島のおっちゃん

少し前ですが、劇団タルオルムのマダン劇「島のおっちゃん」を鑑賞しました。

「島のおっちゃん」は岡山県の国立ハンセン病療養所愛生園の入所者であった「秋やん」こと、秋山栄吉さん、本名秋洪琪さんと、みんや生前秋やんのところに訪ねて交流を重ねてきた人たちを描いた作品です。

今回、あまりの感動に、初めて演劇を見て泣いてしまいました。

5歳になる娘を持つ親あるある、ということで、シーンに出くわした段階では作品の中心的な趣旨と直接関係がない、秋やんと少女みんとのふれあいを描いた1シーンがあまりにも微笑ましいというか、いとおしいというか、そこで涙がおさえられなくなりました。

ここで、涙腺が緩んでしまってからは、その後、ハンセン病にかかったこと、朝鮮人に生まれたことで、世間から棄てられ、また、朝鮮半島南北分断の悲しみを背負った秋やんだからこそ経験してきた苦難や喜びのシーンに触れるたび、眼がウルウル、必死な我慢も至らず、涙がポロポロと流れ出てしまいました。

何よりも、秋やんの人へかける愛情、悪い言い方にはなりますが、執拗なまでの人への執着に、感動したり、共感したり、思いをはせたりしました。

個人的な話になりますが、僕は秋やんとは面識がありません。ただ、周りの仲間の多くが秋やんと親交が深かった縁で、一度だけ本人から電話がかかってきたことがありました。

要件は、「韓国へよく出張に行くと聞いたけど、今度行った時、海苔を買ってきてほしい。」ということでした。

親交があった仲間から聞かれる秋やんの話から、当時から「ものすごく豪快で、オープンマインドな人」という印象を持っていたので、会ったこともないけど、秋やんらしい、「厚かましいお遣い」ということと理解していました。でも、今回劇を見て、違った意味があったのではと考えるようになりました。

ほとんどが日本人で構成されるFIWCのメンバーにあって、その中に朝鮮人同胞がいるということでの関心・興味であったかもしれないし、今でこそどこでも買える「韓国のり」、15年、ないしは20年くらい前の話ではありますが、その当時でも、少なくとも鶴橋では普通に売っていたはずです。単に、「韓国のり」が食べたかったのではなく、韓国で買われた海苔が欲しかったのではないか、そういうことを、今更ながら、考えました。仮にそうなら、ちょっとは役に立ててよかったです。

今回、残念ながら見ることができなかった方は、後日ホームページで有料配信するみたいなので、絶対見てほしいと思います。


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