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「理性というお花畑に火を」(切れはし小説ShortScrap)
「統一された思想のもとで、幸福を勝ち得ようなんて、おこがましいことだとは思わないかね」
下水道の奥深く、陽の光も届かないような場所で、その老人はつぶやいた。まるで自虐的に、口元をゆるませて笑った。
私は胸にこみ上げるひととおりの嫌悪感で、言葉のひとつも返せないでいた。彼の言うことはたしかに間違っていない。けれども、それは特定の何者かへの批判にとどまらない、もっと大きなシステムに対する宣戦布告のようなものだった。私たちが思い出せないくらい昔から続く、深く暗く刻まれた仕組みへの。
「危険すぎると君は思っているんだろう。しかし私にはわかるのだよ。今、これを口にしないといけないということが。それが課せられているということが」
老人はそう言って、私に手を差し出した。それはとても判断のできるはずがない、悪魔の誘いだった。
「まるで目の前が真っ赤に染まりそうね」
私はふりしぼってそれだけつぶやいた。
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