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ベトナム9日目 後半

帰りがけにビンコムセンターによった。

グローバルな客層がわっさりいらっしゃる。

ここで晩ご飯を食べようかと思っていたが、まだお腹は空いていないようだ。レタントン通りまで歩いていく。

レタントン通りは日本人街だ。そのメインストリートは綺麗なおねーさん方が「マッサージしましょー」と勧誘にいとまがない。そんな中私が行ったのは

ハーゲンダッツだった。ここにはハーゲンダッツのショップがあり、非常に美味しい。日本にもあるのかな。

ぺろりとアイスを食べ終わると、そのそばにある日本人むけのラーメン店でつけ麺を食べた。食べる順番はおかしいが、私の胃は満たされた。ホテルに戻ろう…。

ホテルに戻り一休みしたものの、時間はまだ早い。ブイビエン通りを歩いてみたかったが、ちょっと距離がある。セクシーお姉さんに惹かれた訳ではないが、もう一度レタントン通りに出てみよう!セクシーはどうかと思うが、お姉さんとお酒を飲むのはアリではないか!?

そんなことを考えながら、私は意気揚々と出陣した。ホテルを出ると隣のブロックで小さな焚き火をしているテントがある。おや、靴の修理屋さんかな?

レタントン通りについたものの、なんかだ気が乗らない。昼間以上にぎらつき感が強いのだ、あくまで私の主観だが。
夜の街へ行かなくなり、数年が過ぎた。そういうモチベーションもタバコと一緒に卒業してしまったのだろう。結局セブンイレブンで飲み物を買って帰ることにした。

帰りがけ、暗がりでお地蔵さんを見つけた。いや、よく見るとお地蔵さんではなく、着座して子供を抱えた女性だった。女性は身体に障害があるようで、顔が半分ケロイド状になっており、抱えている子供も痩せていた。女性の前にはまるでお供物のようにクロレッツが一箱置かれている。

おそらく、このガムを買って欲しいということなのだろう。

セクシーなお姉さんに惹かれていた自分がひどく恥ずかしく思えてきた。私は財布を取り出すと、有り金を全部その場に置いて…こなかった。

私が不思議に感じたのは手付かずのクロレッツ一箱だ。1本も売れていないようだが、これは誰が用意したのだろうか。この女性にお金を提供することはできるが、それはどんな意味をもたらすのだろうか。それは幸せにつながるのか。

私は何もできずにその場を離れた。

「くそっ」なんだかわからないが悔しかった。

ホテルのそばで焚き火テントを再び見かけた。行きにパチパチと燃えていた火は残り火になり、炭がほのかに赤かった。煙が燻っている。

ちらりとテントを覗くと、ヒゲモジャのおじいさんが中で寝ていた。そうか、このおじいさんはホームレスなんだろう。私の泊まるホテルとおじいさんのテントは数十メートルも距離がない。こんなに近くにいるが、なんだかひどく遠い。私はおじいさんが風邪をひかないように祈りつつホテルへと足を向けた。そう、ここはベトナムだから寒くはないはずだ。けれど、だけれど...。

さらになんとも言えない気持ちになりながら、部屋に戻った。気を取り直し、私は一人で乾杯をすることにした。改めて実習の打ち上げだ。

ゴクリ…あれ?

先日学生たちと飲んだサイゴンスペシャルは美味しかったが、このビールは美味しくない。おかしい。

もう1缶開けてみる。

あれれれ?

やはり美味しくない。ビールの問題ではなく、きっと私の問題なのだ。

私は普段ほとんど酒を飲まない。一人で酒を飲んでみようなんて、10年ぶりのことだった。10年ぶりのひとり酒は失敗に終わった。

彼らといたから美味しかったんだな。ビールをじゃぶじゃぶと排水溝に流しながら、先日の楽しかった飲み会を思い出した。

部屋には外からの賑やかな音が聞こえてくる。近くのビルの屋上から音が響いてくるようだ。パリピ感溢れる音楽がほのかに響く。

パリピがいて、私が泊まるホテルがあり、おじいさんが眠るテントがある。幸せについて考えながら眠りについた。このベッドで寝れている私は幸せだ…。