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あるお稲荷様のはなし



鹿児島の母方の実家には、江戸時代に島津のお殿様より勧請してきたお稲荷さんがいました。
お稲荷さんだけじゃなくて、ご先祖のお姫様も祀られていました。

墓守をしていた叔父には、小さい頃から里帰りするたび
お墓の周りをちょろちょろしてた私に
「葉っぱだけ(お榊みたいな)お供えするならいいけど、お花のついたものは、お姫様がヤキモチ焼くからダメ」
と言われていました。

母方には男の跡取りが居らず、男兄弟の長女が跡目をつぐ
(婿入りしてもらう)
ことになっていました。

末っ子(母)の娘の私は、何故かお稲荷さんの石が1日の中でも見た目が変わって見えていて
(白っぽいときと黄色っぽい時がある)
(伸びたり縮んだりもする)
叔父に話したら大層喜んで
お前もわかるのか?と嬉しそうだった。
誰にも通じなかったらしい。
石だものね。
冗談混じりに「養女に来いw」
と言われていたりもしました。
が、まあ無理なので、身動きとれずにおおきくなりました。

18くらいのときに、その日お昼から学校だったので、自室で二度寝をしてたら、
スタンと襖があいて、そこに江戸時代のお姫様が立っていました。
実家は普通の昔ながらの田の字マンションです。
違和感ありまくり。
とても綺麗な着物をきていました。
顔は何となく私ぽい割と派手な顔だったように思うけど覚えてません。
何しろそのとき絶賛金縛り中で。
お姫様は不満そうに「気持ち悪い」とか「気分が悪い」というようなことを言い残し
(すっごい嫌な感じ)
また乱暴に襖を閉めた。
で金縛りが溶けて、母に私を呼んだか聞いたら、知らないと。

私の頭の中には、何でか
「お稲荷さんの石がよんでいる😅」
という気持ちでいっぱいだった。

でも学生だったので、鹿児島に気軽に行けるチャンスもなく。

ほどなくして祖母の具合が悪くなり、鹿児島に戻ることができた。
優先事項トップで真っ先に石を見たが、何ともないように思えた。
祖母の具合はよくなくて、じきに病院を変えることになっていた。
何故かその時の対面は、祖母も私も涙涙でろくに話せず、でも顔を見て安心できた。
この頃は、薬で祖母も朦朧としてあまり周囲とも会話が通じないとも言っていた。
祖母はあの時、何が言いたかったのだろうと思う。 

祖母といえば、私が中学生くらいの頃
鹿児島にいった時に、突然自室にあった由来不明の狛犬のぬいぐるみを
「あなたにあげる。大事にしてね」と。
母が「どこに飾る?」
とかちょっと食い気味に言ったらぴしゃりと
「これは今からこの子のだから、この子にきめさせなさい。親だからって口を挟んじゃダメ」
と母の口を封じててビックリした。

コマちゃん(安易なネーミング)は結婚してからも、うちで子供に愛されています。
だいぶボロいけどね。

そんな祖母も移動した病院で90で往生しました。
私はある印刷会社の会社員になってて、総務でお中元の注文を取りまとめたりしておりました。
デパートから帰って来たら、祖母逝去の電話がかかってきました。
祖母の話を会社のおじさんとしてた矢先で、虫の知らせと恐れられました。
たまたま夏のボーナス支給の日でした。
給与は現金支給、ボーナスも現金支給の会社だったので、総務の人間は支給式と言って、専務から手渡しされる習わしだったのです。
ですが、その頃我が家は父が熊本に単身赴任中で、こちらには母一人と私と弟だったため、
専務が
「おかあさん心配だろ。早退していいよ」
と早めに手渡ししてくださり、ダッシュで帰り、
そのままそのボーナスで飛行機のチケットを払うと言う親孝行?をしてみました。
弟は大学を休めず、母と私で鹿児島へ。
父は熊本から一足先に高速バスで鹿児島入りしました。
個人的に石に挨拶して、葬儀に参加したけど、その間ずーっと大雨でした。
ばあちゃんが嫌がってるように思えた。
そして、従姉妹は従姉妹で後継ぎ問題がこじれて某新興宗教に受信。
夜中、私の隣で神様にご挨拶?してて…😂
当時の私は、
「居心地悪い。鹿児島もう無理…」と思っていました。
結局、次の代で、誰が墓守するのか結論も出なかった。
この後しばらくは音沙汰無く過ごしていました。

私の結婚が決まり、叔父に連絡すると、少々ブスッとしていた。
これで「養女に来い」が反故になったから。
叔父は、独身を貫く従姉妹Mちゃんに願いを託したかったようでした。
(消去法で、仕方ない)

私も申し訳なさもあり、もう一度、先祖のことなど詳しく聞こうと思っていた。
結婚して、娘が1歳くらいのとき、祖母の法要で鹿児島に行った。
その時は、もう石が怒ってて、私もしょっちゅう子供たちを親戚が連れていくし

(拉致かと思うくらいしょっちゅう消えた)
(一声かけてくれ)

始終落ち着かず、挙句に片方コンタクト落として散々だった。

そして、帰って暫くしたら、叔父が亡くなってしまった。
急な話だった。

叔父が亡くなってしまったが、私は子供の行事もあり、葬儀には参加できず、
両親と母の兄弟一同で取り仕切ることになった。
あーもうこれで聞ける人がいなくなってしまった。
喪失感と後悔が頭をぐるぐるする。

そして暫くしてから、夢に見るようになったのでした。

叔父を。

夢だけでなく、入浴中とかごくごくリラックスしてる時、シュピーンと自分のとは明らかに違う考えが降りて来るのです。
大きな石が落ちて来るような感じです。
ゴン、と。

叔父は怒っていた。諸々に。

母からいろいろ親戚の進捗状況を聞く夜は、大抵お怒りでした。
でも、黙っていようとしたのですが、
今度はお姫様が、
「わたしだってこんなところにいたくはない」という。
「ここ(鹿児島の実家)はきらいなんだ」

皆正直持て余していたけど、お姫様はお見通しだった。

当時、実家の面倒を見ていた叔母(Mちゃんのおかあさん)に言って欲しくて
「こういうことがある」
と、思い切って伝えてきた内容を母に頼んだ。
そうしたら、従姉妹Mちゃんも跡継ぎ従姉妹も
同じように言ってることが判明。
母も夢枕にお姫様が出てきて
「じぶんは◯◯城に嫁入りしたが、今のこの地が好きではない」
と言ったといいだした。
で、驚いた叔母が可哀想にと、
「石に屋根をつけてあげたの」
と写真を送ってきたが、
夢で叔父は
「そーいう問題じゃない!何でお姫様のことをもっと考えてやれんのか」
と余計にカンカンになってしまった。

私は当時、旦那の実家のある福岡に年一回ペースで帰っていた。
ある年はお盆前、あちらのお墓を掃除してる時に
石段を踏み外しそうになった。
「お前が行くのはそっちじゃないだろう」
とお姫様のお付きのお侍が怒り出したのだ。
(お姫様だけでなくお付きまで出て来るのが厄介だった)
(綺麗に剃り上げた月代に裃着て現れる、きちんとした怒りっぽい人)
私はお姫様が怖かった。

鹿児島ないがしろにして
何で福岡ばっかり帰るんだって怒ってるんです。

その年は息子が謎の腹痛で、病院で点滴受けた。
真夜中、行き帰りの車から、天の川が見えたんです。
美しかった。
と同時になんで息子だけ、と思っていた。

息子、生まれた時にお侍様が出てきて
「この子を15まで何事もなく育てよ」
と言われたことがあるのです。
「この子は、稀代の大犯罪者か、偉業を成し遂げるか、岐路にいる。
お前の育て方如何で如何様にも変わるから覚悟して育てよ」
ですよ。
もう必死です。
(ちなみに今19歳)
(どうなんでしょうね)

そんな中、毎年福岡にかえると、子供に不調がくる。
大抵帰り道は誰かが体調崩して高熱が出るのです。
娘は高熱から戻したりもして大変だった。

とうとう、ある年は帰るなり、息子の骨折です。
空港から旦那実家に向かう道中の車の中で、急ブレーキに対応できず、鎖骨を骨折してしまいました。

もう私もこれ以上は引き延ばせないと観念した。
子供に危害が出るなんて。

その頃、叔母は何を思ったか、現地に親戚が居なくなる
(墓守がいなくなる)
ので、
近所にある八幡神社に石を移すといいだし、おもむろに決行した。
神社に同行した母もこんな簡単な儀式なんかで、本当にいいのか疑問だったらしい。

無理だろうと私は思った。

何故ならその頃お姫様は
「もう私のことを見てもらえないなら、お殿様のところに戻してくれ」
と言い出したのだった。

お殿様?
島津?
稲荷神社?
どこへ?

ということで、ネットで調べたら、鹿児島市内のある稲荷神社がうかびあがった。

丸に十字
丸に十字
ずっと頭の中そればかり

ちょうど息子の骨折を心配して
こちらにきていた母に
「叔父が怒ってお姫様も嫌がってる」
と、全部話した。
話が叔母に伝わり、稲荷神社に電話してみたそうだ。
宮司さんの話では、お稲荷さんのそういう話はよくあることで、
私のように夢に出たりも珍しい話じゃないらしい。
そこで叔母もやっと納得したらしい。
しかし石は八幡神社じゃなくて
石屋にあるそうで
すでに八幡神社からの手配で3分割されていた。
スッゴイギリギリ!!!!

抜いた魂と石を実家に一旦戻し、そこから稲荷神社に移すという手順を踏めばいいという話だった。

で跡継ぎ従姉妹は人づてでなく、直接詳細をききに私の元にやって来た。
お互い話をすり合わせると妙に納得いく。

私は旦那にはこの手の話はしていないが、
跡継ぎ従姉妹は夫婦でいろんな由来を調べて歩いていたそうだ。
一度叔父の夢の中で
「そんな文句言うなら、何で旦那との結婚反対しなかったのさ」
といったら、叔父は
「お前にはあれくらい図太いくらいのひとがいいんじゃないか。
似たもの同士は大変だ」
と言われた。
旦那、褒められてるんだかなんなんだか。

話を戻す。
跡継ぎ従姉妹も私も、お姫様の名前を聞いてない😩
ギョッとした。
確かにいつもお姫様は、要件ブッスブス投げて行くだけだしな。
従姉妹がいうには名前を言わないのはワザとだと。
名前呼ばれたら、こちらにい続けるパワーがなくなり、ダメらしい。
何人か候補は見つけたけど確証がないそうだ。

聞いて見たいが、実はお盆を境にブッツリ夢に出てこなくなった。
叔父も。

なので、従姉妹にも
「この神社で合ってるって確証はない」
と言ったが
「おさまってるんなら起こすことはないよね」
という共通認識が芽生えて、ちょっと心が軽くなった。

という話です。

従姉妹調べと、叔父から聞いた話に齟齬があることにも気づいたけど
その辺はおいおい明らかになると思いたい。
お殿様のところに戻ったら、お姫様、健やかに?成仏してくれるといいな…
こんどこそ幸せになってほしい。
叔父もそろそろゆっくりして欲しいなぁ。

気のせいとか頭おかしいと言われたらそうかも。

その後、満足した叔父は
「これからお前の想像もしていない世の中になる。
俺は加勢に行くことになったから。あっちでしばらく頑張る。
これ以上ひどい世の中にならないようにするから。
お前はお前で頑張れ👍」
とスカッとした笑顔で消えた。

子供が大人になりかけの今…
コロナ禍で世の中とんでもないことになっている。

まさかまさかまさか

これのことですか?

確証がない。

そして散々引っ掻きまわした叔母も天に召された。
跡継ぎ従姉妹は、若年性認知症でわたしのことなどわからなくなってしまった。
婿さんになった旦那さんがお子さんと叔母を支えている。
母は足が悪くなり、元気がない。

もうお姫様は出てこない。

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