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ヨンゴトナキオク10 2020.10.24

50年越しの岡本太郎礼賛

追われてます。詳しくは言えないけど、仕事です。お尻に火がついてまして、明日にはケリを付けなくてはいけないのに、肩凝りがひどいせいもあり、なかなか集中力が続かず、仕事の合間には立ち上がって歌ったり、寝転がって腰を伸ばしたり。そのまま寝落ちしたり(泣)。ヤケクソになってつい他のことに目がいってしまいます。今週はそんなこんなで、ある日はホテルにアフタヌーンティーを食べに行ったかと思うと、昨日は午後から遠足に合流したり(さすがに午前中は仕事した💦)してます。とほほ。

昨日の遠足(この書き方が一番合っているでしょう)は、所属する合唱団のメンバーとの大阪万博公園にある「太陽の塔」見学ツアーでした。予約制になっており、14名が万障繰り合わせて出かけ、そのうち12名は午前中のランチから参加し、私を含む2名が午後から合流しました。しかし、見学ツアーではマイナス1名になっていました。実家のお父さんが転んで頭を打ったとの連絡が入り、急遽帰らなくてはいけなくなったと後で知りました。幸いお父さんは大したことがなかったそうですが、本当に何が起こるか分からないものです。一緒に太陽の塔に入れず、残念~

さて、この太陽の塔、ご存じのように1970年に大阪で開催された万国博覧会のモニュメントとして建てられました。作者は「芸術は爆発だぁ!」で一世を風靡した芸術家、岡本太郎さんです。ぱっと見、得体のしれないデザインは強烈で、当時、世間をあっと驚かせました。岡本太郎さんは1911年生まれなので、59歳の時の作品です。

1970年というと、私はちょうど10歳でした。3月15日から9月13日までの開催期間中に1度だけ家族で出かけました。父もいたから夏休みの日曜日だったと思います。というのは、とっても暑かったことだけ覚えているからです。もちろんどこのパビリオンも長蛇の列。私も行列に並ばないタイプですが、父もきっとそうだったかして、あらゆる有名パビリオンを軒並みスルー。入ったことを覚えているのはガーナ館だけでした。何故なら、くそ暑いさなかにガーナ館でココアを飲んだということだけが強烈に残っているからです(笑)。当時から太陽の塔の中は見学できたそうですが、おそらく混み合っていたに違いありません。まして大きな屋根もあり、10歳の子どもには何もかもがあまりにも巨大で見上げるのも怖く、当時の記憶はほとんどありません。

大人になってから万博公園に行くことは何度かありましたが、それでも太陽の塔は近づきがたく、遠くから見上げるのが精いっぱいでした。その太陽の塔の内部が公開されると知ったのはつい最近のこと。テレビのニュースでも話題になりました。そうこうしていたらコロナ禍で、大阪府の吉村知事が感染者数に応じて太陽の塔をシンボリックに色を変えてライティングすると言い出した。闇夜の中、真っ赤に染まった太陽の塔がテレビ画面に映り出された時、他のパビリオンはとっくの昔になくなっても、すっくと立つ太陽の塔の存在が、にわかに自分の中でクローズアップされました。

合唱団のメンバーが「太陽の塔を見学しませんか」と提案してくれたのは、確か緊急事態宣言が出るかどうかといっていた春先のこと。案の定、見学自体できない状態になりましたが、ようやく再開されたとの報道もあってもう一度招集がかかり、半年遅れで遠足が実現したのでした。仕事との兼ね合いで悩んだものの、せっかくのチャンスだし、とにかく塔見学でもと駆けつけたのですが、結果は大満足でした。

詳細は申しません。ご興味のある方は、ぜひお越しください。そしてご自分の目で確かめてください。本当に岡本太郎さんの頭の中はどうなっていたのでしょう。あの塔の内部の空洞に人類の過去、現在、未来が輪廻し、50年たっても風雨に耐えながら生き続けています。わけがわからないながらも驚きでいっぱい。螺旋状になった階段を昇りながら、もう楽しくて、ワクワクしました。

当初万博終了後に取り壊される予定だったそうですが、撤去反対を叫ぶ署名活動によって永久保存が決定されたという経緯もあるとか。そして、今年になって国の登録有名文化財に登録されたそうです。あれほど個性的で巨大な芸術作品は世界広しといえども、他にはなかなか見当たらないでしょう。今の展示物に復元されたのはついおととしのことだそうです。50年前には全く興味のなかった太陽の塔に還暦になって初めて入れて、本当に感激しました。この太陽の塔があったことだけで1970年の万博は大成功だったと半世紀たってからずっしりと実感しました。

上まで昇り切り、下へ降りる壁一面真っ赤な通路にも興味深い展示がありましたが、岡本太郎さんの写真とともに「芸術は呪術だ」と書かれている壁がありました。ジュジュツとな!! そうです。彼にとって芸術とは表面的な美しさを愛でるようなものではなく、人間の根源的な魂そのものだったのでしょう。また、自由を愛し、権威をふりかざす者を徹底的に嫌ったそうです。嗚呼、太郎さんが権力だけに価値を持った人たちがまさに権威をふりかざす今の気持ち悪い日本を見たらいったいどうおっしゃるでしょうか。きっと全力で反抗なさるでしょうね。

太陽の塔の見学入口には2025年開催予定の大阪万博を告知するポスターが掲示されていました。今のインチキ都構想に浮かれる人たちが作らんとしている万博にこの太陽の塔以上の何かを残すことができるか、甚だ疑問ですが、願わくばぜひとも令和の岡本太郎さんの出現をお待ちしています。

見学を終えて塔から外に出たら、太陽はだいぶ西に傾いていました。逆光に映る塔の後ろ姿がとても幻想的で、そしてなんともチャーミングでした。この背中の黒い太陽は「過去」を表しているんだそうです。私たちも、生きてきた過去を悔やまず、愛せる自分でいたいものです。

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