国内WEB3の最前線|ブロックチェーンEXPO Vol.1
2022年5月中旬にブロックチェーン EXPOが東京ビッグサイトで行われた。
WEB3という言葉とともに、国内でもトレンドが加速するブロックチェーン 業界。国内では実際にどのようなサービスが生まているのか、その最前線と、WEB3に熱狂する起業家たちを追った。
社会のジレンマを突破するJPYC
まず、一際立って注目を集めていたのが、JPYC株式会社のブース。世界を牽引する日本円ステーブルコイン「JPYC」を発行しているWEB3企業だ。国内のWEB3業界の情勢は、法律面を筆頭に制限の中での挑戦を強いられている。その最中で、行政や法律と真摯に向き合い、日本発のステーブルコインを作り上げたのが、代表の岡部典孝さんだ。
ステーブルコインとは、法定通貨(フィアット)と価格が連動するクリプトであり、当時国内には実用的なステーブルコインが無かった。これが無いと、会計や税金の計算に余計なコストがかかり、国内企業にとってWEB3へ参入する障壁となってくる。そんな問題を解決したいという志で創業した。
セキュリティと法律について壁を感じることはあったが、真摯に向き合えば不可能なことはないと力強く語る。
国内のクリプトエコノミーの醸成や、日本がグローバルな舞台で挑戦していくために、安心して使えるステーブルコインの開発と日々向き合っている。
創業からわずか2年で、総発行額が10億円を突破。WEB3は国家戦略にも組み込まれていく兆しが見え、今後も目が離せない。
NFTをもっと身近な存在に
NFTというワードを目にする機会が増えたが、実際に触れる機会はなく実感が湧かない、そんな声も少なくない。
SUSHI TOP MARKETING株式会社では、NFTをより身近な存在に感じてもらえるように、主に4つのソリューションを開発中だ。
今回は代表の徳永大輔さんがサービスを動画にて紹介してくれた。
NFTは、OpenSeaなど海外マーケットプレイスで購入するのがメジャーだが、ウォレット導入やクリプト送金など、初めてのユーザーにとってはハードルが高い。
そこで、NFT名刺や音声による配布、NFT自動販売機など、ユーザーが手軽に扱うことのできるNFT配布システムを独自の視点から探り、NFTの普及に挑んでいる。
実際、展示ブースでは、多くの参加者が足を止め、NFT自動販売機のシステムや音声によるNFTの配布体験に夢中になっていた。
グローバルで生まれたNFTサービスのUI/UXは、決して使いやすいとは言えない。特に国内では、それが障壁となって一般層への定着が進行しにくい側面もある。その課題をSUSHI TOP MARKETINGの技術が解決する未来は近い。
2次流通の課題にアプローチするTixy
株式会社ZEALOTは、もともとエンジニア集団で、業界でも技術開発に定評があった。社内協議の中で、ブロックチェーンの技術の可能性にベットすることにした。
代表取締役の常盤臣さん(写真右)は、ブロックチェーンの技術を使えば、社会の既存の課題に対して、新しいソリューションを提供できると確信していると語る。
着目したのは、チケットや商品の2次流通市場だ。転売行為で、本当に欲しい人の元にモノが届かない。手に入れるためには法外な価格で購入する必要がある。この状況は、アーティストやメーカーの意図とかけ離れてしまっている。
そこで、スマートコントラクトやトークンの仕組みを応用し、ユーザー間のやりとりの適正化を図ることを目指したいとのことだ。
また、ライブやイベントに参加したあとも、チケットを残したいコアなファンがいることにも着目。チケットをアート化することで、思い出をNFTとして所有する体験の提供を試みる。
NFTの仕組みを利用して2次流通を再定義し、アーティストやクリエイター、ユーザー双方にとって、有益な体験を創造する挑戦は続く。
ハイブリットNFTで企業の売り上げを取り戻す
cryptomall japan株式会社 はブロックチェーン技術を活用し、コンシューマー向けのサービスから、地域デジタル通貨を使った地方創生まで、幅広いプロジェクトを進行しているWEB3ベンチャーだ。
なかでも、ハイブリットNFTというシステムを提唱し、ブロックチェーン、NFTマルチシグ認証という技術を駆使した鑑定証明システムを開発し、特許を取得。エンドユーザーは、シーンを問わず、デジタル、アナログ(実物)の真贋を確認することができる。また、生産地や輸送ルートなどを記録することもできるので、産地偽装などの社会問題にもアプローチすることができそうだ。
偽物や模倣品による被害額は、年間515兆円を超える。
このプロダクトについて語ってくれたのは、DXマネージャー宇野めぐむさんだ。過去にメイク用品を購入した際に、偽物が届き肌が荒れてしまった。偽物による被害を今後少しでも防止したい、そんな想いで現在のプロジェクトに注力している。企業の売り上げを取り戻し、ユーザーに安心安全な買い物体験を提供するハイブリットNFTに寄せられる期待は大きい。
NFTの技術を使って観光地を活性化させるルーラNFT
株式会社ルーラは、日本初の地域特化型NFTとして、観光地限定で入手できるNFTを中心に据えたサービスを開発中だ。温泉地を擬人化したキャラクターNFTは、有馬温泉や飯坂温泉など、日本が誇る有数の温泉観光地で展開予定だ。
それに先駆けて、地域特化したデジタル通貨、ルーラコインの発行も始まった。
観光地に、インターネットの新しい技術と魅力をわかりやすく伝えたい、と語るのは、取締役 CRO 弘中幸太郎さんだ。これまでは、お祭りや伝統芸などが観光の目的とされてきたが、昨今はその目的も多様化した。NFTを通して、新たな顧客の創出と地域の活性化を狙いたいとのこと。
国内観光を活性させ地域経済を潤すだけでなく、今後訪れる、インバウンド需要の再開を見据えて開発を進めており、6月に第1弾をリリース予定だ。
トレンドが加速する国内のNFT市場の行く先は
今回の出店では、国内市場では、NFTの活況が特に目立ったという格好だ。 NFTというワードの認知が広まっていくなか、WEB3企業の捉え方も多種多様である。NFTは、今急速に加熱するGameFiとも親和性が高く、国内のWEB3を語る上で不可欠な存在だ。また、WEB3メディアやメタバースなどの出展も勢力を伸ばしている。
次回は、NFTで巨大エンターテイメントの構想を描くOYO × Yooshi プロジェクトについてお伝えする。
執筆 : よんくろう
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