【死体の検分】

 あなたは望月十五の死体を見下ろした。
 喉が裂かれ、噴き出した血が着物の右肩から袖口までを汚している。

 あなたはふと、違和感を覚える。着物の肩や胴回りが妙に、ごわごわと膨らんで見えた。
 袷に手をやり、胸元をはだけさせた。

「……なぁ泥舟さん。望月さんは普段から、こんなもんを着込んでたのかい?」

 着物の下から現れたのは、黒いナイロン製の分厚いベスト――警察官や警備員が着込むような、いわゆる「防刃チョッキ」だ。
 泥舟は目を丸くしている。

「いや、初めて見たよ」

「望月さんは誰かに命を狙われていると感づいていたんじゃないか。そして……」

犯人が首筋を狙ったのは、望月が防刃チョッキを着ていることを知っていたからかもしれない。あなたは改めて、容疑者たちを見回した。

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