お台場のこと

東京のお台場ほど大きく変わった場所はないと思う。

20数年前のお台場は、売店が1軒あるだけで、本当になにもない所だった。

例えば、バイクに女の子を乗せて出かける場所としては、決して選ばない。男同士で、夜中行くところがなく、なんとなく来てしまう。そんな所だった。

時々、警察が改造車摘発のための検問をしていた。騒音と排気ガスの臭い漂う殺伐とした場所だった。

そんなお台場で、ある時、海の真ん中に真っ白な鉄塔が建った。

お台場と対岸を結ぶ橋を作るという。さらに、モノレールのような乗り物が敷設され、テレビ局も移転して来るという。

とても信じられなかった。日本には土地がないとはいえ、もっと他に開発すべき場所はあるように思えた。

橋はしばらくの間、鉄塔が建っているだけだった。はた目には工事が進んでいるようには見えなかったが、おそらくはた目だけだった。

気付くあっという間に鉄塔はレインボーブリッジとして完成し、新交通システムの建設とテレビ局の移転は現実となり、周囲は見違えるような都会になっていった。

その後も町は発展を続け、今お台場に行っても、且つてと同じ場所とはとても信じられない。

今のお台場にいるたくさんの人たちは、あの殺伐としたお台場のことなんか知らないんだろうな、と思うと少し寂しい気もする。

でも、考えてみれば、私の知っているあたり前の町の風景も、昔を知る人から見ると信じがたい風景だったりするのかもしれない。