったですね〜0から何かを生み出し、お客さんに価値ある商品を届けて感動を起こすという循環が!
お店、お客さん、若者メンバーみんな三方良しでハッピーになりましたし!
※正喜バル:荒川に架かる正喜橋近くにある町内で人気のバル。おしゃれな店内で美味しい料理を囲む家族連れやグループなどで賑わう。埼玉県大里郡寄居町寄居582
活動を通して見えた、若者会議運営の“難しさ”
- 清田さんはメンバーの中ではどのような役割をすることが多いですか
基本は全体のプロジェクト企画や実行をメインに、みんなで話し合った上でやりたい内容を資料化して整理しみんなに共有して、アイデヤや意見を出してもらう起案を作ってましたね。
- アイデアを発案されることが多いのですね
こういう作業はディスカッションだけで終わると何も残らないし、次のアクションに繋がらないので、結果それが形骸化しちゃうんですよね。
なので誰かが地図とコンパスを持って方向を指し示さないといけないんですよね〜まずは!それがすごく大事!
結局ずっとディスカッションしていても、誰かがしっかり紙に落として叩き台を持っていかないと何も始まらないんですよね、でもそれが大変なので普通はやりたがらないですよ(笑)
ただ僕がいつも中心に発案してしまうと、どうしても僕の意見や影響が強くなってしまう傾向があるので、本当はみんなが自分の意見やアイデアを持ち寄った上で、それを元にディスカッションを深堀りした方がいいんですけどね。
一方で、若者会議は基本は皆さんボランティアなので、資料作成や意見出し含めてどこまで求めるのかはなかなか難しいところもありますね。
- 一般的な企業と違って、有志で集まった若者会議は考えも人それぞれです。そういったグループをまとめてプロジェクトを進めていくのは大変そうですね
まぁ〜大変じゃないと言ったら嘘になるので、前提としてスキルや知識も違いますし、想いもそれぞれ違うので。
一度参加しなかっただけで議論や現状に乗り遅れてしまうと感じるメンバーもいるでしょうし、とは言えSNSで「どうですか?」と全員に呼びかけたとしても、プロジェクトを進めていく上でしっかりと期限含めて意思決定はしないといけないので。
良く私は金銭報酬と感情報酬と表現しますが、そのバランスは難しくて、ボランティアをするのは素晴らしいことですが、一方でやりすぎてしまうと疲弊してしまうという研究結果もあるので、またこれが1円でも対価(金銭報酬)が発生するとまた違うと思いますが、金銭報酬だけで感情報酬(想いや共感)がないともそれもアンバランスになるのでやっぱり難しいですよね。
- ボランティアならではの難しさがありますね。清田さんがこれから若者会議でしていきたいことはありますか
今はコロナでオンラインの需要が高まっていますが、これが収まってくると一気にオフラインの需要が増えると思っています。
感情や表情などオンラインでは分からないオフラインの良さはあるので……だからまずは純粋に、普通にオフラインで集まって食事をしながら話しがしたいですよね、そこで皆さんの進捗状況や本音を共有したりして、改めてみんなで何がしたいか、何が出来るか、という話をしたいです。
- 顔を突き合わせることだけでしか分からないこともありますよね。先ほどはプロジェクトをまとめる上で難しい部分をお聞きしましたが、他にも若者会議の課題と感じていることはありますか
良くも悪くも、入れ替わりがあるので継続的に運営していくことは課題ですね。
僕はずっと寄居にいますが、遠方の方もいらっしゃいますし、しっかり若者会議を運営していくための体制や人員が確保できるかどうか。
でも極論、僕1人になっても何かやろうとは思っています、別に100人いるから良いとは限らないですし、たとえ5人でも想いがあって共感し、助け合える5人なら良いと思っています。
- 若者会議という枠組みでなくても構わないと
極論、若者会議としてなのか、個人(自分の会社)なのか。
行政の立場や思いを抜きにして言えば、若者会議というのは自分たちの事業で価値を自ら作り出し、収益化していかないと続かないと思ったりもしています、持続可能な仕組みを作らないと終わりが来ますからね。
会社もサービスもそうですが、自分たちでモノを売ったりサービスを提供したりして、100円でも1,000円でも、そこで得たお金としての顧客価値を感じて共有しあい、みんなでご飯を食べるというだけでも違うと思うんです。
自分たちで考えて、何かを生み出して、お金を払ってもらえるような価値を提供する、そういった小さな成功体験が循環する仕組みにすることが大事だと思います。
ただ残念なことに、今の若者会議は役場主導の事業なので、収益化はできないのが実情で、そこがやっぱり難しいところなので、収益化できる事業があれば個人的(会社として)に僕がメンバーを集めてやってもいいのかなくらいの心持ち(スタンス)ですし、若者会議という役場の想いも汲みつつ、僕自身は役場が関わらずともできることはしていきたいというのが正直な気持ちですね。
大事なのは誰かにしてもらうのではなく、自分がどうしていくか
- 清田さんの熱い思いと行動力には感服します。若者会議の課題とされていた「人員の確保」についてもお伺いしたいのですが、これからもっと下の世代の若者に参加してもうためにはどうすれば良いと思われますか
純粋にその世代の方々と触れ合う機会を自ら行動して作ることですね。
例えば、個人的に地元の小学生、中学生、高校生たちともっと交流して彼らから出てくる僕が考えもしないような斬新なアイデアをディスカッションする場とか作りたいんですよね〜出来る出来ないといったことは一旦抜きにしてそういったメンバーと関わっていくことで、新しい事業やサービス、製品、商品、そしてそれが大きなって将来的には産業が生み出されるかもしれません。
僕が唯一AIに取って変えられないと思っているは「人間の創造性(クリエイティビティ)」だと思っていますし無限ですから、そこを最大活用したいと思ってます。
- 清田さんはこれから、寄居町にどんな町になってもらいたいと思われますか
どうなってもらいたいかというより、自分がどうにかしていきたいですね。前者だと他人事で自分ごとではないですから。
僕のスタンスは「無ければ自分が作ればいいじゃん」なので(笑)
- 素晴らしい考え方です。では清田さんはどうしていきたいですか
ひとつは、地元で多くの雇用を産みだしていきたいです。
自分が会社を作ったのもそれが大きいですし、もっともっと雇用を生み出したいと思っています。
例えば、ガソリンスタンドで働いている人もスーパーで働いている人も、今はその仕事をしているかもしれないですが、もしかしたらめちゃくちゃ面白いアイデアや才能があるかもしれませんよね。
小説家の平野啓一郎さんの言葉にもう一人の違う自分を指す「分人」というのがあるのですが、そのもう一人の自分は、本人だけでは気づかなかったりもすると思うんです。
そういう人って町にも絶対にいると思いますし、そんな人同士を繋げていきたいなと思いますね。
そういった意味で雇用を「ひとりひとりの可能性を最大限に引き出し新しい価値を作っていく」と定義して、雇用の総和が地域貢献に繋がり、そして社会貢献と大きくなっていくと思ってます。
徐々に自分(会社)で雇用は作り出せているのですが、さらに加速化させていきたいですね。
将来的に寄居町から日本を代表する会社(例えばソフトバンクやユニクロ)が生まれても良いですよね。
だって都会じゃないといけないことはないですからね〜そもそも。
上記のようなことをする上で、誰かが口火を切らないと始まらないので、それが若者会議か別なのかは分からないですが、僕自身がそういうことをしていきたいです。
強気なスタンスで叩かれても良いと思っていますし、全部僕が責任を取りますから、くらいの思いじゃないと変えられないですよ(笑)
- 力強いお言葉です。最後に若者会議のメンバーにメッセージをお願いできますか
この出会いに感謝しているので、純粋に「ありがとう」それに尽きますね。
ただでさえ皆さんの貴重な人生の時間を若者会議に割いてもらっていて、物理的にもそうですし、マインドをこちらに持ってくるだけでもすごい有り難いことだと思いますし、そう思ってもらえるだけで感謝しかないですね。
あまり多くの言葉は必要ないかなと(笑)
- ありがとうございました。きっとメンバーにも感謝の気持ちが伝わっていると思います
よく「世界を変える」とか「日本を変える」とか言われてますし聞きますが、僕自身はまず、自分と関わりのあるすべての人、言い方を変えると、目先5メートル10メートルの範囲の人に喜んでもらえる「小さな価値」を届けるということをすごく大事にしています。
これからもそこは僕の思いとして変えずにやっていきたいと思っています。
【編集後記】
都内の大手企業に勤められて、3つも会社を経営されているというお話を聞いた時にはあまりにも立派な経歴に恐縮してしまいそうになりましたが、インタビューが進むにつれ、清田さんの町に対する強い思いが大きな熱を持って伝わってきました。
どこまでも純粋で、どこまでも熱い。スマートで洗練された立ち居振る舞いの根底にあるマグマのような情熱に触れ、清田さんがこれから作り出す寄居の姿に期待が膨らみました。