ノック


ドアをいつも叩いてる

こっから出せって叫びながら

で、人は僕を注意する「おまえ、そんな広い部屋でなんで外に行きたいんだ」って。簡便しろよ。こんな所で満足できるかよって言って、いつもドアをたたいてる

人から見たらバカなのは分かってる。けど、本音をいうと満足できるかどうかじゃない。人には言わないけど、昔めちゃくちゃ狭い所に閉じ込められてたせいで、すっかり閉所恐怖症になっただけだ。

そのせいだろう。

壁があるだけで、もう無理なんだ

だから、お前らみたいに耐えられないんだ。正直に言うとうらやましいよ。幸せってのはそこにあるんだからな。それに、この先もたぶん部屋だらけだろう。クソひろい部屋だらけだろう。でも、ドアを叩いて叫んでる時だけ、この息苦しさを忘れられる。だからドアを叩き続ける。向こうから誰かが開けるか、僕が壊すまでやる

で、次の部屋でもまた同じことをやる

それを繰り返してきた。けど、止められることが想像できないから、たぶん死ぬまでやる。この病の息苦しさを忘れるために、永遠とドアをたたき続ける。

ドアに殺されるまで

たぶん、永遠にだ。




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