月の花

月の花のどれほどか
人の涙を糧とするのは
飛んでいく赤い風船
老婆は孫娘の背中から羽を折った
老いることのない犬が
朽ちゆく飼い主の腕から注射針を抜いた
あえて無意味なものどもに
人はやさしくキスをする

月の花は枯れ果てて
私は涙も失った
そこそこに完成させられた四肢の動物に
私はフォークをかかげて見せた
人類の滅んだ地球に人工衛星が
次の開花時期を知らせた
いっそ無価値なものだから
私はそれに温度を与えた