感染したけど発症していない人は病気だろうか?

岩田健太郎先生の『HEATAPP!』を読んでいる。
神戸大学感染症内科で行われた5日間の授業の実況中継本。「たった5日間で臨床の“質問力”が飛躍的に向上する、すごいレクチャー」と表紙に書いてある。

つまみ読みして、改めて頭から読み進めている。

病気とは何か?

1日目のSession1に出てくる「病気とは何か?」という謎にまつわる問答が興味深い。

感染したけど発症していない人は病気だろうか?

具体例として結核が登場する。
世界の1/3ぐらい、20数億人が結核菌に感染している。
そのうち1/10、つまり20数億のうち約2億人が、一生のうちに結核を発症する。結核は感染してから発症するまでの時間が非常に長い。
じゃあ、結核菌に感染したけど発症していない人は病気だろうか?

うつる結核とうつらない結核

まず「うつる結核」か「うつらない結核」かの峻別が重要だ、と。
(正岡子規の骨の結核の話などがあったりして)人にうつるの結核は(ほぼ)肺結核だけ。

さらに、肺結核のうち、3回陰性の肺結核は人にはうつらない、つまり隔離は必要ない。

というような事実が手渡されて、再び、結核菌に感染したけど発症していない人は病気だろうか?と問われる。

昔は病気じゃなかったんです

グループディスカッションや、それぞれのグループの回答をはさみながら進んでいって、最後に「発症していない結核は昔は病気じゃなっかったんです。でも今は病気です」と明かされる。

西暦2000年を境に、保菌者と呼ばれていたのが、潜在性結核という病名がつく。
2000年は、アメリカでエイズが猛威をふるっている時期。移民が多く、結核菌に感染している人が多くはいってきた。いままで減っていた結核がぼーんと増えた。
疾病予防センター(CDC)は、ヤバいってんで、結核保菌者に薬を飲ませてその菌をなくそうとした。予防的にやっていたのでは生ぬるいってことで、潜在性結核という病名をつっけて患者として治療しようという話になった。

つまり、ある概念を病気と呼ぶか呼ばないかは、人が勝手に決めている、のだ。

てな話からはじまって、臨床についての授業が展開されていく。

いかに質問するか

「いかに質問をするか」「いかに調べるか」「いかに伝えるか」について具体的に学ぶ方法論の本としても読める。日本的なアクティブ・ラーニングの見本としても読み応えがある。もちろん感染症、臨床の勉強にもなるだろう。オススメ。(っつても、まだ第1日目しか読み終わってないんだけど)


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