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ビッグバン以降最大の出来事


https://esahubble.org/images/opo0639a/

この画像は、1E0657-556、別名弾丸銀河団という天体の写真です。
チャンドラーX線衛星とハッブルの光学望遠鏡の画像を合成したものです。

さて、この写真は、何をとらえた写真であるかというと、二つの銀河団が衝突した現場です。

銀河団というと、銀河が100個以上集まっている集団だから、数百個の銀河の集まり同士が衝突したことになる。

数十キロの隕石が地球に衝突しただけで、地球上の生物に壊滅的な影響を与えると言われていることを考えると、大きいものでは1000億個の恒星を持つ銀河が数百集まったものが2つ、互いに衝突するとなると・・・えらいこっちゃ。

実際、これは、知られている限りでは、宇宙でビッグバン以降最大のエネルギーが発生しているイベントだということだ。

要するに、宇宙開闢時の出来事以来、これほどの規模の激しい現象は未だかって起きていない。人類が知る限りは。

もっとも、だからと言って、銀河を構成している個々の恒星同士がバンバン衝突しているとかではない。
恒星同士の距離は、その大きさに比べて、ものすごく大きいので、ほとんどそんなことは起きていないだろう。

しかし、星間物質はそんな訳にはいかない。
衝突もするし、引っ張られもする。

チャンドラーが検出した高温のガスはピンクで表されている。この2つのピンクの塊の中に、普通の物質あるいはバリオン物質のほとんどが含まれている


バリオンというのは、亜原子と言われる素粒子、つまり、ダークマターではない、普通の物質のことだ。

オレンジと白色は、銀河を表している(いつもいうが星ではない)。

ブルーは、重力レンズ効果を分析して、天文学者が銀河団に含まれるほとんどの質量が存在する領域だ。
物質ではないが質量を持つ存在、ダークマターだ。

(つまり、銀河団の質量は、いわゆる物質ではなくダークマターがほとんどを占めている。)

重力レンズ効果
遠くの銀河から発せられた光が、途中で手前の銀河や銀河団のような強い重力場を通過するときに光路を曲げられ、銀河の形がゆがんだり増光したりして観測される現象をいう。

見てわかる通り、ブルーの領域は、ピンクの領域の先を行っている。
ピンクのところは熱いガスがある領域だ。このガスは衝突した相手の銀河団の中を通るときに、あたかも空気抵抗を受けたかのように、減速する。

右側のピンクの領域の先端が弾丸のような形をしているのがわかると思う(だから、弾丸銀河団の異名がある)。

これは、左から来た銀河団のガス(星間物質)が、衝突相手の銀河団の中のガスを通り抜ける、というより押し出すときに、あたかも船の舳先が水を掻き分け、弓状の波ができるのと同じような衝撃波になっているのだ。

また、ガス同士が高速(時速1000万Km、秒速2,800Km)で衝突して、高温にもなっている。
衝撃波の先端に当たる部分は、その温度なんと1億度。だから、X線を出している(X線は物質が高温にならないと出ない)。

しかし、ダークマターは、それ自身および他の物質とは、重力作用以外直接干渉しない。
それゆえ、ピンクの領域を追い越して先に行っていると考えられているのです。

もう一つわかることは、光学画像のオレンジや白の銀河と青色の領域を比べてみると、銀河は青色のところに集まっている。

ということは、銀河はこの衝突によって減速しなかったということになる。(銀河団同士は、秒速4,500Km、時速1620万Kmで衝突(合体)している。)

要するに先に述べたように、星と星の間は、だだっ広いので、お互いに衝突とかせずに通り抜けたのだ。ダークマターに引っ張られながら。(重力の影響は受ける。)

…………という。
・・・・・

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