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BTSを卒業した友人と、BTSを好きになった私

1.私が7人を知った日

私が初めて防弾少年団を知ったのは今から6年ほど前の頃だった。
高校でできた友人は、それはそれは防弾少年団を愛してやまない可愛い子だった。
韓国の音楽なんてこれっぽっちも知らない私にさえ、毎日溢れんばかりの愛を語っていた。
初めて聴かせてくれた曲は何だったんだろう。
「どれが好き?」と何度も何度も前のめりになって尋ねてくる友人が、私は何だか好きだった。

私が「この曲良いね」とポロッとこぼすと、友人は嬉しそうに次の曲を聴かせ、「これはどう?」と得意げに彼らを紹介してくれた。
私は”Euphoria”がとても好きだった。
その澄み切った声と、キラキラした雰囲気と、美しいメロディーに、自宅に帰っても何度も繰り返し再生したのを覚えている。
MVを見ながら涙を静かに流す友人の横で、ただその画面に映る青みがかった輝く笑顔に惹かれた。
初めて聴いた時は、母語も違う、今まで意識したことがなかったそのことばの響きになかなか馴染めなかった彼らの歌も、今では日常の一部になっているだなんて、あの時の私は想像もしなかっただろう。
馴染みがなかった名前やメンバーの姿が、次第にそれぞれの輝きを持って私の目に映るようになることも、声を聞いて誰が歌っているのかも分かるようになることも、全部全部思ってもみなかった。

新曲が出ると友人からそのリンクが送られてきて、感想を送るのが私たちの恒例行事だった。「Boy with Luv」頃から何度も曲をリピートするようになった。
彼らの音楽性がいつの間にか自分に響くようになった。
私はただ、その楽しそうな笑顔と、生きることの一部みたいに踊るダンスと、優しい声が好きだった。
友人はずっと、花樣年華のような深い意味を探ろうとしていた。

2."7人"が大好きな友人のこと

友人は、あんなにバンタンを好きだったのに、ファンクラブには頑なに入ろうとしなかった。
「自分が汗水流して稼いだお金でファンクラブにいつか入る」
そういつも呟いていた。
彼らがカムバをすれば、友人は週末に実家の店の手伝いをしてお金を稼いでいた。
全形態を買うか、一つに絞るか、コンセプトフォトを見せられ、「どれが1番いいと思う?」と何度も聞かれた。
友人は結局、「どれも最高に良い」の一点張りだった。
友人は自分で働いたお金で買った、たった1枚のCDで見事、握手会を当選させた。ライブの一般抽選で当選した。
そういう友人だった。

3.「Dynamite」と私たち

「Dynamite」がリリースされた頃、私は友人よりも先に英語の歌詞を口ずさめるようになった。
自然と体が動き出すようなその曲が大好きになったし、自分が唯一少しだけ胸を張って得意だと言える”英語”で、彼らの歌詞の意味を理解できることが、私は嬉しかった。
「life goes on」を聴いた時に、”SUGAさんのラップの部分”が好きだと思った。コロナウイルスがまだどんなものかもはっきりしていなかった当時、自転車通学でマスクをつけながら、酸欠になりそうになって苦しみながらも、彼らの歌を口ずさんだ。

4.今の私と友人

しばらく経って、私と友人は高校を卒業し、お互いの場所で生活を始めていた。離れた場所にいても、会う時間は少なくなっても、よく電話をした。ある時、「これ知ってる?」と、友人が久しぶりに防弾少年団の話をしてきたことがあった。
あんなに激しい曲が聞けなかった私が、ラップなんて聞いたこともなかった私が、いつか友人が教えてくれた掛け声を口ずさみながら、時に「やばいなあ」と痺れながら、友人と防弾少年団を語るその時間を楽しんだ。
友人は私の知らない防弾少年団をたくさん知っていた。
その一部を、「これも聴きな」と教えてくれた。
なんだかまるで、私に想いを託すような、そんな気がした。
それから友人は呟いた。

「やっぱり、良いなあ。」

「戻ってこないの?」と聞くと、「もう良いんよ。」と笑った。
友人は「Dream Grow」を聴いて、静かに、「やっぱり私、ジミナの声が1番好きだなあ。」とぼやいた。
友人の紹介してくる曲はどれもまだ私には馴染みのないものばかりだった。
でも、いつの間にか、私が聴くようになる音楽のジャンルにはバンタンの新しいジャンルが追加されていた。
いろんな曲を聴きながら、友人とあの頃よりも熱く語った。

5."移り変わる"ということ

私たちはいつも逆だった。
友人がいいと思う服を私は絶対に選ばないだろうし、友人はバナナが嫌いだけど、私は大好きだった。ジョングクさんが好きなバナナキックも、私は大好きだったけれど、友人は食べたがらなかった。私は頭が硬く、友人をいつも困らせた。
だけど、何だか気が合った。
一緒にいると心地よかったし、価値観は逆なのかもしれないけれど、考えていることは同じような気がしていた。
友人があれほど熱量を持って防弾少年団を教えてくれなければ、きっと私は彼らを近くに感じないままだった。

私は友人が大好きだ。
私にはないものをたくさん持っていて、それでいて私のことを決して馬鹿にしない友人が好きだ。

ジョングクさんは言う。

"「ARMY」のみんなが会いたいときはいつでも来ていいし、行かなきゃいけない時、行きたい時はいつでも行って大丈夫です。"

"これだけは覚えておいてください。"

"僕はいつもこの場所にいるという事を。"

友人は今でも、彼らの曲を聴いてにこやかに微笑む。
彼女の中に防弾少年団がいたことはきっと、大きな支えだっただろう。
そして、彼女はまた一歩踏み出した。
ただそれだけだ。
ありがとう。私に防弾少年団を出会わせてくれて。

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