最高位戦フェス2024【中編】
最高位戦道場
道場に入ると、既にフェスの参加者達が、最高位戦プロ達と対局をしていた。建物の中はスタジオほど綺麗ではないが、フェスの参加者たちの熱気で溢れていた。道場での対局は2半荘目で、既に20分が経過していた。僕達が対局に加われるのは、3半荘目からとなる。
鈴木優プロ卓に目を向けると、先程スタジオのPV特等席から離席したまま、自席に戻らなかった年配の女性お二方の姿があった。ここでようやく僕は姿を消した謎に気付いた。第一試合を最後まで観てしまうと、せっかく手に入れた優プロとの同卓権を失ってしまうのである。優プロは熟女3名に囲まれて、にこやかな表情で対局していた。やはりイケメンは女性にモテる(笑)。
という訳で、3回戦が始まるまで待つことにした。そんな僕達に椅子を用意してくれたのが、後藤悠プロであった。名前はネームカードを見て判った。僕達は道場の壁際に、用意してもらった折り畳みのパイプ椅子を広げて、遠目から対局を観戦をすることにした。道場内に麻雀卓は12卓あったような記憶がある。
後藤プロは気を遣って、僕たちに積極的に話し掛けてくれた。Mリーグや、後藤プロの経歴、最高位戦等、麻雀に関する様々な話をした。彼は「今度A1リーグの実況を任されたんですよ」と嬉しそうに語っていた。好青年であった。Xでお互いをフォローした後、後藤プロは自分の持ち場に戻って行った。
ネットで彼の経歴を調べたら、息子と同じ年齢で、黒沢咲プロと同じ大学を卒業していた。これも縁なので後藤悠プロを応援し、彼のプロとしての成長を見守るのもいいなぁと思った。
後藤プロが去った後、息子が小声で話し掛けてきた。「アサピンがいる・・」後ろ向きで対局していたので気付かなかったが、我々が座っている位置から見て斜め左前の卓は、朝倉康心プロがホストだった。我々の話し声が聞こえたのだろう。朝倉プロはこちらを振り返って、笑顔を向けてくれた。息子は天鳳位から転身した麻雀プロを、リスペクトし、何気に気に掛けている。
悠プロと優プロの気遣い
後藤悠プロが再び現れた。「後ろ見OKですよ。良かったらどうぞ」と声を掛けてくれた。お言葉に甘えて、鈴木優プロの背後で、対局を観戦をすることにした。息子は朝倉プロの対局をそのまま観続けるようである。
優プロに『後から失礼します』と声を掛け、背後で立ち見観戦を始めた。すると優プロは、体を120度回転させて、僕に話し掛けながら対局を続けてくれた。優プロ「この手はリーチを受けて崩してしまい、もう駄目なので、次局を観て下さい」「今年はもう麻雀打ちましたか?」「結果はどうでしたか?」矢作早に質問を繰り出してくる(笑)。
前にいる3名に対して失礼だろうと思うくらい、僕との会話が続いた。優プロは名前の通り優しい人だった。この状態が続くのは、対局している3名に悪いと思い、『ありがとうございました』と優プロに謝意を述べて、壁際のパイプ椅子に戻った。
山田独歩プロ
2回戦目と3回戦目の間にインターバルが30分ほどある。その時間は選手とのチェキ撮影が出来る。息子はここで、1回目のチェキ撮影権を行使した。ドリブンズファンだったので、てっきり丸山奏子プロにお願いするものだと思っていた。ところが息子が選んだのは、山田独歩プロだった。何とも渋い選択である。山田独歩プロは、第3代の天鳳位であり、今回の最高位戦フェスのメインスポンサーである「麻雀王国」の社長でもある。息子の天鳳位への憧れ、もしくは敬意は半端では無いのである。
フェス参加者からチェキ指名があったと、スタッフさんから報告を受けた独歩さんは「え?俺が?」と、戸惑いながら撮影スペースに足を運んだ。
息子との撮影が終わり、チェキへのサインが終わった頃を見計らって、僕は独歩さんに挨拶した。
『息子とのチェキ撮影ありがとうございました。父です♪』
独歩プロ「親子で参加ですか。仲が良いのですね」
『息子は小学生の時から僕が観ていたモンドの麻雀番組を、意味も解らず後ろから観ていて、自然に興味を持つようになったようです。或る意味洗脳ですかね(笑)』
息子「洗脳ではなく、自分の意志で麻雀に取り組んでいます」珍しく息子が訂正発言をした。確かに息子は天鳳で腕を磨き、大学時代に「競技麻雀部」に所属していた。
その後、麻雀王国がプロデュースしているYouTubeチャンネル「麻雀ウォッチ ひなたなんのするしない」に話題が及んだ。2019年のMリーグのドラフト会議の生配信が、涙を誘うくらい感動的だったことを伝えると、独歩さんは、とつとつと この年のMリーグのドラフト会議の裏話をしてくれた。裏話と言っても、日向プロの著書「十人十色」に記載されている事と結構重複しているので、もはや裏話ではないのだが(笑)。
以下、要点を箇条書きにて記す。
① 日向藍子プロは、渋谷ABEMASからドラフト指名に 関する事前の接触が全く無かった。
② ドリブンズは、日向藍子プロを含む6名の女流プロ の名を挙げ、この中から必ず1名をドラフト指名すると公表していたが、日向プロを指名する選択肢は、ドリブンズの中には既に無かった。
③渋谷ABEMASから指名を受けて、嬉しさのあまり号泣する日向プロを、独歩さんが優しく宥めるシーンがYouTube上で流れ、一番得したのはお前じゃないか!と周囲の人に突っ込まれた(笑)。
②と③は「十人十色」に記載されていないはずである。
特別フリー対局開始
特別フリー対局は、8卓にて行なわれていた。事前に希望したプロと同卓が決まっている場合は、指定された卓につく。それ以外の場合は、卓抽選が行なわれる。抽選方法は単純で、伏せられている萬子の一から八萬を引き、引いた数字の卓で対局をする。例えば事前に3卓が埋まっていれば、三萬は抽選用の麻雀牌から予め除外されているので、人数オーバーとなることはない。
僕が引いたのは浅井プロ卓。第3希望で出したが、外れたので、この状況での同卓はラッキーである。もっとラッキーだったのは、息子である。何と山田独歩プロ卓であった。2ショットチェキを撮ってからの同卓!正に縁が為せる業である。
息子は対局中、独歩さんに今 自分が天鳳に力を入れている話をした。第3代天鳳位の応えは「天鳳はストレスが溜まるから程々にね」だった。何とも実感が籠っている。
一方、浅井プロ卓で僕は起家スタート。下家と対家がお二人共女性の参加者だった。浅井プロは北家スタートで僕の上家。対局がスタートする前、浅井プロから嬉しい発表があった。この卓のトップ者には、浅見ヤンキースの選手全員のサインが入った、リストバンドがプレゼントされるとのことだった。浅井プロがトップだった場合は、2着の人が賞品の権利を得られる。これは狙うしかない。
ルールは3万点持ちの3万点返し、順位ウマが1万点、3万点、一発・裏ドラ有り・赤無しの最高位戦ルールである。
対局は浅井プロが麻雀プロの貫録を見せ、東場で軽やかに順調に和了を重ね、他の3人を寄せ付けずトップで南場に入った。僕と下家が2着争いを演じていた。僕の南場の親番は、浅井プロにあっさり1,000点で流された。そして南2局、浅井プロは更なる加点を狙って、早いリーチを打った。しかし、10巡目僕は下記の聴牌で追いついた。
親と対家はベタオリ模様。多面待ちだがツモる気配もない。途中僕が四萬を切っても、筋の七萬は出て来ない。この局は二人聴牌で流局した。浅井プロは、僕の聴牌形を見て思わず「やべー」と声を漏らした(笑)。浅井プロから直撃出来れば、ほぼ並びの点数状況だったからだ。ちなみに浅井プロは三−六萬待ちのメンタンピンで、高めがドラの六萬だった。
オーラス、2着の下家とは1,400点差の3着だった。場は膠着状態で、僕の手も重かった。親の浅井プロは流局で、自分の親を終わらせるような捨て牌だった。15巡目、誰からも聴牌気配のない中、浅井プロが切った9筒をチーして形式聴牌を取った。下家は一向聴の様子だった。あと3巡凌げば聴牌料で逆転できる。しかし、18巡目に僕がツモ切りした不要牌の2索を、下家がチーと発声し喰いついた。僕と下家の2人聴牌。この瞬間僕の3着が確定した。浅見ヤンキースの全選手のサイン入りリストバンドは、惜しくも取り逃してしまった。
道場でのプロとの麻雀対局は、やはりエキサイティングだった。本来の予定では、一旦スタジオに移動し、PVを観るスケジューリングをしていた。だが、17:40からの園田プロとの対局、その後の閉幕式を考えると、スタジオと道場を2往復しなくてはならない。息子も移動が面倒らしく、相談の上 道場での対局を継続することにした。やはり、観るより打つ方が楽しい。
【後編】に続く
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