クレヨンしんちゃん バカうまっ!B級グルメサバイバル!!の話

「クレヨンしんちゃん バカうまっ!B級グルメサバイバル!!」の話をします。

クレヨンしんちゃんと私(a.k.a 隙あらば自分語り)

私は1988年生まれなのでクレヨンしんちゃんのアニメ放送開始(1992年)のちきには3歳。はっきりとは覚えていませんが、初回放送から見ていた記憶があります。当時は新しいアニメがあったらとりあえず見る、という感じだったので見ていた記憶があります。私はクレヨンしんちゃんに大ハマりし、アニメは毎週視聴し、親に原作コミックも買ってもらうようになり、映画が公開されればなるはやで見に行き、SFCのゲームも買ってもらい…という感じで生きていました。(アニメは見なくなりましたがいまだに原作コミックは購入してますし映画も毎年見に行くようにしています)

私にとってクレヨンしんちゃんは、しんのすけに限らず、かすかべ防衛隊のみんなは「友達」です。アニメ放送開始時は、1学年下ではありましたが、しんのすけを含むキャラクター達をキラキラした人気者として見ていたような記憶があります。30代半ばにしてクレヨンしんちゃん映画を見に行くときは年に一度の同窓会にいくような気持ちで見に行っています。だから映画を見る際はいつもかすかべ防衛隊の活躍を期待しています。

バカうまっ!B級グルメサバイバル!!の公開前(2012年まで)の話

クレヨンしんちゃん映画は1993年「アクション仮面VSハイグレ魔王」に始まり毎年新作が公開されてきました。(ちなみに「1年もブランクがなく、1年に1本のペースで世に送り出し続けて公開している映画」としては最長寿らしいです。ドラえもんやアンパンマンはコロナで1回スキップされましたからね…)子供向け映画としてコンスタントに良作を公開してきました(この辺の話は長くなるので割愛)が、明確に映画としての格がアップしたのは2001年「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」でしょう。この後本格的な時代劇「嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」、一転してのドタバタ劇「嵐を呼ぶ 栄光のヤキニクロード」、かすかべ防衛隊を主軸にした「嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ」と名作を連発していきます。(個人的にはここまでがクレヨンしんちゃん映画に黄金期だと感じています)

しかしそれ以降は興行収入、評価ともに少しずつ下落していきます。
(この時期を公式が低迷期と明言したのはさすがにびっくりしましたが…)

ここを低迷期とする理由にはいろいろな評価があると思いますが、個人的には「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」「嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」の成功にあると思います。ここでの成功がクレヨンしんちゃん映画がA級の映画として評価される実績を作ってしまったために、家族や感動といったテーマに重心が移行し、クレヨンしんちゃん映画としての品質を損なうことになったと思います。(この期間かすかべ防衛隊中心の映画がないのも個人的な評価が低い理由ですが…)

ここで自分が言うクレヨンしんちゃん映画としての品質とは、しんのすけがしんのすけの理屈で世界を救うというロジックがしっかりした映画であること、しんのすけが活躍することだと思っています。この時期の映画は、しんのすけがしんのすけの理屈っぽくない動きをしていたり、しんのすけ以外のキャラクターに物語の推進力を頼っていたりしていたと思っています。(しんのすけは結果的に世界を救ってもなしくずしに世界のために戦うようなやつじゃないでしょ)

バカうまっ!B級グルメサバイバル!!の話

こうした期間を経て公開されたのが「バカうまっ!B級グルメサバイバル!!」でした。脚本はコメディの名手浦沢義雄とテレビシリーズにも参加しているうえのきみこの共同執筆、原画に湯浅政明復帰、久々にかすかべ防衛隊を主軸としたストーリーと「クレヨンしんちゃんらしさ」を取り戻そうとする制作陣であったことがうかがえます。そしてその試みは成功であったと思います。

おいしい焼きそばを食べるためにソースを運ぶというシンプルな動機(ロードムービーもクレヨンしんちゃん映画の鉄板ですよね)、数々の困難を馬鹿らしく超える展開、わかりやすい伏線回収、そして何よりキャビアやトリュフといったA級の食材を「子供には合わない」としつつ子供たちが自分で作ったB級グルメである「焼きそば」の素晴らしさをたたえるストーリー、これはメタ的にいえばそもそもはB級映画であったクレヨンしんちゃん映画そのものを肯定するストーリーといえるでしょう。

そしてこの映画、上記のメタ的な解釈がなかったとしても、ラストが最高なんですよね。親から押し付けられた理屈だけでA級のものしか認めないグルメッポーイに対して、実際に自分の気持ちに素直にB級の焼きそばを作るかすかべ防衛隊、そしてそれをグルメッポーイに分け与える、しんのすけを含むかすかべ防衛隊の理屈がグルメッポーイという孤独な男を「倒す」のではなく「救う」感動的なラストです。EDにSEKAI NO OWARI「RPG」が流れる中、「俺の好きなクレヨンしんちゃん映画は最高だよな!」とめちゃくちゃ泣いてしまいました。
(もっと色々書いてたんだけど文章があっちこっち行ってしまってわけわからないことになってしまった…)

バカうまっ!B級グルメサバイバル!!以降の話

これ以降クレヨンしんちゃん映画は興行収入、評価ともに回復していきます。映画としては感動とギャグを交互にやったり、原作のエピソードをベースにした作品にチャレンジしたり(「ミラクル・マーカーしんのすけ」をもとにした「激突! ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」、「オラの心はエリートだゾ」をもとにした「謎メキ!花の天カス学園」)と改めていろいろなチャレンジをしているように思います。今年2023年はそれらに加えてFull 3DCGにもチャレンジした「しん次元! クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜」が公開されました。これらのチャレンジは「バカうまっ!B級グルメサバイバル!!」のチャレンジが成功なしには実現しえなかった(下手すればクレヨンしんちゃん映画そのものがなくなっていた)と思います。

今後ともクレヨンしんちゃん映画が毎年作られることを祈って文章の結びとさせていただきたいと思います。





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