『イン・ザ・ハイツ』
2021年夏公開のミュージカル映画、『イン・ザ・ハイツ』を観てきました。
きっと受け取らなきゃいけないことの半分も受け取れてないけど、備忘録として今感じたことをずらずらと書き留めておこうと思います。
CMを見てミュージカル好きの私は気になっていたけれど、どうも夢を追う若者がテーマのミュージカル映画くらいにしか認識しておらず、蓋を開けてみるとかなりディープな移民問題、人種格差問題が扱われていて愕きました。
1回目はまず途中でそれを把握して、それから話について行くので必死だったので、すぐにきちんと読み取り直しに2回目観賞。
以前大学でイギリスへの移民問題をかじったことがあるので、今作の舞台はアメリカで国は違えど共通することは多々ありました。
一番共感したのは、秀才で有名大学へ進学して行くも砕かれて帰ってきたニーナ。
大学で何があったのかは全てニーナの言葉でしか語られず(再現シーンなどで映像化されず)、視聴者も他の登場人物達と同様にニーナが語る情報だけで想像するしかない。
パーティーでウエイターと間違えられる話、ルームメイトの物を盗ったと濡れ衣を着せられる話。
どちらもニーナという個人へのいじめではなく、「移民」への差別、偏見から生まれる行為であり、それがどれだけ屈辱的なことか、私たちは想像するしか出来ない。
最初の登場時のみストレートヘアだったのも、恐らくニーナ本来のカールしたヘアスタイルが移民であることの外見的特徴のひとつなため、それを隠すためのストレートヘアだったのだと思う。
国は違うが以前イギリスへの移民でも同じようにカーリーヘアを必死でストレートにして隠す女の子が登場していたし、ニーナは初登場時以降は一度もストレートスタイルにしていなかったことから考えても、単なるオシャレとして気まぐれでやっていたのではなく、そういった背景があったのだろう。
そしてこの作品のテーマ、「故郷」へ帰るということ。
一口に移民と言っても、その「故郷」は異なる。
簡単に分けるひとつのラインが恐らく世代で、アブエラ、ウスナビ、ソニーの3世代でそれは描かれていたのだと思う。
アブエラは恐らく祖国での苦労を知っている世代。
アブエラのソロ曲で語られるように、祖国での辛い暮らしから、アメリカへ渡ってきて、更にそのアメリカでの苦労も知り、両方の国での暮らしを知っている世代。
その下ウスナビは、8歳の頃に移民してきたと言うから恐らく祖国での苦労はせいぜい子ども心に感じていた程度で、いい具合に「故郷」のいい思い出を持っている世代。
そして赤ちゃんの時にアメリカへ来たソニーは、生まれ育った今の町こそが故郷で、祖国のことは知らない世代。
ひとまとめに移民と言ってもみんなが同様に同じ「故郷」に帰りたいと思っている訳ではないというのに気づかされる描き方でした。
そしてアブエラが言い続ける「忍耐と信仰」という言葉も、それにどれだけの移民の苦労が詰まっているのか、想像も出来ないほどだと思います。
どんなことがあっても、どんなことをされても、ただ堪え忍んで、信じてさえいれば、そんな風に色んなことをたくさんの人が飲み込んで来たのでしょう。
ノリの良いラテンの音楽と迫力のダンス、そしてハッピーエンド。
たしかに楽しい、爽快。
でも、楽しいだけで終わっては絶対にいけない、そう感じる映画でした。
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