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Parker vs Perseid


https://apod.nasa.gov/apod/ap180816.html

2018年8月12日3:31EDT(東部夏時間)、ケープ・カナベラル空軍基地から、パーカー太陽探査機(Parker solar probe)が打ち上げられた。

おりしも、その日はペルセウス座流星群の流星が見られる時期だった。

画面には、パーカー探査機を打ち上げる、デルタ4型ロケットの光跡とともに、右上に流星が写っている。

地平線に街の光、ロケット発射場のサーチライトの光、デルタ4型ロケットの光跡、そして、流星の軌跡。
これらの光の組み合わせが、美しい。

ところで、パーカー探査機は、何を目的に打ち上げられたかというと、簡単に言えば、宇宙の気象状態を調べるためです。

宇宙の気象状態?と思われるかもしれない。
宇宙には、太陽から絶え間なく、太陽風が吹いてきているのです。

太陽風というと、何か太陽に関係するものを風になぞらえて、言っていて、実際風のことではない、と思われるかもしれない。

それは、違います。
太陽から、実際風が吹いて来ているのです。

何をバカな、宇宙に風なぞ吹くはずがなかろう。
宇宙は真空なのだ。空気などない。
つまり、風は吹かない。

もっともな考えです。
しかし、風というのは何か。
風は空気が一定方向に流れている(動いている)ことです。

空気は、窒素と酸素、その他の分子で構成されています。
そう考える、分子が一定方向に流れる(動く)ことを風と言っている。

太陽からは、絶え間なくプラズマ状態の物質が、宇宙空間に放出されているのです。

つまり、宇宙空間には、このプラズマの流れがある。
これを風と言ってもおかしくない。
だから、太陽風。

そして、この太陽風の存在を初めて理論化した物理学者が、ユージン・パーカー(Eugene Parker)博士です。

このパーカー衛星は、彼の業績に敬意を表して、NASAが命名しました。

ちなみに、NASAのミッションで存命の研究者の名前にちなんで名付けられたのは、初めてとのこと。
いかに、パーカー博士の業績が大きいかわかると思う。

ところで、このパーカー探査機は、太陽に600万Km近くまで接近する。この距離は、水星と太陽の距離の4分の1程度になる。もはや、これは、太陽の大気、コロナの中です。

当然、人類が恒星(太陽も恒星、星)に一番近くまで、飛ばした衛星になります。

ここまで近づく過程で、金星の重力を利用して、加速して太陽に接近するのですが、その結果、パーカー探査機は、時速692,018Kmという、月まで30分もかからずに、いくことができるスピードになっています。

これも、人類が作り出した最速の機械です。


さて、このパーカー探査機のミッションは、宇宙の気象を調べると言ったが、具体的には何をするのか。

1、太陽のコロナを調べる。
コロナは、100万度に達する。太陽表面の300倍以上の熱さだ。

だから、どうだ?

いや、いやコロナは、太陽表面から2000Km以上離れたところにあるのですぞ。

熱源である太陽の表面より、離れたところが、なぜ、こんなにも熱くなるのか。分からん。

2、太陽風が一体どうなっているのか。
よく分からん。

3、太陽から放出される、太陽エネルギーの粒子が、光速の半分ほどになる。何が粒子をこんなに加速するのか。
分からん。

なんてことが、ここ60年程、天文学者の頭を悩ませて来たところなのです。
それを、この探査機によって、調べようというのです。

へえ、学者というのは、いろいろ頭を悩ませるもんだな。
それにしても、そんな学者の好奇心のために、何百億円もするロケットを打ち上げるのか。
学者っていいなあ。

なんて思った人、いるでしょう。
(私は、いつも思ってますけど。)

実は、このコロナや太陽風は、我々の生活、場合によっては文明にまで重大な影響を及ぼすのです。

強力な太陽風が吹くと、
・衛星に損害を与えることがある。
・軌道上の宇宙飛行士に害を及ぼすことがある。
・無線通信を混乱させることがある。
・電子機器や電力網を機能させなくすることがある。

なんてことが起きる。
最後の電力網が機能しない、つまりシャットダウンしてしまう、それも送電設備等が破壊されるようなことが起きると、どうなるか。

停電です。
それも、広範囲、例えばアメリカ全土とかにわたり、尚且つ設備がぶっ飛ぶ(ショートする)と回復するのに、長時間かかるようになる。

現代人の生活は、電気無くして成り立たないようになっている。電気のない生活が、何ヶ月も、場合によっては何年も続く事態になれば、我々の生活は、根本から崩れる。

中世の生活だという人がいるが、それは甘い。
なぜなら、中世の人は、電気のない生活に慣れていたが、我々が、一挙に中世の生活ができるわけがない。

コンピュータやエアコンが使えないのはもちろん、食料や水の供給さえ断たれる可能性がある。
死にますよ。

というわけで、このパーカー探査機の役割は、大きいのです。

この探査機は、7年の運用が予定されている。
従って、2025年まで、頑張ってくれるのだ。


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