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彗星2022 E3 (ZTF)


https://apod.nasa.gov/apod/ap230128.html

イタリア、シチリア島の東海岸にある活火山、エトナ山の風景。山頂からは、彗星の尾のような噴煙が流れている。
雪で覆われた斜面の上空に(2022 E3 (ZTF))のコマ(ガスと塵の雲)が緑色に輝く。

エトナ山は、3000mを超える標高を誇る。
この写真は、2023年1月23日に撮影された。
この標高で、この季節の夜は寒かろう。
その冷たい凛とした夜空に、緑色の彗星は、映える。

この彗星が先に太陽に接近したのは、5万年前という。
5万年前というと、ネアンデルタール人がいた。
オールトの雲からの来訪者

https://apod.nasa.gov/apod/ap221224.html

今彗星には、C/2022 E3 (ZTF)という名前がついている。
こういう記号の羅列は、その意味がわかっている専門家にとっては、短い文字列で必要な情報が全て表現されていて、非常に便利なものだ。

しかし、文字列が表している意味の分からないものにとっては、呪文であり、見ているだけで頭の負担になって嫌になる。

なぜなら、人間はわからないものがあると、自動的にわかろうとして頭が働くのだが、そもそも、ルールを知らないものにわかるはずがないことだからだ。

そこで、この際、彗星の名前の付け方を理解しておこう。
C/2022 E3 (ZTF)
C / : これはComet(彗星)であることを表している。
彗星が発見されると、まずC/をつける。
その後、周期性のある(繰り返し太陽に接近する)彗星であることがわかると、C/をP/にかえる。Periodic(周期性)の頭文字だ。

周期性がなかったら、原則C/のままになる。
原則というのは、消滅した、または、長期間観測されない周期彗星には「D/」、軌道を求めることができなかった彗星には「X/」をつけるからである。

2022 : これは、彗星の発見された年を表す。

E : 彗星が発見された月を表す。一月を前半と後半に分け、一年を24に分け、1月から順にアルファベットを振っていく。「I」は「J」や「1」と紛らわしいので飛ばし、「Z」は使わない。

1月1日〜1月15日  A  
1月16日〜1月31日  B
2月1日〜2月15日   C
2月16日〜2月28日 D
・・・・
12月1日〜12月15日 X
12月16日〜12月31日 Y

この場合、Eだから、3月前半ということになる。

3 :  この数字は、同じ期間に発見された彗星が複数ある場合、発見順に番号をふる。
E3の場合、3月前半の期間の3番目に発見された彗星であることを意味している。

(ZTF) : 発見者、発見組織の名前。独立に発見した3名まで書く。ZTFは、Zwicky Transient Facility という北の全天を2日ごとに撮影して、夜空の変化を調べる組織。

以上とまとめるとC/2022 E3 (ZTF)
2022年3月後半に発見された3番目の非周期性彗星で、発見者(組織)はZTFという彗星である、ということになる。

https://apod.nasa.gov/apod/ap230109.html

このC/2022 E3 (ZTF)は、前に太陽に接近したのは、今から5万年前だという。5万年前だと、ネアンデルタール人が、まだ地球上を闊歩していた時代だ。

今から5万年後には、誰がこの彗星を見るのだろうか、と考えてしまうが、残念ながらこの彗星の軌道は、開いた双曲線軌道を描いていて、二度と太陽に近づくことはない。

だから、今回が見納めである。
2023年2月1日に地球に再接近する。
ほぼ一晩中、北の空に見えるらしい。


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