本屋lighthouse店主・関口竜平さんに聞いた、10代のこども達に手に取ってほしいマンガ
2021年1月、出版業界の不況により書店の数が次々に減ってしまう中で、千葉県の幕張駅のほど近くに新しく本屋さんがオープンしました。その名は本屋 lighthouse 幕張支店。
若き店主・関口竜平さんは、平成生まれの20代。個人で書店を経営しているのは大手書店や出版業界で長く働いてきたベテラン勢が多い中で、関口さんは大学院生の時に自分で書店を経営することを決意。
業界を知るために書店や取次の会社で働きながらノウハウを学びつつ人脈を広げ、2019年5月にはほとんどを自分で手作りしたという本屋lighthouse 小屋本店をオープン。そして今年の始めに満を持して2店舗目となる幕張支店をオープンさせました。
暗闇に迷うひとには足下を照らす光を
夢を抱くひとには果てなき道を照らすしるべとなる光を
過去、そして未来へと あまねく光を
本との出会いを通して人々の人生を明るく照らす、そんな関口さんの熱い願いが店名のlighthouse(灯台)には込められています。
そんな関口さんに、10代のこども達に読んでほしいオススメのマンガを聞いてきました。
★関口さんのプロフィール ★1993年生まれ、千葉県出身。小中高と学生時代はサッカーに没頭。大学院生時代にジョージ・オーウェルの『1984』でと出会い多くの気づきを得られた経験から本の持つ力、魅力に気が付き、将来本屋になることを決意。書籍の企画・編集・販売と取次代行を請け負う「株式会社トランスビュー」と、千葉県佐倉市にある「ときわ書房志津ステーションビル店」でアルバイトをしながら2019年5月に1店舗目となる本屋lighthouse小屋本店(改修のため現在一時休業中)をオープン。
サッカー中心だった学生時代、印象に残っているマンガ
ーー本日はよろしくお願いいたします、ではさっそく関口さんが10代のころ読んだマンガで印象に残っている作品や、好きな作品を教えてください。
関口さん:実は学生時代はマンガに没頭したという経験は少ないんです。幼稚園のころから高校生までずっとサッカーに没頭していたので。それでもまったく読んでないというわけではなくて、たとえば記憶にある最初に読んだマンガは『ナマケモノが見てた』という作品。
これは家にある本棚にあったものですね。シュールなギャグマンガ、今読み返すと際どいネタもあるんですが、小学生の頃に分からないながらも読んでました。
サッカーをやってた割には、案外スポーツの王道マンガを当時はあまり読んでいなくて『ファンタジスタ』は世代だったので読んでましたがそのくらいかな。
ーースポーツマンガが少ないのは意外です!
関口さん:他に好きだったのは『Mr.FULLSWING』とか、スポーツだけどちょっとギャグテイストが強い作品
あと『ボボボーボ・ボーボボ』とかはまってました。
今思えば最初に読んだマンガの影響でギャグマンガが好きだったのかも、あとスポーツは実体験していたので物語として必要としてない時代だったのかもしれません。
高校生のときに友達に借りてすごいと思ったのは『最終兵器彼女』これは思春期に読むとぶっ刺さるやつです。
ーーぶっ刺さりますね!間違いないです!
あと、受験期に癒しを求めて読んでいた『よつばと!』これはいつ読んでもいい作品ですね。
世間のブームとか皆が読んでるからというよりは自分でその時に気になったもの、必要な作品を選んで読んでいたと思います。王道すぎるマンガは読む前から友達から情報が入ってきちゃうんで、そういう作品よりは皆が知らないマンガを開拓したかったのかも。
店内に置くマンガをセレクトする基準
ーー店内のマンガのコーナーが充実していて感激しているのですが、どんな基準でセレクトしているんですか?
関口さん:学生時代に読んできたマンガは多くは無かったんですが、凄く好きで、大学生や卒業後からはたくさん読んでいます。店に置いてあるマンガに関してはほぼ自分が読んでこれいけるなっと思った推しマンガ。マンガの棚は店内でも趣味色が高めですね。
ーーセレクト最高ですね、隅々まで眺めてしまいます。
関口さん:テーマとして掲げているのは「かっこいい大人になるための本」、なので店内に置く本を選ぶ基準はマンガに限らずですが、根本には生き方を何かしらの形で提示している作品。こういう人生がある、こういう生き方もあるっていうのを作者の人が本気で向き合った結果描かれている作品を選んでいます。もっと根本の本質のところにあるのは人権意識、ちゃんとそこを意識してるなって思うものを置くようにしています。
その基準で選ぶと、女性作家さんの作品が自然と増えましたね、マンガで言うとどうしてもフィール・ヤングとかが増えちゃう。池辺葵先生の作品『ブランチライン』とか『プリンセスメゾン』とか。あと『自転車屋さんの高橋くん』とか、そういうセレクトになっちゃいますね。
ーーめちゃくちゃ素敵だと思います!
10代のこども達に読んでほしいマンガ
ーーでは関口さんが今10代のこども達に読んでほしいマンガってどんな作品ですか?
関口さん:小中学生の頃って基本的には何を読んでもいいと思ってます。そのくらいの年齢だと手に取った作品のことが読んでいてい分からないこともあるだろうけど、それでもいい。自分で選んだものを読むっていう体験が大事かなと。なので『SPY×FAMILY』とか『呪術廻戦』とか面白いんで、読みたいと思ったものを読んでくれたらいい。
高校生くらいだとその時かかえる問題に寄り添ってくれるような作品、例えば熱くなれる系のマンガ『ワンダンス』とか。
『ブルーピリオド』とかもオススメです。
進路とか大学受験を意識する時期に、熱くなることを大事にしてほしいです。
それから人間関係とか悩む時期には『綿谷さんの友だち』とか良いですよね。
田島列島先生の作品は普通に面白いから「もう読んでくれ、高校生以上なら分かるから!」って感じです。
大学生くらいになると『違国日記』とか『ちひろさん』とかの良さがわかるようなってくるんじゃないかな。
あとは男女関係なく少女マンガももっと読まれてほしいですね。『花野井くんと恋の病』とかすごい良いんで!
ジェンダー意識のせいか、男性はなかなか読んでくれないですね。少女マンガと言いましたが、そういうジャンルわけも今はもう意味ないかなって思います!
ーー好きな作品、気になる作品ばかりです!今挙げてもらったマンガで、関口さんに今一番心に響いている名セリフや名シーンを教えていただきたいです。
関口さん:『違国日記』はどの話を読んでも何か訴えるものがあるんで、パワーを感じます。最近だと7巻の最終話、医学部に行きたいって言ってた女の子のシーン、そこに主人公の女の子が校内で歌うところ、全部がすごかった。今描かれるべきものだったとも思う、大学生にと言わずにもっと早めに読んでもいいかもしれない。
こども達が気軽に立ち寄れる本屋を目指して
ーー本日はたくさんのお話ありがとうございました、最後に今後本屋 lighthouse としてこども達どう関わっていきたいのかを教えてください。
関口さん:今こども達の来店は小屋の時にきてくれてた小中学生の数名。書店として店を構えてしまうとこども達にとって来店のハードルは高いんです。なので駄菓子を置いてみたり、小中学生向けのマンガも置いていますが、やっぱりこどもだけでは入りにくいみたい。
ーーたしかに高校生くらいにならないと1人で書店ってあまり行って無かったかもしれないです。お金もそんなにたくさん持っていないし。
関口さん:そうなんです、こども達が親しみやすいという意味で1店舗目の小屋本店は良かったんです。場所が小学校から近いし、外でも遊べるし、待ち合わせに使えたんですよね。今、小屋本店は修繕の必要があるんですが、立て直すか、キャンピングカーにして移動本屋さんにするかして、こども達も立ち寄りやすい形での運用の構想を錬っているところです。
小屋本店の写真
ちなみに小中高校生はお金持ってないんで基本的に本は来店しても買わなくていいと思ってます、本屋を遊び場と思ってくれて良い。欲しい本があれば手に取ってもらえるように、本屋 lighthouseでは「こども貯金」というも制度も作っています。
こども貯金とは「売上1点ごとに10円」を「こども読書ちょきん」に充てる本屋 lighthouse 独自の取り組み。貯まったこども読書ちょきんは18歳以下のこどもが親の同伴なしで来店して、欲しい本がみつかればそのちょきんを使って本を買ってよいという仕組み詳しいルールはこちら→
あとがき~マンガが買える本屋の未来をこども達へと繋ぎたい
今回は若くして個人書店経営に挑む関口竜平さんにお話しを伺い、10代の心も体も急成長を遂げる時期にこそ寄り添ってくれるだろう素敵なマンガをたくさん紹介して頂きました。
名作マンガが次々に誕生する一方で、マンガは個人経営の書店からどんどん姿を消してしまっているそうです。電子化の波は今後も進んでいくと思いますが、書店でのマンガとの出会いを未来にも繋げていきたい、そのためにはどんな仕組みが必要なのか書店の未来を考えさせられました。
そんな中で、こども達が安心して手に取れるマンガを提供してくれ、しかもワクワクできる本屋 lighthouseさんの存在は、幼いこどもを育てている私の心にも店名のlighthouseの通り1筋の光を灯してくれました。
今回記事内に使用した写真のうち、本屋 lighthouseさんのロゴの写真と小屋本店の写真は本屋 lighthouse公式Instagramよりお借りしました。
本屋 lighthouse
☆公式ホームページ→https://books-lighthouse.com
☆Twitter→https://twitter.com/book_lighthouse
☆住所→千葉県千葉市花見川区幕張町5-465-1-106(JR/京成幕張駅より徒歩6分)
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