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『会社内での自分の存在価値を可能な限り低く保っていたい』という若手

「えぇーッ!?」である。

先日とある機会があって、お仕事現場の20代の若手社員さんとお話する機会があったのだが、何かの折に、このnoteのタイトルにある発言が出てきた。

「ホント、可能な限り僕らは社内での存在価値?みたいのを低くしておきたいんですよ」

思わず真顔で聞いてしまった。
「な、なんで…??」

存在価値を低くしておきたい理由

ここで誤解しておいてほしくないのは、
僕は基本的に仕事に望む姿勢とかスタンスとか、あるいは何を仕事に求めるか?というモチベーションの部分は人それぞれ自由だと思ってる派だ。

お金のために仕事をしてる人がいてもいいし、
自分の価値を高めるために仕事をしてる人がいてもいい、
その業界に憧れがある、とか理由は何だっていい。

ただ、自分から率先して
社内における自分の価値を低くしておきたい
と言い出す人にはこれまで会ったことがなかったので少なからず驚いた。

だってあなた、どんな組織であれ
組織における構成員というのは、その組織のために尽力して組織の力を強くしたり、組織の価値を高めるのが仕事なわけであって、
その中において「可能な限り自分の存在価値を低めたい」っていうのは
なら、あなたは何のためにこの組織にいるんですか」と言われかねないようなものじゃないの??と。

驚く僕に若手くんは理由を教えてくれた。

自分の存在価値が高まっていくと、辞めたい時に辞められなくないですか?

「他の社員の人とか、先輩とかとも話を聞くんですけど、
一個の会社とか現場に5年とか10年とかいると、どうしてもスキルというかその現場での存在価値が高くなっていくじゃないですか。」

「そうすると、あの人がいないとこの現場回らないよね、みたいなことになって、結果として自分が思うような(転職や別部署への異動などの)動きができなくなると思って」

「だから、なるべく成果とか出さないで、存在価値を低くしときたいんです」

社内業務を頑張るメリットってある?

いや色々と言いたいことはあるけども、一旦はなるほど。

要は自分の思い描くようなキャリアプランが描けなくなるから存在価値を高めたくない、ってことなのか。なるほど。

いやでも待ってくれ待ってくれ、

例えばだけど、転職にしたって、どこかの企業からオファーが来るのは何かしらの成果を元の会社とかで出した人であろうし、自分から転職面談に行くにしたって、経歴の中でどんな成果を出したのかは聞かれると思うのだ。
その際に「可能な限り自分の存在価値を低くしようと思ってたので、何も成果は出してません」ではいかんのではなかろうか?

あるいは、この先自分で独立しようとかフリーランスになろうとか思ってるにしたって、仕事の発注を貰うには、やっぱりコレまでの成果とか何かしらの成果になるものは必要なんじゃないの…?

ぼんやりとだが本人にはその辺りのことを聞いてみた。
(なるべく、"オジサンが若手に『お前らは分かってねえなあ!』と説教している"と思われないような口調で聞いてみたつもりだ)

すると実に単純明快な答えが返ってきた。

「んー、それはそうですけど、
けど別にその成果って、会社の中で出さなくてもよくないですか?」

僕らの世代は結構そういう考え方

うおおおおおお、そうかなるほどな!!!!
完全に僕のアタマというか価値観が昭和だったのかもしれない。

本人は続けて、
「僕らITマンは特にそうですけど、別に自宅で自分一人でプロダクト作るとか、友達とかとサービス作ってソレを成果にするとかでも全然いいわけですし、むしろその方が自分の力でやったことが分かりやすいと思って」

「ってなると、むしろ会社の中での存在価値とか、それのために必死になって一定以上の努力を費やすよりは、(前述の個人的に作るサービスなどに)力と時間を割いた方がいいと思うんですよ」

いや、分かんないけど!
もしかしたらこの話に「いーや自社の作業を蔑ろにするような奴はロクなサービスも作れん!」っておっしゃる方もいるかもしれないけど!
少なくとも僕はこの時点で「ああ…なるほど…そういうご意見も…ありますねえ…たしかに…」と8割くらいは納得してしまった。

そして更にダメ押しで

「結構僕らの世代?とか同期とかだと、そういう考えの人多いですよ☺」

とまで言われてしまった。

悩むおじさん

このあと若手くんは、ビックリした僕に気を使って(?)
「あ、でもやっぱり社内の業務のが大事ってのもありますよね!」
「自分に与えられたタスクを優先しなきゃ、ってのも分かってるんで大丈夫です!」
などなど、フォロー?をしてくれたのだが(気の遣える良いやつである)
少なくとも僕はだいぶ衝撃を受けてしまった。
いや、価値観の転換ができねえ古臭いやつだと言われればそれまでなのだが。
若手くんは僕の会社の人ではなくて、
たまたま現場が同じというだけの他社の人、なので
自社の人には流石に言えないような話も僕にしてくれたのではなかろうかと思っていて、そうなると彼の言う
「こういう考えの人僕らの世代とか同期には多いですよ」
というのは多分本当のことなんだと思う。

どうしたものかしら

僕が今わりと「どうしたものか」と思ってるのは、
この考え方自体が正しいとか間違ってるとかいうことではなく
(なんなら、個人的にはこの考え方は何も間違ってないと思っている)
そういった「会社内での自分の存在価値を可能な限り低く保っていたい」と思っている社員に、どうやって接していくべきであろうか、という点だ。

言うなれば、これまでのジャパニーズ企業文化(というと言い過ぎかもしれないが)では「仕事を100%頑張る→社内で評価される→評価に伴い出世する→給料も増える→ハッピー!」という仕組みで、社員たちは頑張ってきたわけだけども、
今後は「別に社内で頑張らなくても最終的な『給料も増える→ハッピー!』には到達するよね」となれば、最初の「仕事を100%(あるいは120%、150%とか)頑張る」が成り立たなくなるだろう。
特に、自ら独力でサービスを作ろうとするような"優秀"な人ほど、社内の仕事には「最低限のパワーしか割かないです」となっていくのかもしれない。

言葉は悪いが「走らせるためのニンジンが、ニンジンとして機能しなくなってきている」状況で、いかにして社員に働いてもらうか。
ニンジン(報酬)を大きくすればよいのか、はたまた全員が全力疾走しなくても何とか仕事が回るようなペース配分で業務を行うべきなのか。

どちらの方法についても、高い報酬を提供できなかったり、他社よりもスピードや品質で戦わざるを得ないような多くの中小企業にとっては、難しい選択となるだろう。
ただ、若手くんが言うように、既に「そういうモチベーション」で働いている社員の人は多いだろうし、今後も減ることはないと思われる。

どうすればいいのか、僕の中での答えはまだ出ていない。

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