「やっぱり自然が一番ってことですね!」

数年前に電車に乗っていた時のこと。流れている広告映像やらニュースやらを漫然と眺めていたら、各駅の特産とか観光スポットを巡る小番組(記憶は定かでない)が始まって、知らない女性が米農家を取材していた。

稲穂を天日干しする昔ながらの方法を使っており、虫を避けたり管理は大変だけど、味は良くなるらしいと言う旨のことを、農家の方が丁寧に解説していた。

それを受けて取材者が一言「やっぱり自然が一番ってことですね!」とはつらつとした感じで答えてその小番組は幕を閉じた。

車内で一人吹き出してしまった。小さく抑えたので周りに白い目で見られることはなかったけど、頭の中が「なんじゃそりゃ」でいっぱいだった。

「自然」の中に必ず含まれるはずの、害虫とか予期せぬ天候とかとの戦いのイメージを一切切り捨て、お日様の陽を受けて米が追熟することだけに着目してそれを「一番」と言い切る潔さ。あっぱれ。

と言うか万能なフレーズだと思う。

聞いたのがどんな話であっても、うんうんと真面目な顔で頷き、「やっぱり自然が一番ってことですね!」と言っておくと、会話の40%くらいは成立すると言う。

目の前で「知らん人が別の知らん人の話を詳しく聞いた上で、とてもハキハキと全然聞いてなかったのかと見紛う返事をしている」映像を、一人電車の中に立って見ている状況が、どうにもおかしかった。

自然が一番なら二番目は何なのだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?