探しつづけている絵〜アラビアンナイトのお話(仮)その1

幼い頃の本の記憶、皆さんはどんなものをお持ちでしょうか?

今回は、私が覚えている限りで最も古い本のお話。とは言え、実はいまだにタイトルが判明せず、(仮)付きです。

おそらく小学校へ上がる数年前。当時は同じような系統の本が世の中にあふれており、それ故になかなかその1冊を特定できずにいて、かれこれ40年近く再会を心待ちにし続けている本。。

ヒントは3つ。

①昭和40年代後半〜50年代前半頃に出版されたであろう、子ども向けお話全集的シリーズのうちの1冊

②魔法のランプの話が載っていた

③その本の中の挿絵の一つで、薄暗い洞窟の壁に色とりどりの宝石が埋まっているものがあり、その絵がとても美しく、ものすごく気に入っていて日がな眺めていた

すぐ見つかりそうじゃんね!(まーちゃん)と思われた方は、もしかしたら同世代かも?

私が子どもの頃の日本は、今となっては夢…?と思うくらい景気も良く、小さな子どものいる家庭では、ごくふつうに全20冊とかの子ども向けお話全集的なものが据え置かれたりしていた時代でした。第二次ベビーブームということもあり、おそらく児童書出版界では、子ども全集シリーズは出せば売れる、というイケイケアイテムだったのではないかと想像します。ざっと調べただけでも、この10年ほどの間に、2、3年おきくらいで年版違い(改訂版か重版かは不明)の全集を出版していた会社もあったくらい。

どこにでもあるものが、あまり大事に扱われなくなっていくのは世の常で。これらの子ども全集シリーズもまた、各家庭での役割を終えた後、あっけなく廃棄(我が家はこのパターン)、もしくは多少なりとももったいないと思われたお宅では、図書館や保育施設、学校等へ寄贈を持ちかけたりするも、それらの施設にも既にどこかから巡り巡ってやってきた同種のシリーズがあるというので引き取ってもらえず、行き着く先はやっぱり古紙回収…と、お決まりのコースを辿ってこの世を去っていった全集兄弟たちは、星の数ほど存在したことでしょう。

かくして、かつては世の中に溢れていたものがその反作用でレア化していくという段に、あの昭和の子どもお話全集たちも踏み込んでしまっているのではないか…と今や心配に思うところもあります。彼らにそんな皮肉な運命を背負わせたくはないのですが。。なぜなら、今見てもとてもクオリティの高いものが多いから。

7、8年前の事ですが、職場の研修で2週間ほど上野に滞在したことがありました。上野と言えば、子どもの本の殿堂・国立国会図書館国際子ども図書館が鎮座するありがたき地。この機を逃してなるものか!と研修休日にさっそく赴き、その前身であるかつての帝国図書館の風情を素晴らしく活かした明治期ルネサンスな建物で、優雅に半日かけて私のアラビア本(仮)の同定作業をしました。

さすがにここでは出会っちゃうでしょ?!と確信していたのですが、探し方がよほどダメだったのでしょうね、まさかの空振りで。。でしたが、おかげさまで当時の子ども全集シリーズの数々を実際に手に取って見せていただくことができました。

だいたいどのシリーズも、まず絵のインパクトにやられます。子ども向けと言ったって、甘々感はなく、やけに劇画タッチだったり、ちょっとした日本画風であったりと、大人がかなり本気で取り組んでいるパワーの感じられるものがほとんどで。さすが当時の出版業界、手間もお金も驚くほどかけているな、これ、、という印象が強く残りました。だからこそ、頼りない私の記憶にも鮮烈にあの絵が刻み込まれていったのでしょう。

皆さん、お気づきでしょうが、私が持っているヒントで言えば、①と②だけでは出版社やシリーズ名が確定できず、③を同定するには、手当たり次第に実物を見て確かめていくしかありません。

図書館職員になってからは、本を探すことが身近になり、過去の書誌情報を見てみたり、その頃出された全集の実物を手にする機会も何度かあった(とにかく寄贈のご希望が多いジャンルで)のですが、それらしき全集の、おそらく“アラビアのお話”的なテーマの一冊を見かけるたびに、違う…これじゃない…を繰り返してきました。

が。

ついに…

もしかしたら…

私のアラビア本(仮)、見つかっちゃったかも……?!

実は現在、それらしき本を取り寄せ中なのです。。

果たして私の記憶の中のあの宝石洞窟の絵と一致するのか?!

ここへ至るまでの経緯なども含めて、次回へつづけるとします。

どきどき…

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