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テツ道和歌の可能性

とあるYouTube鉄道系論説チャンネルがある。そこで配信があるたびにいろいろ参考にさせていただいているのだが、そこの配信の企画で「旅歌会」という鉄道や旅に関わる短歌や俳句、川柳をコメント欄に投稿しあうという企画がある。

 不肖ワタクシもそこに投稿させていただいている。今回はそのワタクシの分の投稿をここで紹介させていただく。

夏空

 夏空に吹く風の中香りたる 別れし君と歩みし砂利道
 夏空に立ち上がりたる入道雲 晴れぬ心に時刻表閉ず
 夏空に浮かぬ心の時刻表 旅ゆく夢の叶わぬ悔しさ
 夏空に錆たるレール二筋に 地平線へ消ゆ名残惜しげに
 夏空に風かき分けて百合の花 夢の旅路をのぼり下りつ
 夏空に虚ろにかがやくぶらんこの 子の歓声は遠きまぼろし
 夏空につきし既読をはかりかね 浮かぶ黒雲液晶の泡
 島嶼にて航跡引きて群れつどう 鋼の翼はソラノカケラ
  (ゲーム「エースコンバット」を詠める歌)
 夏空にむなしく立ちたる旗竿に 五輪の旗は強者の夢
 夏空のもとでほどけた最後の手 ”Yell””のメロディ”Yell””のメロディ
  (小田急海老名駅の発車メロディがいきものががり”Yell”なんですよ


 水垂れる観光電車の横顔に 鞍馬の新緑我は別れし
 架線撫で水吹き散らすパンタグラフ 超特急は今日も東西
 水鏡に写りし電車金色の 憧れ留めし写真の震え
 優しげにしたたりおちる水音の 安眠動画に再生数見る
 行く水を返せるものなら返したい 梅雨空の夜果てぬ後悔
 水底に潜みし思い昔日の 千の誓いはカレンダーになお
 彼方より水煙あげ迫り来る 弾丸列車は季節を超えて
 雨の中洗車機にて洗いたる 銀色電車は誰がための箱
 涙雨銀の轍に刻まれし 思い忘れじ横須賀の崖


茜雲

 築堤の開けし空に茜雲 気動車あえぐ懐かしの轍
 構内に入り乱れたる分岐器を 渡る客レの上に茜雲
 茜雲急ぐライナー汽笛吹き 心浮き立つ金曜の夜


彼岸花

 入換灯トンボ行き来す彼岸花 銀色電車の朝の支度
 彼岸花レンズの向こうに赤を添え 峠に挑む蒸機を飾る
 彼岸花トングの先で揺れ咲きて 指差喚呼に答えたりけり
 走将の足元踏みし轍の音 想い見送る彼岸花かな
 旅の空客車を降りたるホームにて 彼岸花我が恋知りぬ顔
 彼岸花心騒ぎたる夜更けにて 去りし彼女の足音を聞く


夕焼け

 北向かう藍色列車の尾灯見る憧れのせて夕焼けの底
 北目指すブルートレイン尾灯引き 銀の分岐は夕焼けの底
 団臨の賑わい交わす窓の中 夕焼け浴びて遠き幻
 夕焼けを残して去りぬ展望車 無邪気に手をふるロマンスの鉄路
 夕焼けに追われて走る通勤車 交わす言葉に先輩の笑顔
 夕焼けに追われて輝く通勤車 不意に微笑む先輩のリップ


枯葉

 枯葉踏む登山電車の下り坂知りたることとて道は険しき
 枯葉吹き走る特急タイフォンを響かせ急ぐ木枯らしの道
 枯葉散る13番(とーさんばん)のむこう見ゆ遠き幻蒸気暖房
  (上野駅13番には枯葉は舞い込まないそうです……)
 冬来る枯葉渦巻く通過後のテールランプに涙ぞにじむ
 冬来ればホームの枯葉絨毯を 子ら踏みしめて朝日まぶしき
  (冬だけど雪がない地方の人間の歌)
 枯葉舞うロマンスカーの旅路には空の青さにワルツの響き
  (連接車限定)
 枯葉道銀色電車の複々線憧れの君車窓に探す
 枯葉どき西へ向かいし電車にてイヤホン分けた君はもうなく
 さよならと見送る駅のエレベーター枯葉の刻の遠い一葉
 枯葉どき別れし君の残り香にこらえつ歩む冬の一人路
 枯葉寄せお芋を焼いた裏庭でじゃれあう子らと子犬の歓声

灯火

 流れゆく寝台列車の灯火や白き闇ゆく流れ星かな
 灯火は展望席のヴァーミリオンきざむワルツは遠い彼方へ
   (ロマンスカーVSE惜別の歌)
 年の瀬のアメ横喧噪灯火や明くる年こそ幸多かれ
 停車場を後に去りゆく急行を待ちわびたるはふるさとの灯
 側灯にテールランプに前照灯 鉄道の命は燈火と魂
 終電の後が我らの職場なり灯火のもと汗がにじむ

雨音(23/6/16)

 雨音に急く列車のジョイント音 快きかな子守歌に似て
 雨音の駅で待ちたる想い人 ダイヤ乱れに心も乱れり
 雨音を蹴りて駆けゆく超特急 想う行き先遙か北空
 泣く涙 雨音つつみし一人夜 テールランプは遠い幸せ
 雨音の駅のホームでやどりつつ まだ見ぬ彼の面影想ふ
 雨音に 湿る心に旅出れば 緑燃える山夏来たりけり
 雨音と 見れば閉じたる車両にて ただ慌てたり洗浄線の中

満月(24/1/28)

 天つ風 氷を渡る 冬景色 乙女のジャンパー 照らす満月
   天つ風 氷を渡る冬の夜の 乙女の袖をみがく月影
   式子内親王
 荒れ果てて 満月停まらぬ廃線に 秋の木の葉に風もふきける
   荒れ果てて 月も止まらぬ我が夜に 秋の木の葉を風ぞ吹きける
   平兼盛
 冬の夜 心憧れ満月に ブルートレイン 永久の旅路を
   秋の夜の 月に心のあくがれて 雲ゐにものを思う頃かな
   花山院
 この線路 我が道とぞ思う満月の 満ちたるときは いつのことやら
   この世をは わが世とぞ思う望月の かけたる事もなしと思えば
   藤原道長
 満月も 見し旅の夜の夢のよう 霞に残る「あけぼの」の空
   月影も 見し春の夜の夢ばかり 霞に残るあけぼのの空
   本居宣長
 満月に 聞いた昔のジョイント音 Youtube探して 聴き泣き濡れぬ
   月夜には それとは見えず梅の花 香をたづねてぞ知るべかりける
   凡河内躬恒(おおしごうちのみつね)
 満月も 線路も昔と変わっても 我が身だけは変わりもせず
   月やあらぬ 春や昔の春ならぬ 我が身一つはもとの身にして
   在原業平
 漆黒の 夜霧にうかぶテールサイン 輝く満月見れば悲しき
   ぬば玉の 夜霧の立ちておほほしく 照れる月夜の見れば悲しさ
    大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)
 銀電車 春めくホームの新成人 照らして霞む春の満月
   花鳥の ほかにも春のありがほに 霞てかかる 山の端の月
   順徳院
 満月も 臨時列車も 連休も 我が恋の夢 秋の出来事
   虫の音も 月の光も風の音も わが恋ますは 秋にぞありける
   能因
 満月夜 走り続けた夜行列車 今思い出の 中で永久に
   夕月夜 さすや岡べの松の葉の いつもわかぬ恋もするかな
   猿丸太夫
 夜の駅 屋根端のぼる満月の 今宵眠るはサンライズの枕
   夜と共に 山の端いづる月影の こよひ見そむる心地こそすれ
   藤原清輔 


 ざっくりこんな感じに書いてきました。最後のはよく知られたものをヒントにテツ道和歌を作ってみました。なかなか面白かった。
 私の和歌、上手くはないと思うけど詠むのは楽しいですね。

 というわけで、またそのチャンネルの旅歌会があれば参加しようと思います。他の参加者もなかなかの力作揃いなので、意欲を刺激されます。よいコミュニティになってるのはじつによい。そういう場を作ってくれたチャンネルの主にも感謝です。

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