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ての中に宇宙があったの

去年の11月、奈良県のあるかき氷屋さんにて、私はとんでもない出会いをしてしまった。

海外から来る友人のコンサートを観に奈良を訪れ周辺をぶらぶらひとりで散歩していたとき、ふと目に止まったガラス張りのお洒落なお店。以前メディアで見たことがあり、こんなところにあったんだ、私ラッキー、と迷わず入店した。

ちょうど空いてた時間帯で、すんなりカウンターの席に案内してもらった。お客さんは20代くらいの女性グループが多かったけど、家族連れや男性もちらほら見えた。

席からはかき氷を作る工程が見える。店員さんが手際良く次々とカラフルなかき氷を作っているのを眺めていた。少し暑い店内でひんやりしたコンクリートのカウンターに手を置き待っていると、2、3分で私のところにもかき氷がやってきた。

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大きい。けど重さを感じない。そして美しい。なんだかふわっとした綺麗なドレスを見ているような気分。紫と黄色のコントラストが効いていて、スプーンを入れるのがためらわれたほど。溶けてしまう前に写真も撮ったけど、少しの間ただ眺めて楽しんだ。

さらに添えられたレモンを絞りかけると、少し赤く染まる。名前は忘れてしまったけど、バタフライピーの何かかな。

いざ、実食。

ここからがすごいの、このかき氷は。食べ始めると、ふわふわの真っ白な泡と中にも隠れていた果物が混ざって、絵を描いていく。かき氷の器がちょっとお抹茶の茶器みたいで、その中に景色が出来あがる。なんともいえない濃淡の紫の中に、月みたいな黄色い果物とその間に見え隠れする真っ白な雲のような泡。器のふちに小さな透明の泡と、照明を受けてキラキラ光る氷の粒。店名の通り、それは本当にほうせきだった。食べるたびに少しずつ景色が変わって、でもずっとキラキラしていて。私は目も心も奪われてしまった。

このキラキラは照明のせい?と思い店内をきょろきょろしているとカウンターの中にいる店員さんと目があって、お互い少し笑った。たぶん目が合う少し前から、まじまじと自分が食べているかき氷を観察している私に気付いていたんだと思う。私が、初めてお店に来たこと、そしてこのかき氷に心を奪われていると感動を伝えると

その人は優しい目元をもっと優しくして「食べてる間も楽しめるかき氷を作ったんです。」と答えてくれた。

後から知ったのだが、その人こそがこのかき氷屋さんの店主だった。

意図せず、直接店主さんに感動と感謝を伝えられたことは幸せだった。そのとき自分が何を言ったのか覚えてないが、あれからほぼ1年経つのに、この記事を書きながらまた感動し直している。

あのとき感じたのはかき氷自体の美しさや可能性もそうだが、作り手の想いが商品やサービスとなり、それが誰かの心を震わせることができるということ。そこで生み出された新しい価値は誰かに届くことによって作り手、受け手両方の手で新たな時代がつくられていくこと。それはすごく私を勇気づけてくれた。一つのかき氷の景色を見ながら、そこには無限に広がる宇宙が見えたような気がした。

この形に行き着くまで大変なご苦労もされたことは想像に難くない。でも店主さんやスタッフの方々のおかげでたくさんの人が幸せを感じ、今もなおどんどん愛が生まれている。

たった一杯のかき氷だったけど、私の人生を思い返してみてもここまで強烈に印象に残っている食べ物は多くない。

この感動はより多くの人に体験してほしい。ほんとに、これを世界中の人が食べたら戦争はなくなるんじゃないかとちょっと本気で思っている。それくらい、柔らかですぐ溶けてしまうのに、強くて永遠に美しいほうせきのような、そんなかき氷。

お近くの方はぜひ行ってみてほしい。


「ほうせき箱」

〒630-8222 奈良県奈良市餅飯殿町47

https://twitter.com/housekibaco?s=21








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