命を大切に!は間違っていないか?

「命を大切に!」


よく聞く言葉である。でも、この言葉に少し違和感がある。
まあ、タイトルに間違っていないか?と書いたので
この人は間違っていると思っているんだろうな。
と読み進められるのだと思うので、先に行っておくと、
半分間違っていると思う。そこでまず、反対の言い方を考えてみる。

「命を粗末にするな!」

なんだかドラマで、自殺しそうな場面で吐かれそうなセリフだ。
もしくは、暴走行為を繰り返す不良に警察官がいいそうなセリフだ。
このセリフは「命を大切に」ほど違和感がない。

ん?わかった。
命を粗末にするな! の命は、 相手の命だ。
つまり、省略せず言いうと「お前は、お前の命を粗末にするな!」だ。
これに対し、
命を大切に! の命は、誰の命なのだ?
これが小学生の美術のポスターの標語だとすると
虫とか花とかの真ん中に書かれているイメージだろうか。
となると、この命を大切に、は、実は「生命」を大切に。と書いたほうがよく、
これも略さずにいうと「生命のあるみんな、自分の命を大切に!」なので

生きとし生ける物すべてを大切に!

なんだかそんな感じに。
花もアリも魚もみんな生きているんだから大事にしようね!
そうだね、むやみに殺してはいけないよね。だろう。
少し読み替えると、我々は生きている生命をいただいているのだから、
食べ物は残さず食べましょう!みたいだ。

話が逸れたので、元に戻そう。

「命を大切に!」

コロナで、命の大切さが叫ばれることが多い。
この命は誰の命か?

「マスクをしなさい!」の文脈では他の人に伝染して死んでは困るから
あなたは周りの人の命も大切にしなさい!になる。

「手洗いうがいをしよう」の文脈では他の人から伝染されて死んでは困るから
あなたは自分の命を大切にしなさい!になる。

そう、命を粗末にするな!と違うのは文脈によって、
命が自分なのか?自分以外の誰か?なのかが違う。

ココに違和感がある。
自分の命は、何よりも最優先されるべき大切なものなのか?

何を言ってんだ?こいつ!だったらすいません。
とかく「命」の大切さを小さいときから道徳という時間に
死ぬほど、叩き込まれて違和感なく受け入れてきたが、
大切なものは、命ではなかったと思ったのだ。

極端な話をする。
一歩外に出たらウイルスを撒き散らしている人がいるかも知れない。
車の事故に合うかもしれない。外でなにか食べたら食中毒に会うかもしれない。
外には危険がいっぱいだ。家の中は安全だ。
命を大切にするなら、外なんか行かないほうがいい。
仕事も家の中でできる仕事のほうが安全だ。
命は大切だ。だから家から出ないほうがいい。

ここで間違いに気がつく。
大切なのは、命ではない。命あってこその「どう生きるか?」だ。
死んでいるように生きるなら、死んでしまったほうがマシだ!とは言わないが
「どう生きるか?」が大切なのではないか?

命は偶然に与えられる。そして、その殆どが偶然に奪われる。
病気になりたくてなる人は少ない。
事故になりたくてなる人はいない。
自らの命を断ちたいという人も少ない。

それでも人は死ぬ。命は潰える。
それは必然だが、その理由は殆ど偶然だ。

偶然に生を受け、必然に死を受け入れるしかない。
そんな偶然に左右される命を粗末にする必要はないが
生きることよりも大切に扱う必要はない。
そう、命よりも生きることのほうが大切なのだ。

生き方が大切なのだ。
2年前に膵臓癌が見つかり摘出し、回復した友人と年末に食事をした。
「よく生きて帰ってきた!」と笑った。
そんな彼が2ヶ月後に転移が見つかり、2ヶ月を待たずに亡くなった。
最後まで仕事への復帰を夢見ながら、在宅勤務で誰も会社に行けない日々に
病院で会社に行きたいと願いながら亡くなった。

命あってのものだけど、
その命は自分ではどうすることもできずに奪われることがある。
であれば、せめて生きている間だけでも生きていることを大切にしたいと。
彼が迎えることができなかった今日という日を。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?