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税理士会計士がFP1級学科試験に最短で合格する方法

(もう少しFP1級ネタでひっぱります)

9月11日にFP1級の学科試験があってから一週間が経過し、この三連休は台風もやってきたりしてましたが、相変わらず、どれだけググってもこの9月受験のFP1級受験期や体験記というのがほとんど出てこないようです。FP1級受験期自体はそれなりに出て来ますが。

受験生の多くが金融機関勤務の方で、日々の仕事で忙しいのにそんなこと書いてられないというところかもしれません。

一方、受験者数だけでいったら毎回申込者ベースで1万人ぐらいいて、知名度の高い日商簿記1級と遜色ない受験者数です。

以上を踏まえると、FP1級学科試験の受験記・体験談・勉強法というのは一定のニーズがあるように思います。

筆者はもとより税理士会計士であり、多くの受験者層とは違う属性ではあるものの、一般受験者にとってもなにがしかの参考にはなるであろうとは思います。また、実際、税理士or会計士またはその両資格者がFP1級を受けるという人は年間数十人(もっとかな?)ぐらいはいるかと推測します。

ということで、ここでは、あくまでも税理士公認会計士目線で、書き連ねていきます。

税理士公認会計士があえてFP1級を受ける意義

FP(ファイナンシャル・プランニング技能士)に独占業務があるわけでなし、既に税理士、公認会計士という立派な資格があるにもかかわらずFP1級に合格したところで名刺に書ける資格が増えるくらいです。ただ、たぶん金融機関の人と名刺交換すると「おっっ」と思われる効果はあると思います。でもそれだけ。

実際的には、FP1級は実のところ金融機関勤務者向け試験であり、内容的にはほとんど税理士業務に通じるものです。

社会保険についてちょっと腰を入れて勉強してみたいであるとか、税理士業務のなかでも実のところそれほど触れない分野である不動産譲渡所得の特例を網羅的に確認しておきたいとか、相続税関係弱いから基本的なところは勉強しておきたいんだよな、といった場面に大いに有用であると感じます。

また、本来的な業務であるタックス分野においても、意外と知識の抜け漏れがあったりするので、これを強化するのは良いかと思います。

そういった自分の知識を広める・深めるために学習するのが本筋です。
なので、合格だけ目指す意義はほとんどありません。

それを十分に踏まえたうえで、以下、本論に入ります。

基本戦略:基礎編はポテンシャルを生かして4割、応用編をしゃかりきに勉強して8割を目指せば合格点には達する

FP学科試験に午前基礎編・午後応用編で各々足切りはない

FP1級は
午前の基礎編(マークシート方式四肢一択50問)
午後の応用編(用語・数値・計算式の記述式大問5問そのうち各中問3問)
各々100点満点。合わせて6割以上の得点をすれば良い試験です。
ただし、応用編は配点基準が事前にも事後にも公表されません。

どちらかで足切りというものはありません。学科基礎20点+学科応用100点だっていいはず。

以上が大前提です。

もとよりFP1級試験において、試験戦略として基礎編50点、応用編70点を目指すというものがあり、これは世上ではもはや王道的に言われていることのようです。

これを基礎編40点、応用80点超にスコープするのが税理士・公認会計士が試験突破する最短ルートかと思います。

さすがにFP2級のように初見で合格はムリ

FP2級だったら税理士公認会計士ならば初見でいけるかもしれない、というのは以前記事で書きました。

一方FP1級ともなると、いかな税理士会計士であろうとも、初見で合格点には達しません。特に、応用編においてはズタボロになるかと思います。少なくとも私はそうでした。

一方、基礎編は持てる税務知識と試験で培った計算能力をフルに発揮すれば、それほど勉強せずとも半分くらいは取れるかと思います。実際わたしはFP2級が終わった直後の状況で最初に解いた、当時直近の過去問である2022年5月試験で基礎編は26問/50問得点できていました。

つまり初期値において
基礎編は約半分出来るものの応用編はさすがに話にならない、というレベルかと思います。

基礎編と応用編の勉強時間と得点の関係

ここで試験内容の特性として
応用編の計算問題のパターンはほぼ決まっており、その得点で6割くらいの配点はありそう、というものがあります。
そのため、応用編の計算問題は、勉強すればするほど限界効用曲線がごとく点数が伸びていく、というものがあります。

一方、基礎編は勉強量と得点の関係がゆるやかで、あるところでは階段状になり、ある程度のところでは全然伸びなくなるようなこともある、というイメージです。

基礎編は、ある程度は勉強時間と得点は比例するものの、あるところに達すると、どっちがどっちだっけとなって制度間の取扱い等が混乱しだし、得点の伸びが止まるようになります。これを突破すればまた得点は伸びていくとは思いますが、時間はかかります。

以上のことをグラフにすると以下のようなイメージです。

FP1級の勉強時間と得点との関係(イメージ) 新井勇樹作成

応用編に特化する戦略はありうる

基礎編はまさに基礎点数を積み上げられるというメリットがあります。時間をかけて問題集を周回すれば、そこまで大崩れすることはないでしょう。ただし、基礎編はどんなにやっても初見の問題や時事的問題、重箱の隅問題が出題されるので、8割9割の得点率を達するのは、かなり難しいです。わたしも、それなりにやったものの7割強がせいぜいでした。

一方、上記の通り応用編の勉強のタイムパフォーマンスはとても高いです。応用編でもある程度の勉強時間を確保すると計算問題はまずカンペキな水準に達し、あとはどれだけ穴埋め問題を正答できるかという世界となります。その後の得点の伸びは穴埋めがどれだけできるかになってきて、緩やかになっていきますが、その、とりあえず計算パターンを網羅するに至るのには高パフォーマンスであれば50時間程度くらいでしょう。

応用編は、ふつうに考えると計算問題の配点が大きいので、それを落とした時の影響が大きいという留意事項があります。つまり振れ幅、ボラティリティが大きいわけです。

ですがこれについては、応用編の試験内容(とくに難化した場合)によっては計算過程で大幅加点があり得ます。

つまり、正答していれば4点の配点があるであろう問題に、最終数値が合わなくとも途中経過があっていれば3点の配点がくるということが起こっています。(根拠は、ほんださんのYouTube)

となると、途中で計算過程を書かせる計算問題はそこまでゼロサムなわけではない、と思われます。部分点を与えるがために計算過程を書かせているんでしょうし。ただまあ、配点は試験実施機関であるきんざい(一般社団法人 金融財政事情研究会)のみぞしるわけですが。

いくら計算パターンが決まっているとは言っても、応用編においても過去問にはない問題は出て来ます。

2022年9月試験であれば、問52の年金計算は、妻(女性)が主体で、出産のため国民年金3号期間があってその後復職するという初めてのパターンでした。さらに、それ自体は典型的な法人税額を求める問58も、おそらく初めて、税額控除が法人税額の20%までであることを意識させる出題でした(ただし、直後の問題にばっちりヒントは書いてある)。

ここで、他の受験生にとっては初見かもしれないけれど、税理士会計士にとってはそうではない、ということはありえます。先の問58なんぞは、税理士にとっては極めて当然のことのわけです。

以上より、応用編だけとにかくやって、計算問題を完璧にし、穴埋め問題も直前対策を徹底すれば、相対的に少ない時間で応用編で8割の得点に達することは可能であり、基礎編は40点=20問/50問の正解で良いことになります。

基礎編は得意分野に特化する

基礎編のタックス分野(9問/50問)の問題をできるだけ正解し、合わせて相続分野は相続税と直結しているので、この2分野でできるだけ正解数を稼ぎ、他の分野で税金がらみの問題と計算問題がいくつか出題されて合わせて4₋5問あるのでこれらを確保、あとは鉛筆ころがしをしても全体の4割はいけるはずです。

そうはいってもさすがに基礎編を全くのノータッチで臨むのはハイリスクなので、スキマ時間で得意分野の過去問を多少なりともやっておき、また、いくつかある典型的計算問題は対策を怠らず、取れるべきものを落とさず、その一方で切るべき分野は徹底的に切るという戦術になります。

ともかく、税理士で各税目において相応の経験を積んでいれば、基礎編の6分野あるうち、タックスと相続以外の、社会保険・保険・金融・不動産の分野については典型的計算問題以外は基礎編を敢えて勉強せずにいっても、あとは応用編にまかせた、と言える状況になるかと思います。

自分の勉強時間を振り返る

およそ250時間は試験勉強してたはず

今回の2022年9月11日試験で、基礎編72点、応用9割くらい合わせて8割くらいの得点でした。勉強時間としておよそ250時間くらい費やしたかと思います。

内訳としては
7月から9月第一週までの土日計10日間
7月の連休及び長めのお盆期間の7日間
直前3日間
合わせて全20日間は終日正味8時間くらいで20×8=160時間
そうでない日(80日くらい)の平日はムラはあるものの毎日1~2時間で80~90時間くらいです。

基礎編の増差1点当たり時間は4.7時間

250時間の勉強時間のうち、体感的には基礎編の時間の方が多かったかなと思います。仮に150時間くらいとします。本来的な目的であった社会保険分野の勉強にわりと時間を割きました。

今から見直すと全く無勉強で今回の試験の基礎編50問を受けたとすると、勉強前既存知識で最低10問=20点は取れた気がします。残りの40問中、四択なわけなので単純計算でもう10問くらいは正解するだろうから、20問=40点はいけたと思います。

つまり
①150時間勉強した成果は72点でした。
②一方、なにもしなかったら得られたであろう成果は上記より40点と想定します。
③勉強の成果は①-②で32点です。

そうすると、勉強に割いた時間を評価すると、150時間/32点=4.7時間/点という計算になります。

基礎編の増差1点当たり時間は1.6時間

応用編に100時間ぐらいは費やしましたが、なにも勉強していなかった状態で今回の9月試験を解いたらせいぜい30点いかないぐらいだったでしょう。それが90点くらいの結果だったので、90-30点弱=60点強を100時間で得た計算です。

つまり、100時間/60点強=1.6時間強/点という計算になります。

また、応用編の穴埋め問題は直前詰込みが効くので、さらにタイムパフォーマンスは良くなるかと思います。穴埋め対策に10時間使ったら、1時間1点くらいになる感覚です。

次回2023年1月23日試験突破スケジュール

ぼくのかんがえたさいきょうのFP1級勉強戦略(税理士会計士に限る)

・基礎編は最低限の計算問題と得意分野の確認だけしてせいぜい20時間
・応用編は計算問題をがっちりマスターに50時間、穴埋め対策に10時間

以上、税理士会計士で、FP1級学科試験合格だけをめざすのであれば、80時間あればいけるかもしれません。

次なる2023年1月22日FP1級試験、最短合格スケジュール

仕事納め後に勉強を始める
・年末年始の休みをフルに勉強に充てて、ひたすら応用編の勉強。ある程度応用編の目途をつける
 勝手知ったるタックスから始め、次いでなじみのある金融分野(財務分析)→相続→不動産→年金計算 と進んでいくといいかと思います。
・年明け仕事始めからスキマ時間で基礎編の得意分野の強化
 毎日応用編計算問題1問は解く
・土日で基礎編に出題されるいくつかの計算問題攻略、応用編計算問題の練度向上
・超直前で応用編の穴埋め対策
をすればいけるかと思います。

単位時間当たり成果を最大化するという単純な話

ともかく、単位時間当たりのパフォーマンスを最大化するというのは、通常のビジネスにおいては、どの業種や分野であっても求められているもののはずです。それを資格勉強にも当てはめる、という単純な話です。つまりコスパを追い求めるってことですね。

そうはいっても、机上の空論かもしれませんが。

例によって長くなりましたが、おしまい。

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