NGC2276 星を撒き散らす、銀河・・・?
この、NGC2276は、ケフェウス座方向1億2000万光年のところにある。
たくさんの新しい星を纏った、実に煌びやかな銀河だ。
さて、この銀河、一見してその異常な姿に気づくと思う。
渦巻銀河であるのだが、その渦の形が歪んでいる。
銀河の中心核バルジも真ん中になく、画像の左上に寄っている。
なぜこんな形になるのだろうか。
おかしいと思ったら、近くにより大きな銀河NGC2300(写真右側のオレンジ色に輝く銀河)という楕円銀河あった。
このNGC2300の引力によって、NGC2276銀河は引き寄せられ、その渦を構成する星々が画面右側の方向に引き伸ばされて、このように形が崩れているのだ。
なるほどね。
・・・ということだけでは済まなかった。
もう一度、最初のクローズアップ写真を見てみよう。
渦巻きが歪んでいる他に、何か気づかなかっただろうか。
・・・・
星の光具合は、どうだろう。
そう、左側、左側上半分に明るい、青色やピンクの星が集中している。
これは、何を意味しているかというと、新しい星の誕生が、この部分で集中的に起きているということです。
ほうそうか。
・・・・・・・・・・・何か?
なんで?
新しい星が誕生するということは、そこに星間ガスが密集して圧縮されているということです。
ここ数十年の観測でも、この銀河では頻繁に超新星爆発が起きていることわかっている。
超新星爆発は、巨大な星が爆発するのであるが、そんな巨大な星は、通常數十個から数百個に一つの割合でしかできない。
それが、この領域では、たくさんできる。
ということは、それだけたくさん星が誕生しているということである。
つまりは、それだけ、ガスが集積されているということになる。
どうして、この左側上部にガスが密集して圧縮されるのか。
いや〜、この銀河の右側に隣接するNGC2300銀河に引き寄せられたんじゃない、と思うかもしれないが、それだと左側というのが説明つかない。
だってそうでしょう。
右に引っ張られたら、右側に集まるでしょう。
まして、右に行けば行くほどNGC2300銀河の重力が強まるのだから、それより遠くなる左側にガスが集まるというのは、おかしい。
一つの解釈は、NGC2276銀河は、銀河間にあるガスの塊の中を突っ切るように動いていて(NGC2300に引っ張られるよりも、速く)、その結果、NGC2276銀河の内部にあるガスが、銀河間ガスに押し出されて、左側に集まった、という理論。
実際、NGC2300群の深部X線画像を見ると、NGC2276に圧力をかけるほどの高温のガスがあることがわかったのです。
それが下の写真。
ほう、そういうことだったのか。
しかし、・・・
まだあるのか!
この銀河間のガス。
今までは、銀河団クラスのところには、存在するとわかっていたのだが、小さい銀河のグループ、たとえば、我々の天の川銀河が属する、ローカル銀河群のようなものには、存在しない(ガスを引き留めておけるほどの、重力がないから)と考えられてきたのです。
しかし、NGC2276は、NGC2300を中心とする、小さい銀河群に所属していても、銀河団クラスには、属していない。
ということは、NGC2276が例外なのか、あるいは、我々のローカル銀河群が例外なのか、という問題が出てきたのでありました。
多分、NGC2276が例外。
じゃあ、なぜ、星間ガスを大量に引き止めて置けるのか。
多分、この銀河群には、暗黒物質が大量に存在しているのであろう。
そうでなければ、ガスは拡散してしまっているはずだからだ。・・・と。
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