あの日憧れたあの帽子~製作プロジェクト~
1989年、衝撃的な出会い。
長渕剛さんが映画『オルゴール』や音楽番組で被っていたレザーとニットがコラボしたこの帽子。
いわゆるフィッシャーマンズキャップと呼ばれるもの。
当時これを被っている姿を見た時にあまりのカッコ良さで一目惚れしたのを覚えてます。
いろんな帽子屋さんに足を運ぶも見当たらず泣く泣く似た感じの合皮のロールアップキャップを買ってみては『違うんだよなぁ』と後悔したり。同じような思い、経験された方もけっこういらっしゃるのではないかと思います。
数年前にふとこの帽子を思い出しネットで調べてみるもやはり同じモノは出てこない。当時イタリアあたりで作られていた帽子なのかもしれませんし、当時長渕さんが親交のあったLUNA MATTINOさんで製作された一点物だったのかもしれません。
いずれにしてもこのネット社会においても情報が見つからないし、同じモノが出てこない。ならば....無いのなら作ってみよう!って思うのが作り屋の思考。6枚剥ぎの帽子の作り方を勉強しつつ、どうニットを処理して縫い合わせれば良いのかをとにかく実戦。
当然はじめは酷い作りでした。なんでもそうです。何回も何回も、何枚も何枚もとにかく作り込んで作り込んで腕を慣らしていく。脳みそを慣らしていくのです。
そんな中、それこそ30年間ずーっとこの帽子を探し続けている人と知り合い、タッグを組んでこの帽子の再現製作プロジェクトが本格化しました。
ニットの幅や厚みを含め沢山の試行錯誤の中、最終的に
革の質感とニットの織りと色
この2つのポイントをクリアすると言うチャレンジになりました。
革は業者さんに質感や厚みを変えて何パターンも製作してもらい、やっとイメージに近く仕事がやりやすい仕上がりの革が生まれました。問題は意外とすぐに見つかるだろうと思っていたニットでした。
ニットの織りもあくまで現存している写真や映像からの判断になりますが、今現在流通しているものの中に当時の織りと全く同じ編み込みや畝幅が見つからず。時代による流行なども大きくあるようで一番苦労しました。
色も当初自分は単にグレーのニットとの印象だったのですが、あらためてYouTubeや資料画像を確認してみるとスタジオでのライティング、屋外の自然光などにより表情を変えるそのニットは単純なグレーでもベージュでもないことを確認。
そんな観点から様々なニットを仕入れてみては「あーでもない、こーでもない」と協議を重ねて行く中で
『これならいけるんじゃない?』となったのが若干ベージュ寄りのこちら。『夜ヒット』で「激愛」を歌っている時の雰囲気に近い仕上がりです。

次に『夜ヒット』のオープニングトークや「とんぼ」を歌っている時の雰囲気に近いグレーver.(当時の自分のイメージ)。

そして、最終的に『これはかなり当時のニットに近い!』プレミアムニットver.。
グレーでもベージュでもなく、所々に入っているネップ(糸のツブツブ感)もかなり当時の雰囲気に近い。探しに探し回りやっと辿り着いた苦労の賜物です。
おそらくどなたも満足されるのではないかという仕上がりになっています。
『本当の正解』と言うのは1つしかありません。
ですが、考察してきたように皆さんそれぞれの思い出の中どのシーンの印象が強いかでイメージがわかれるアイテムなのかもしれません。
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