子育て世帯への臨時特別給付金 一人10万円に税金はかかるのか
ここ二日、贈与税のハナシをしてきましたが、その流れで、何かをもらった際に税金がかかるのではないか、ということで今回は子育て世代への臨時特別給付金について取り上げます。
子育て世帯への臨時特別給付金とは
昨年(2021年)末にかけて、クーポン券がやいの、960万円がどうのこうの、うちのところは所得に関係なく支給するだのいっていた給付金です。
新型コロナウイルス感染症が長期化しその影響が様々な人々に及ぶ中、子育て世帯については、我が国の子供たちを力強く支援し、その未来を拓く観点から、児童を養育している者の年収が960万円以上の世帯を除き、0歳から高校3年生までの子供たちに1人当たり10万円相当の給付を行う。
というのが政府の説明です。(内閣府のWebにあったパワーポイント資料より)
当初は、5万円は現金で、5万円はクーポン券で支給するといっていたのがなし崩し…というか雪崩的に全額現金でも良いということとなり、結局ほとんどの市町村で現金支給されました。
高崎市はそんななか、全国的にも珍しくクーポン券で支給したそうで、これは前々から「高崎市子育て応援商品券」を交付してたから、その枠組みを使えば良かったからといったところでしょうか。
前橋市は全額現金(基本的に児童手当の入金口座への振込)での受領ということで、12月22日に第一弾が入金されたと思ったら12月27日に第二弾が入金されるという、いやでもさすがにそこはまとめられなかったんかい、という感じではありました。
この給付金がどのような政策目的だったのか、結局よくわからず、でも選挙で政府与党(の一部)は公約してたから支給しないわけにはいかず、政権としては金配って支持率は下がるまい、といったところでしょうか。
贈与税?所得税?
本題です。自治体を通して政府からお金をもらいました。お金をもらった以上、何らかの課税関係が発生するのではないか、と考えるのが少なくとも税理士です。
ここで、税金がかかるとしても、贈与税ではありません。
贈与税は、人(自然人)からもらったものが対象なので。
政府というのは人(自然人)ではないので、贈与税の埒外です。
となると、税金がかかるとしても所得税です。
しかしながら、あれそういえば児童手当には税金はかかっていないはず…というのは広く知られたところなので、この臨時特別給付金にも税金はかからないのではないか、と考えるのもまた自然です。
では、どう考えていけばいいのでしょうか。
所得税の原則
所得税というのは、所得にかかります。
じゃ、所得ってなんだよというところですが、「所得」そのものずばりは所得税法でとくに定義がされていません。
さあではここで租税法の深淵なる世界へ…となりますが、それはちょっと待って、結論から言うと「人の担税力を増加させる利得はすべて所得を構成すると解されている」、と教科書に載っています(『租税法』金子宏)。
となると、児童手当だろうと、臨時特別給付金だろうと担税力を増加させる利得でしょうから、原則的には所得税における所得になりそうです。
つまり、なにもなければ所得税の対象となるということです。
所得税法上の非課税規定に該当する?
なにかもらったら、税金の対象になる、というのが原則です。
逆にいえば、税金の対象とならないためには特別の規定が必要となります。
この点、児童手当であれば児童手当法で以下のように規定されています。
第十六条 租税その他の公課は、児童手当として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。
つまり、課税対象外です。
では、臨時特別給付金はというと…実はいまのところ、これを課税の対象外とする規定がありません(…まだ立法されてないはず)。
ここで、所得税法上、第9条にて非課税所得が規定されています。その15項に
「学資に充てるため給付される金品」
というのがあるのでここに該当する可能性があるかもしれません。
実際、東京都小金井市の案内サイトでは
「給付金は、所得税法における非課税所得に該当するため、課税の対象にはなりません。」
と案内されています。
小金井市が所得税法上のどの規定をもって非課税所得と判断したのかは、よくわかりません。
が、臨時特別給付金については、先の説明の通り「我が国の子供たちを力強く支援し、その未来を拓く観点から」支給されるものです。そうすると、所得税法上で非課税とする規定が、ありません。
内閣府の説明にて「学資に充てるため」とはなんら書いてないですからね。
結局どうなるの
2020年に特別定額給付金として一律一人10万円が支給された際は、非課税とされました。これは特別法でそういう取扱いとしています。(新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律)
今回の子育て世帯への臨時特別給付金についても、この法律を使えばいいのか、というとそういうわけにはいかないとわたしは考えます。
というのも、
第二条 この法律において「新型コロナウイルス感染症」とは、病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和二年一月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。)である感染症をいう。
(太字筆者)
とある以上、いわゆる初期の武漢型ウイルスによるものしか対応していないと解釈できるからです。
いまのいま蔓延しているのはオミクロン株と呼ばれるもので、2021年12月時点だとデルタ株が主だったでしょう。
したがって、新たに法律を制定し、非課税としてもらうほかないのですが、現(2022年2月4日朝)時点でこれにつき法律は制定されていない(はず)です。
もうすぐ確定申告の時期が始まるというのにどういうことでしょうか。
早急に子育て世帯への臨時特別給付金を非課税としてもらわないと、安心して確定申告が出来ません!
(いちおう、国会のHPを見に行って法律案は確認していますが、見落としてたらごめんなさい。)
期せずして長くなりましたが、本日は以上です。ご覧いただきありがとうございました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?